東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

全8巻

書籍名

ちくま新書 世界哲学史 全8巻 + 別巻

著者名

伊藤 邦武、山内 志朗、 中島 隆博、 納富 信留 (編)

判型など

全8巻 + 別巻セット、新書判

言語

日本語

発行年月日

2020年

ISBN コード

(世界哲学史1) 9784480072917
(世界哲学史2) 9784480072924
(世界哲学史3) 9784480072931
(世界哲学史4) 9784480072948
(世界哲学史5) 9784480072955
(世界哲学史6) 9784480072962
(世界哲学史7) 9784480072979
(世界哲学史8) 9784480072986
(世界哲学史 別巻) 9784480073648

 

出版社

筑摩書房

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「世界哲学史」とは、従来の西洋を中心とする「哲学」の見方から「哲学史」を解放し、広い視野から人類の知的営為としての哲学を再構築する「世界哲学」プロジェクトの一部である。伊藤邦武 (近現代西洋哲学・京都大学名誉教授)、山内志朗 (西洋中世近世哲学・慶應義塾大学)、中島隆博 (中国哲学・東京大学)、納富信留 (西洋古代哲学・東京大学) の4人の編集でちくま新書から刊行された「世界哲学史」シリーズは、全8巻 (総計2448ページ) で計102名の各分野の専門家により、計82章と31のコラムで古代から現代までの世界の諸哲学を鳥瞰し、時代を特徴づける主題から諸伝統を同時代的に捉えていく。シリーズ本体は2020年1月から毎月1巻のペースで刊行され8月に完結したが、その全体を総括しつつ新たな論点を補った別巻が12月に出版されて全9巻となった。日本で初の総合的な哲学史プロジェクトであり、世界でも例をみない大規模な試みとなっている。
 
通常「哲学」と呼ばれるギリシア・ローマから現代のヨーロッパと北アメリカまでの西洋での二千六百年の伝統だけでなく、インドや中国やイスラームといった有力な哲学の諸伝統も同じ土俵で論じられる。また、従来は顧慮されなかった周縁文化、例えば、ラテン・アメリカ、ロシア、アフリカ、朝鮮、日本なども重要な一角として考慮される。それらの間には中間地帯や相互影響があり、科学や宗教や経済との関連も考慮に入れると、これまで顧みられなかった知のダイナミズムが再現される。世界で展開された哲学の伝統や動きを全体として検討することで、現在私たちがどこに立っているか、将来どうあるべきかへのヒントが得られるはずである。人類の知の営みを新たな視野から再構築すること、それが「世界哲学史」の試みである。
 
この試みは、現在私たちが生きる世界が西洋文明の枠を越え、多様な価値観や伝統が交錯しつつ一体をなす新たな時代であるとの認識からきている。今日、環境や宇宙の問題など、地球さえ超える規模の発想が必要となっており、哲学は「世界」という視野から新たに人類の歴史を見る必要がある。「世界哲学 (World Philosophy)」は単に諸地域の哲学的営為を寄せ集めるものではなく、哲学という場において「世界」を問い、世界という視野から哲学そのものを問い直す試みである。古代文明における諸哲学の誕生、世界帝国の発展と諸伝統の形成、中世から近世への熟成を経て、近代社会・近代科学の成立、世界の一体化と紛争をへて、さらにその後へという流れが見えてくる。アジアの一部にありながら西洋文明をとりいれて独自の文化を築いてきた日本から、「世界哲学史」を考えて発信することは、哲学に大きな役割を果たすはずである。

 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 納富 信留 / 2021)

本の目次

『世界哲学史1 古代I 知恵から愛知へ』
序 論 世界哲学史に向けて(納富信留)
第1章 哲学の誕生をめぐって(納富信留)
第2章 古代西アジアにおける世界と魂(柴田大輔)
第3章 旧約聖書とユダヤ教における世界と魂(高井啓介)
第4章 中国の諸子百家における世界と魂(中島隆博)
第5章 古代インドにおける世界と魂(赤松明彦)
第6章 古代ギリシアの詩から哲学へ(松浦和也)
第7章 ソクラテスとギリシア文化(栗原裕次)
第8章 プラトンとアリストテレス(稲村一隆)
第0章 ヘレニズムの哲学(荻原 理)
第10章 ギリシアとインドの出会いと交流(金澤 修)
 
『世界哲学史2 古代II 世界哲学の成立と展開』
第1章 哲学の世界化と制度・伝統(納富信留)
第2章 ローマに入った哲学(近藤智彦)
第3章 キリスト教の成立(戸田 聡)
第4章 大乗仏教の成立(下田正弘)
第5章 古典中国の成立(渡邉義浩)
第6章 仏教と儒教の論争(中島隆博)
第7章 ゾロアスター教とマニ教(青木 健)
第8章 プラトン主義の伝統(西村洋平)
第9章 東方教父の伝統(土橋茂樹)
第10章 ラテン教父とアウグスティヌス(出村和彦)
 
『世界哲学史3 中世I 超越と普遍に向けて』
第1章 普遍と超越への知(山内志朗)
第2章 東方神学の系譜(袴田 玲)
第3章 教父哲学と修道院(山崎裕子)
第4章 存在の問題と中世論理学(永嶋哲也)
第5章 自由学芸と文法学(関沢和泉)
第6章 イスラームにおける正統と異端(菊池達也)
第7章 ギリシア哲学の伝統と継承(周藤多紀)
第8章 仏教・道教・儒教(志野好伸)
第9章 インドの形而上学(片岡 啓)
第10章 日本密教の世界観(阿部龍一)
 
