東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

水色の表紙に卵型の模様

書籍名

平凡社新書 建築の明日へ 生活者の希望を耕す

著者名

松村 秀一

判型など

216ページ、新書

言語

日本語

発行年月日

2021年7月

ISBN コード

9784582859805

出版社

平凡社

出版社URL

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建築の明日へ

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日本の建築界は世界の先端を走ってきた。しかし現在、構成員の高齢化や必要な建築物の飽和で、成長の限界を迎えている。今後さらに進化する新技術に対応しつつ、国内外の有効な人材活用を進めることが必要だ。建築・建設に関わる者は、来る時代の要求を的確に把握して、これに応えるため、何を考え、どう実行すれば良いのか。この難題に関して、著者のこれまでの研究等の経験に基づき、重要な観点として以下の5つを取り上げ、具体的に論じている。
 
I 新たな活動領域を見出す
今日の日本では建築物は飽和状態にある。十分な空間資源があると言って良い。これまでの建築界は、きちんとした建物をきちんと約束した日までにデリバリーすることに、つまりは新築事業にひたすら汗を流してきたが、これからはそこで汗をかく必要は薄れていく。これまで造り続けてきた建築を所与の空間資源として、これをいかに豊かな生活の場にしていくのか。ここにこそ建築業の新たな活動領域を見出していかねばならない。この新たな活動領域に関して、建築の建て替え時、場の産業、利用の構想力、民主化する建築、更には建築情報学等というテーマと関係付けながら論じる。
 
II アイデンティティを見つめ直す
既存の空間資源を利用して豊かな生活の場に仕立て上げる活動を考えた時、それは必ずしもこれまで建築を専門としてきた人や産業だけしか対応できない活動かと言えば、決してそんなことはない。むしろ、異なる素性の人々の方が得意なことが多いかもしれない。そこで、建築業の人々が新たな活動分野に踏み出すにあたって、自分が何者か、自らのアイデンティティを明確に意識しておく必要がある。土木と比べて建築はどう違うのか、建築界の姿勢や考え方、そして建築そのものに日本独自のものがあるだろうか。こうした疑問に答えることから始める。
 
III 明日の建築人像を描く
活動領域が新しくなる時、そこで活躍する建築人像も変わって来るだろう。また、他方で建築界の深刻な技能者不足の問題もある。一体私たちは、若い人たちがわくわくするような明日の建築人像を描けるのか。このことに応える糸口を探す。
 
IV 国境を越えてゆく
日本の建築業は、長らく内需が十分にあったため、殆ど海外での活動はしてこなかった。建築界全体に力が余って来るこれからの時代を考えた時、日本の建築人や建築業は広く国際的に活躍することを積極的に考えるべきである。また、他方で技能者の将来を考えた時には、新たな人材を海外から求めることももっと広く行われるべきである。このことについて論じる。
 
V 一人の生活者として感じる
建築業界の人々はこれまであまりにも生産サイドに立ちすぎてきた。それは更地に新しい建築を立て続けていた時代の姿勢である。建築そのものよりもそこでの生活こそが主題になる時代にあって、生産サイドという構えはあり得ない。それぞれの建築人が一人の生活者として感じるところからすべてを始めなければならない。最後にこのことを論じる。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 特任教授 松村 秀一 / 2022)

本の目次

はじめに
I 新たな活動領域を見出す
II アイデンティティを見つめ直す
III 明日の建築人像を描く
IV 国境を越えてゆく
V 一人の生活者として感じる
おわりに

関連情報

書評:
(『建築知識ビルダーズ』46号2021年秋号、119頁 2021年8月)
https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767829173
 
(『朝日新聞』朝刊 2021年8月21日)
https://www.asahi.com/shimen/20210821/
 
(『建設通信新聞』9頁 2021年7月28日)
https://www.kensetsunews.com/
 
講座:
2022年度 日本大学桜門建築会 建築講座 『建築の明日へ』 (日本大学 桜門建築会 2022年9月28日)
https://www.okenkai.jp/info/%E5%BB%BA%E7%AF%89%E8%AC%9B%E5%BA%A7%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%AE%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85/

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