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書籍名

自治体文化行政のレッスン55

著者名

小林 真理 (監修・編著)、 鬼木 和浩 (編著)、中村 美帆、土屋 正臣 (著)

判型など

240ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2022年2月

ISBN コード

978-4-902078-70-1

出版社

美学出版

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自治体文化行政のレッスン55

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1999年に地方分権一括法が成立し、日本においては国と地方の役割分担が明確化され、国は国全体に関わる制度化に携わり、地方自治体は地域住民に対して果たさなければならない責任が大きくなりました。地方自治体は行政区域内外に向けて魅力発信を行いながら、行政サービスを維持していく財源を確保しなければなりません。地方自治体の財源の基本は何でしょうか。税収ということになります。地域に魅力を感じてもらい居住してくれる、居住し続けてもらう、あるいは訪問してもらうことによって交流を促す地方自治体をつくっていくことは地方自治体が生き残っていく上で必須といえます。文化行政の効果はすぐには現れないかもしれませんが、魅力増進の一つの選択肢になります。また、全国に多様で個性豊かな文化を擁する日本において、地方自治体が果たす役割は大きいです。多様で個性豊かな文化を画一化や商業化に抗って守ることにより、地域の文化を活かすことにもなります。地方自治体の文化行政への取り組みは1970年代の後半まで遡ることができ、考え方、制度、手法、取り組みなどが積み上げられてきました。
 
しかしながら、そのように地方公務員に十分に認識されていないのも文化領域の特色だと考えられます。文化領域の多様性と扱いの難しさというのも相俟って、むしろ躊躇されるのが文化行政の領域といっても過言ではありません。とはいえ、文化行政も地方自治体の公共政策あるいは行政サービスの一環であるとすれば、担当公務員の文化の好き嫌いではなく、業務として適切に対応されるべき領域だといえます。そのような意味で、本書はいわゆる研究書ではなく、地方公務員向けの、文化行政領域への入門書として作成されました。最近は私のもとにも是非文化行政の領域で働きたいという学生さんが相談してきます。むしろ若い人が携わってみたい領域であるにも関わらず、行政職員から苦手意識をもたれている、その理由をこの書物から知ってほしいと思います。
 
本書の構成は4つの章で構成されています。第1章は、「自治体文化行政物語――文化課に配属された私」では、地方自治体の公務員が、文化行政の部署に異動したというストーリーで始まります。行政の一般職員にとって文化行政の「文化」が何を意味するのかという問いから発し、市民文化祭という事業に関わったり、アーティストや文化施設のスタッフと関わる中で直面する疑問や課題などが明らかになるとともに、文化行政の見取り図が示されることになります。第2章からは一問一答式で、文化行政領域の特徴を明らかにしていきます。第3章からは、文化行政をよりよく執行していくために、より専門的な領域に入っていく内容になっています。第4章は、全国の地方自治体において取り組まれている事例や、文化行政を実践していく上で知っておいて欲しい情報でまとめられています。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 小林 真理 / 2024)

本の目次

はじめに
 
第1章 自治体文化行政物語――文化課に配属された私
シーン 1  着任初日
シーン 2  市民文化祭
シーン 3  アーティストとの出会い
シーン 4  文化施設スタッフ
シーン 5  すべての人のための文化
シーン 6  市民の思い
自治体文化行政の見取り図・自治体文化行政の全体像
 
第2章 基本レッスン30――1日1レッスン、1か月で基本をマスター
Lesson 1  「文化」って何を指しているんですか? 
Lesson 2  文化政策がなくても誰も困らないのではないでしょうか? 
Lesson 3  「文化」といっても個人の問題で、人の生き死にに関係ないから優先順位は低いですよね? 
Lesson 4  条例や計画は、法律上の義務ではないので定めなくて良いですか?
Lesson 5  自治体はどこまでを文化政策の対象とするべきなのでしょうか?
Lesson 6  行政が文化事業を行うことで、民業圧迫になりませんか? 
Lesson 7  注目を集めて、集客すれば良いのでしょうか?
Lesson 8  特徴がない自治体では、どういう文化をつくっていけば良いのでしょうか? 
Lesson 9  災害や感染症の拡大の際には、他の施策を優先すべきではないでしょうか?
Lesson 10 文化行政を担当する自治体職員には、どんな能力が求められますか?
Lesson 11 芸術についてほとんど知りませんが、何を知っておけば良いでしょうか?
Lesson 12 文化行政は全く手つかずですが、何から着手したら良いのでしょうか? 
Lesson 13 庁内の合意形成はどのように進めれば良いしょうか?
Lesson 14 合意形成に必要な条件やデータはどのようなものですか? 
Lesson 15 内外との調整にあたって文化行政担当者として注意することは何ですか?
Lesson 16 どのような経費支出がふさわしいのですか?
Lesson 17 文化の予算が毎年削られます。どのように予算計上すれば良いでしょうか?
Lesson 18 企業や教育機関、福祉団体等とどのように連携すれば良いでしょうか?
Lesson 19 有識者など専門家に意見を聞く必要はありますか?
Lesson 20 文化施設はどんな役割を果たすべきでしょうか?
Lesson 21 文化施設はどのように運営すれば良いでしょうか?
Lesson 22 指定管理者制度は何が課題なのでしょうか?
Lesson 23 文化財団 (事業団等) は何のためにあるのですか?
Lesson 24 文化事業に補助金を出すのはなぜなのでしょうか?
Lesson 25 地域に古くからある団体と、どのように関わるべきでしょうか?
Lesson 26 市民参加を進めたいのですが、どうすればうまくいきますか?
Lesson 27 なぜ市民参加や市民協働が必要なのでしょうか?
Lesson 28 高齢者や障害者、外国人等幅広い市民に、どう働きかけるべきですか?
Lesson 29 子どもたちの芸術体験は、なぜ重要なのでしょうか?
Lesson 30 働き盛りの人は忙しいので、参加できなくてもやむを得ないのでしょうか?
 
