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茶色の文字が書かれた表紙

書籍名

哲学の言葉を聴く 西洋古典哲学研究

著者名

納富 信留

判型など

408ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年6月3日

ISBN コード

978-4-13-010163-9

出版社

東京大学出版会

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哲学の言葉を聴く

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古代ギリシアの哲学は、現代に至るまで大きな影響を与えてきた。しかし、伝承された著作は極めて限られており、多くの情報が断片的な証言で伝えられてきた経緯から、その読解には方法論的な難しさがある。古典文献学と哲学史を総合した方法によって読み解く必要がある点で、近現代の哲学書とは根本的に異なる。
 
2400年前に書かれたプラトンやアリストテレスの著作は、古代のパピュロス巻物から中世写本を経て写されてきた手稿テクストを、近代の学者が校訂し、印刷本として出版され広く流布してきた。それらを詳細に検証する古典文献学では、重要なテクストの読み方をめぐって学術的な論争が多く存在し、常に新たな提案がなされている。また、著作が伝わらない哲学者についての証言や断片は、古代後期に書かれた著作での引用や言及を丁寧に照合しつつ、元の資料を推定する学説誌や断片研究が行われている。一部には、時を超えて奇跡的に蘇った古代のパピュロス資料の読解も用いられる。本書は、そうした多様な古典文献学の手法により、残されたテクストを細部にわたって分析して、西洋古典哲学を復元する試みである。
 
本書は19本の論考と総論とで、5部からなる。第1部は初期ギリシア哲学とソフィスト思潮に関わる4章、第2部から第4部は初期から後期にわたるプラトン哲学の13章、第5部はアリストテレスに関わる2章である。とりわけ、著者が2010年に主催した国際学会の主題であった『ポリテイア』をめぐる5本の論考が中心におかれる。1990年代末からの論文があるが、議論と参考文献はできるだけ最新のものに改訂し、公刊時からの経緯を説明する「解題」を各章に付した。そこでは、それぞれの時期になされた研究がどんな意義を担っていたか、その後どんな影響を及ぼしてきたかを査定した。日本語で発表した章に加えて、英語論文を翻訳した3章と、日本語版と英語版とを照らし合わせた8章がある。本書は、国際的な研究と日本での研究を橋渡しする役割を意図している。
 
この中には、中世写本の間で読みが分かれる一字一句を巡って、どれほど異なる解釈が生じていて、そのうちどれが妥当と考えられるかをめぐる論考もある。また、著作が書かれた文化や政治的背景をめぐる論考や、近現代にどう扱われたかという受容を検証する作業もある。それら多様なアプローチが、総合的に古代ギリシアの哲学の言葉を浮かび上がらせてくれる。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 納富 信留 / 2025)

本の目次

序論

第1章 西洋古典哲学の理念と方法
 
第1部 初期ギリシア哲学・ソフィスト思潮
第2章 視点を超えて語る————クセノファネス 断片34 DK
第3章 ソフィストの言行を証言する————ディオゲネス・ラエルティオス『哲学者列伝』第9巻「プロタゴラス伝」
第4章 神の存在について発言する————プロタゴラス『神々について』断片4 DK
第5章 喜劇がソフィストを揶揄する————アリストファネス『鳥』689–691
 
第2部 プラトン(一)初期から中期へ
第6章 最初の言葉が挑発する————プラトン『ソクラテスの弁明』17A
第7章 哲学的な政治の理想が挫折する————プラトン『カルミデス』の背景
第8章 古人の語りを引用する————プラトン『饗宴』178B–C
第9章 自死はどの場合に許されるか————プラトン『パイドン』62A
 
第3部 プラトン(二)『ポリテイア』読解
第10章 正義をなす友と敵とは誰か————プラトン『ポリテイア』第1巻334 D–E
第11章 正義に挑戦する————プラトン『ポリテイア』第2巻357A–362C
第12章 真実の虚偽とは何か:プラトン『ポリテイア』第2巻382A–E
第13章 哲学と政治はどう交わるか————プラトン『ポリテイア』第5巻473C–E
第14章 ポリテイアが天上に掲げられている————プラトン『ポリテイア』第9巻592A–B
 
第4部 プラトン(三)後期の哲学
第15章 万物の構成要素が結び合わされる————プラトン『ソフィスト』の語彙
第16章 善をどう論じるか————プラトン『ピレボス』11A–12B
第17章 永遠はどのように時間となるか————『ティマイオス』37C–38C
第18章 プラトンは一人称で書いたか————伝プラトン著『第七書簡』の真偽問題
 
第5部 アリストテレス
第19章 問答法は試問術とどう関わるか————アリストテレス『ソフィスト的論駁について』34.183a37–b8
第20章 イデアと名を同じくする————アリストテレス『形而上学』A6, 987b7–10
 
あとがき
出典索引
人名索引
 

関連情報

試し読み:
https://hondana-storage.s3.amazonaws.com/131/files/10163_hajimeni.pdf
 
書評:
加藤尚武 評 (みすず書房『読書アンケート2025』 2026年2月16日)
https://www.msz.co.jp/book/detail/09842/

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