
書籍名
問うとはどういうことか 人間的に生きるための思考のレッスン
判型など
216ページ、四六判
言語
日本語
発行年月日
2023年8月9日
ISBN コード
9784479394105
出版社
大和書房
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
前著『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』(幻冬舎 2018)、『書くとはどういうことか 人生を変える文章教室』(飛鳥新社 2022) の続く『○○はどういうことか』の第3弾である。この順番には意味がある。
「考える」は「問う」に基づいている。だから考えるためには、問わなければならない。「書く」とは「考えたこと」を文字にすることである。だから書くためには、考えねばならず、考えるために問わねばならない。とてもシンプルな関係だ。だから、どのように書けばいいかは、どのように考えればいいかの問題であり、どのように考えればいいかは、どのように問えばいいかの問題である。私たちは、文章の書き方を学校で (大学も含めて) 学ばないが、それは考える方法を学ばないからであり、それはさらに問う方法を学ばないからである。何と明白な“事実”だろうか (だからこの順番で本が出たのだ)。
学生がレポートや論文に苦労するのも、「よく考えろ」と言われてもどうしていいか分からないのも、世の中に短絡的な反応があふれるのも、答えのない課題にどのように取り組むのか途方に暮れるのも、すべては同じ一つの原因に帰着する。「問うとはどういうことか」が分からないからである。
では、ここで「問うこと」について何をすればよいのか。テーマが「考える」から「書く」に移った時、「書く」とはたんに文字を記すことではなく、思考を組み立てることだと気づいた。そしてそれは、問いをどのようにつないでいくかを明らかにすることだった。
これは意外に難しい作業だった。一般に思考には「帰納」と「演繹」があると言われるが、それ以外にもいろいろあるはずだ。思考の種類が問い方の種類によるのであれば、今まで名づけられていない種類の思考を問いのつなげ方から捉えなければならない。そこで私は、様々な種類の問い――「5W1H」(具体的状況)、「~はどういうことか」(定義)、「なぜ~か」(根拠)、「例えばどういうことか」(例示)、「AとBはどのように関係するか」(関係) など――の特徴について述べ、さらに問いの結び付け方を「上下」と「前後」、多方向、大から小、小から大という方向から説明した。そのうえで、「問いのワーク」を紹介し、さらに現実の問題に対処するための問いの組み立て方について書いた。
もう一つ、私がこの本の締めくくりにぜひとも書かなければならないと思ったのが「いつ問うのをやめるべきか」である。私たちは、問うべき時に問わず、問わなくてもいい時に問う。その苦しさは、時に愚かではあるが、やはり尊いことである。なぜなら、それこそが人間的に生きることだから。そして何よりも私たちは、問うことで物事をより深く考え、理解するようになり、偏見や常識、みずからの思い込みから自由になれる。生きることを学ぶには、「問うこと」を学ばなければならないのである。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 梶谷 真司 / 2024)
本の目次
私たちは、なぜ問わないのか?
問うのは、基本歓迎されない
問うのは、しばしば攻撃的である
問いは、”与えられるもの”である
問うのは、かなり面倒くさい
問うのは、実は怖い
問うことには、どういう意味があるのか?
問うという行為は…[1]好奇心の表れ
問うという行為は…[2]違和感の表れ
第2章 そもそも、何のために問うのか?
目的をもって問う
1 知るために問う
「新しいこと」を知る
「正しいこと」を知る
2 理解するために問う
3 考えるために問う
想像するために問う
4 自由になるために問う
常識から自由になる
偏見から自由になる
苦しみから自由になる
無知から自由になる
第3章 具体的に、何を問うのか?
問いの種類と役割を知る
1 「意味」を問う――○○とはどういう意味か
言葉の意味
行為の意味
出来事の意味
2 「本質」を問う――○○とは結局何か?
3 「理由」を問う――なぜ○○なのか?
4 「方法」を問う――どのように○○するか?
5 「状況」を問う――誰がいつどこで何をなぜどうしたのか?
6 「関係」を問う――○○と△△はどのように関係しているのか?
7 「事例」を問う――たとえばどういうことか?