『世界哲学史4 中世II 個人の覚醒』
第1章 都市の発達と個人の覚醒(山内志朗)
第2章 トマス・アクィナスと托鉢修道会(山口雅広)
第3章 西洋中世における存在と本質(本間裕之)
第4章 アラビア哲学とイスラーム(小村優太)
第5章 トマス情念論による伝統の理論化(松根伸治)
第6章 西洋中世の認識論(藤本 温)
第7章 西洋中世哲学の総括としての唯名論(辻内宣博)
第8章 朱子学(垣内景子)
第9章 鎌倉時代の仏教(蓑輪顕量)
第10章 中世ユダヤ思想(志田雅宏)
 
『世界哲学史5 中世III バロックの哲学』
第1章 西洋中世から近世へ(山内志朗)
第2章 西洋近世の神秘主義(渡辺 優)
第3章 西洋中世の経済と倫理(山内志朗)
第4章 近世スコラ哲学(アダム・タカハシ)
第5章 イエズス会とキリシタン(新居洋子)
第6章 西洋における神学と哲学(大西克智)
第7章 ポスト・デカルトの科学論と方法論(池田真司)
第8章 近代朝鮮思想と日本(小倉紀蔵)
第9章 明時代の中国哲学(中島隆博)
第10章 朱子学と反朱子学(藍弘 岳)
 
『世界哲学史6 近代I 啓蒙と人間感情論』
第1章 啓蒙の光と影(伊藤邦武)
第2章 道徳感情論(柘植尚則)
第3章 社会契約というロジック(西村正秀)
第4章 啓蒙から革命へ(王寺賢太)
第5章 啓蒙と宗教(山口雅広)
第6章 植民地独立思想(西川秀和)
第7章 批判哲学の企て(長田蔵人)
第8章 イスラームの啓蒙思想(岡崎弘樹)
第9章 中国における感情の哲学(石井 剛)
第10章 江戸時代の「情」の思想(高山大毅)
 
『世界哲学史7 近代II 自由と歴史的発展』
第1章 理性と自由(伊藤邦武)
第2章 ドイツの国家意識(中川明才)
第3章 西洋批判の哲学(竹内綱史)
第4章 マルクスの資本主義批判(佐々木隆治)
第5章 進化論と功利主義の道徳論(神崎宣次)
第6章 数学と論理学の革命(原田雅樹)
第7章 「新世界」という自己意識(小川仁志)
第8章 スピリチュアリスムの変遷(三宅岳史)
第9章 近代インドの普遍思想(冨澤かな)
第10章 「文明」と近代日本(苅部 直)
 
『世界哲学史8 現代 グローバル時代の知』
第1章 分析哲学の興亡(一ノ瀬正樹)
第2章 ヨーロッパの自意識と不安(檜垣立哉)
第3章 ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理(千葉雅也)
第4章 フェミニズムの思想と「女」をめぐる政治(清水晶子)
第5章 哲学と批評(安藤礼二)
第6章 現代イスラーム哲学(中田 考)
第7章 中国の現代哲学(王 前)
第8章 日本の哲学の連続性(上原麻有子)
第9章 アジアの中の日本(朝倉友海)
第10章 現代のアフリカ哲学(河野哲也)
終 章 世界哲学史の展望(伊藤邦武)
 
 
『世界哲学史 別巻 未来をひらく』
I 世界哲学の過去・現在・未来
第1章 これからの哲学に向けて(山内志朗、中島隆博、納富信留)
第2章 辺境から見た世界哲学(山内志朗)
第3章 世界哲学としての日本哲学(中島隆博)
第 4章 世界哲学のスタイルと実践(納富信留)
II 世界哲学史のさらなる論点
第1章 デカルト『情念論』の射程(津崎良典)
第2章 中国哲学情報のヨーロッパへの流入(井川義次)
第3章 シモーヌ・ヴェイユと鈴木大拙(佐藤紀子)
第4章 インドの論理学(志田泰盛)
第5章 イスラームの言語哲学(野元 晋)
第6章 道元と中世の日本哲学(頼住光子)
第7章 ロシアの現代哲学(乗松亨平)
第8章 イタリアの現代哲学(岡田温司)
第9 現代のユダヤ哲学(永井 晋)
第10章 ナチスの農業思想(藤原辰史)
第11章 ポスト世俗化の哲学(伊達聖伸)
第12章 モンゴルの仏教とシャーマニズム(島村一平)
第13章 正義論の哲学(神島裕子)

関連情報

自著解説:
納富信留「世界哲学史に向けて」 (webちくま 2020年1月22日)
http://www.webchikuma.jp/articles/-/1930
 
書籍紹介:
ちくま新書の「世界哲学史」シリーズ好調 哲学とは何か、非西洋の視点から問う (好書好日 2020年6月14日)
https://book.asahi.com/article/13448671
 
書評:
出口治明 評「新書で読む東西の哲学の地平」 (ALL REVIEWS 2020年3月9日)
https://allreviews.jp/review/4304

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