第3章 ステップアップ・レッスン25――文化行政をより深く考える
(1) 文化行政の理念
Lesson 31 文化行政に根拠となる法律はありますか?
Lesson 32 文化政策と文化行政の違いはなんですか?
Lesson 33 文化政策は国が主体なので、自治体が独自で力を入れなくても良いのでは? 
Lesson 34 文化権とは何ですか?
Lesson 35 芸術文化で経済活性化ができるんですか?
Lesson 36 芸術文化の目的は経済効果だけで良いのでしょうか?
Lesson 37 芸術文化で地域の課題が解決できるのでしょうか?
Lesson 38 文化を道具のように使って良いのでしょうか?
 
(2) 政策形成過程
Lesson 39 条例や計画の策定はどのようなプロセスを踏むべきでしょうか? 
Lesson 40 創造都市とはどのような政策ですか?
Lesson 41 創造都市やアーツカウンシルを取り入れなければなりませんか?
Lesson 42 なぜ文化行政には評価が必要なのですか?
Lesson 43 何を基準にして評価すれば良いですか?
Lesson 44 受益者負担については、どう考えるべきでしょうか?
 
(3) 文化施設
Lesson 45 日本の自治体の文化施設にはどんな特徴がありますか?
Lesson 46 指定管理施設は、どうすれば市の方針に沿った運営になるでしょうか? 
Lesson 47 文化施設と行政は、どのような関係を築けば良いでしょうか?
Lesson 48 施設整備に向けて、どのように調整を進めていけば良いでしょうか?
 
(4) 文化行政の展開
Lesson 49 障害者の芸術活動はどうやって支援したら良いでしょうか?
Lesson 50 文化的コモンズとはどのようなものでしょうか?
Lesson 51 文化財行政とはどのように連携したら良いでしょうか?
Lesson 52 自治体の「文化資本」とは、どのようなものでしょうか?
Lesson 53 芸術文化と政治は切り離すべきでしょうか?
Lesson 54 芸術的な事業に対して、行政がお墨付きを与えていいのでしょうか?
Lesson 55 文化の部署特有のトラブルにはどのようなものがありますか?
 
第4章 特別レッスン集
I   表現の自由・芸術の自由
II  戦後日本の自治体文化政策の歴史
III 博物館・美術館の役割
IV  時代に先駆けた文化施設
V   フェスティバル、芸術祭、アートプロジェクト
VI  全国の主なアートNPO
VII ネットワーク型ガバナンス
VIII 様々な部署を経験している自治体職員だからこそできること
IX  あなたは背中から撃たれる
 
ラストシーン 異動の日
おわりに――これから自治体文化行政を担うあなたへ
 
[付録] 自治体文化行政チェックリスト/自治体文化行政で頻出する用語集/文化行政の戦後年表/自治体文化行政図書室

関連情報

書評:
[話題本題] 自治体文化行政レッスン55 土屋正臣・中村美帆著 職員と市民対話の役に (沖縄タイムスプラス 2022年5月7日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/954197
 
フォーラム:
2022 自治体文化行政フォーラム「文化芸術・文化財を活かしたまちづくりの一歩を踏み出すために自治体職員ができること」 (東京大学本郷キャンパス 2022年9月10日)
https://shop.bigaku-shuppan.jp/blog/2022/08/01/154654

関連記事:
自治大学校における研修講義の紹介「自治体文化行政論」東京大学大学院人文社会系研究科教授 小林 真理 (総務省 2020年1月21日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000796665.pdf

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