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薄黄色の表紙

書籍名

もっと問いかける法哲学

判型など

274ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年5月

ISBN コード

978-4-589-04340-5

出版社

法律文化社

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もっと問いかける法哲学

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ワクチン接種を義務化すべきか? 子どもに選挙権を与えるべきか? セックス・ワーカーになる自由はあるか? こうした問題について、どのような点を考慮して、どのように考えていけばよいだろうか。
 
本書では、このような問いを15挙げている (15の問いについては、下記の「本の目次」を参照されたい)。そのどれもが、現代社会が直面するものであり、人々の間で意見が分かれるものである。
 
いずれの問いも、それ自体として興味深いだけではない。それだけではない、その問いについて考えていくと、自由・平等・法秩序といった問題についての理解が深まるものになっている。
 
本書は、瀧川裕英編『問いかける法哲学』(法律文化社、2016年) の続編である。『問いかける法哲学』は、法哲学の「教科書」というよりは、「演習書」であり「副読本」であり「入門書」である。その新機軸は「いきなり実戦アプローチ」にあった。
 
「いきなり実戦アプローチ」は、スポーツを始めるときに、基礎トレーニングではなく、まずゲームをしてみるような手法である。同じように、法哲学の勉強を始めるときに、基礎概念の学習を繰り返すのではなく、現実的な論点にいきなり取り組んではどうだろうか。こうした試みは、幸いにも多くの読者を獲得することができた。そのため、「もっと問いかける」という続編が刊行されるに至った。
 
続編となる本書『もっと~』では、問いを一新している。問いの選定基準は、具体的であること、論争的であること、今日的であること、規範に関わること、そして重要な理論的課題に関わることである。こうした選定基準を満たす数多くの問いから、その相互関係をも考慮しつつ、全体のバランスを考えて選定したのが、本書が掲げる15の問いである。
 
本書が想定する読者は、基本的には、大学の学部学生や法科大学院の学生である (前著は、多くの大学で採用され、議論の素材として用いられてきた)。だがそれに加えて、法哲学の入門書を目指して簡潔・明快に書かれているので、意欲的な高校生にも十分読みこなすことができるはずである。
 
もちろん、各章の問いに関心のある幅広い方々にも、興味深く読んでいただけるだろう。さらに、最新のトピックが扱われていることもあり、プロの研究者にもお楽しみいただけるポイントが随所にちりばめられている。入門しやすいが、レベルは落としていない。そのような入門書として、本書も前著と同じく、多くの方々に手に取ってもらえることを願っている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 瀧川 裕英 / 2024)

本の目次

はじめに
瀧川 裕英
 
第1部 自由
01 ワクチン接種を義務化すべきか?
若松 良樹
02 カジノを推進すべきか?
土井 崇弘
03 セックス・ワーカーになる自由はあるか?
関 良徳
04 人間の遺伝子を操作してよいか?
平井 光貴
05 奴隷契約は有効か?
米村 幸太郎
 
第2部 平等
06 男性の育児休業取得を義務化すべきか?
池田 弘乃
07 ベーシック・インカムを導入すべきか?
森 悠一郎
08 男女別トイレは廃止されるべきか?
小林 史明
09 ヘイト・スピーチを規制すべきか?
松尾 陽
10 子どもに選挙権を与えるべきか?
瀧川 裕英
 
第3部 法と秩序
11 死刑制度を廃止すべきか?
橋本 祐子
12移民を自由化すべきか?
浦山 聖子
13フェイク・ニュースを規制すべきか?
成原 慧
14 捕鯨をやめるべきか?
古澤 美映
15 裁判官はAIで代替できるか?
西村 友海

関連情報

書評:
速水健朗×倉本さおり×塚越健司×工藤郁子×斎藤哲也《文化系トークラジオLifeトークイベント》文化系大新年会2025――2024年のオススメ本はこれだ! (紀伊国屋書店新宿本店 2025年1月25日)
https://store.kinokuniya.co.jp/event/1736221874/

小門穂 評「2024年上半期読書アンケート」 (『図書新聞』3649号 2024年7月20日)
https://www.fujisan.co.jp/product/1281687685/b/2522600/

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