具体的に考える
反例を問う
8 「要点」を問う――要するにどういうことか?
9 「意見」を問う――あなたはどう思うのか?
10 「真偽」を問う――本当にそうか?
第4章 実際に、どのように問うのか?
問いの方向を決める
1 一方向的に問う
前に進む――それでどうするのか?
後ろに進む――どこから来たのか?
上に進む――より大きい視点から見ると?
下に進む――より深く掘り下げてみると?
2 多方向的に問う
比較する――どこが違うか/似ているか?
違う視点から見る――別の角度から見てみると?
反対の立場から見る――自分と違う立場に立つと?
時間軸を移動する――昔はどうだったのか?
空間軸を移動する――外から自分を見てみると?
問いの大きさを変える
1 小さい問いから大きい問いへ(個別具体から一般抽象へ)
個別具体的な問いから一般抽象的な問いへ向かう
バラバラのものを一つの観点からまとめる
2 大きい問いから小さい問いへ(一般抽象から個別具体へ)
第5章 どうすれば問う力がつくのか?
実践編1 問うトレーニングの3ステップ
1 テーマから問う
2 素材から問う
第6章 現実の問題にどう対処するのか?
実践編2 現実に対して適切に問う
1 解決法が分かっている場合
2 解決法が分からない場合
3 社会問題への対処
第7章 いつ問うのをやめるべきか?
問い続ければいいというものではない
1 非倫理的な問い
2 マジョリティの問い
3 確認すれば終わる問い
4 苦しみを増やす問い
5 問いを受け止める
おわりに
あとがき
関連情報
「対話」のカギとなる「問い」を生み出す居場所をつくる(梶谷真司氏) (リクルートワークス研究所 2024年1月26日)
https://www.works-i.com/research/project/shinjinji/future/detail003.html
【著者対談】アイデアを紡ぐ「問い」とはどういうことか?|梶谷 真司「『問う』とはどういうことか」×堤 藤成『制約をチャンスに変える アイデアの紡ぎかた』 (【つっつーのつむぐ塾】人生を変える言葉の紡ぎ方 | YouTube 2023年12月3日)
https://www.youtube.com/watch?v=uBT6LI53790
https://peatix.com/event/3779537?lang=ja
インクルーシヴな場を生み出す哲学対話とは何か
ダイバーシティ&インクルージョン研究 05 (東京大学ホームページ 2021年11月30日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/diversityresearch05.html
書評:
なぜ問うか?どう問うか?問いを磨くための実践ヒント集!東大の哲学教授・梶谷真司さん著『問うとはどういうことか』(大和書房)を読む。 (ほんのれんラジオ | 編集工学研究所 | note 2025年2月8日)
https://note.com/honnoren/n/nec5421fec405
斎藤幸平 (超域文化科学/哲学・科学史) 評 <本の棚> (『教養学部報』653号 2024年4月1日)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/653/open/653-3-01.html
書評・学習コラム (SOMPO Parkホームページ 2024年3月25日)
https://park.sompo-japan.co.jp/education/fl11853/
【リスキリング・コーチングお勧め書籍】 (ランスタッドホームページ 2023年12月1日)
https://services.randstad.co.jp/blog/hrhub20231201
書評「自分の魂や社会の不調を探る」 (信濃毎日新聞デジタル 2023年10月28日)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023102700741
自由得るトレーニング法 哲学対話の実践者が新著で説く
問うとはどういうことか 梶谷真司さん(あとがきのあと) (日本経済新聞 2023年10月7日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2080D0Q3A920C2000000/
印南敦史 (作家、書評家) 評「考える力を伸ばすために求められる「問う力」。思考の質をあげる「問い」とはなにか?」 (Book Bang / LIFEHACKER 2023年8月31日)
https://www.bookbang.jp/review/article/761709
イベント:
【イベント&オンライン配信(Zoom)】『問うとはどういうことか 人間的に生きるための思考のレッスン』(大和書房)刊行記念 梶谷真司×永井玲衣トークイベント「問う力はなぜ必要なのか」 (代官山蔦屋書店 2023年9月19日)
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/35240-1431410806.html