いまはスマホやパソコンで、宇宙からの地球の姿を簡単に見ることができる。日本列島に注目すると、全体が緑色だ。それだけ日本には森が多い。そこに暮らす私たちは、森の存在をどのように意識しているだろう。特に意識することなく、暮らしている人が大半ではなかろうか。近くて遠い存在、それが今の日本における森と人の関係性であると私は考えている。
将来を生きる子どもたちには、より近い存在として森とつきあってもらいたい。私はそのような思いで、この絵本シリーズの作成に携わった。そして子どもたちが主体的に考える、ということを大事にしたいと考えた。子どもたちが森のことや、森と日常の見えないつながりを知ることで、主体的に考えをめぐらせ、未来の森と人の関係性が創造されていくと思うからだ。
この絵本シリーズは小学校中学年以上の読者を想定し、4つの巻の構成されている。以下、簡単にそれぞれの巻の内容と意図を紹介する。
1巻は森とはどんなところか、知ってもらう入り口となる。どんな所が森と呼ばれるのか、世界中にそして日本の中にも様々なタイプの森があること、森の成り立ちや変化する過程、森に住む生物のつながり合い、大気や水の循環の中にある森の姿について、森を捉える視点を広範に盛り込んだ。おそらく、情報過多だろう。この傾向は以降の巻でも共通するが、それは子供たちの主体性を考えたためだ。個性豊かな子供たちを想定すれば、様々な切り口を用意することで、興味を引くポイントを見つけやすくなるのではないか。
2巻では、日本での事例を中心に、歴史をさかのぼって人の暮らしを支えてきた森林資源の生かし方を紹介した。このように多様な恵みがもたらされるのは、森に多様な生き物が暮らしている (1巻) からである。子供たちには、森の生き物の特性を見出した人のまなざし、それを加工して便利なものに作り変える人の技の存在に気づいて欲しい。その気づきは、新たな森のめぐみの発見、活用につながるかもしれない。
3巻は、木を植え、育てる林業という仕事を取り上げた。林業の特徴的な点は、長期性である。木を植え、育てたところで、その本人はその木を収穫することなく人生を終えることが普通であるし、世の中の木材の需要を満足する上でも難題である。人は、この長期性を少しでも克服しようと努力してきたが、限界があるのは明らかである。森を絶やさずに木材の恵みを得つづけられる仕組みは、まだまだうまくできていないのが現状だ。
最後に4巻では、地球規模での環境問題や、日常の消費生活が遠く離れた森に影響を及ぼしていることを示してみた。化石エネルギーやエビフライの消費が、森林の劣化や破壊につながっている可能性を示し、そうした問題を是正しようとする取り組みを紹介した。見えにくいだけで、森と日常の暮らしはどこかで必ずつながっている。子供たちには、つながりを想像し、学び、考え、未来の世界を生きてもらいたい。
(紹介文執筆者: 農学生命科学研究科・農学部 講師 齋藤 暖生 / 2025)
本の目次
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10095120.html
2巻:森のめぐみと人のくらし
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10107065.html
3巻:木を植え、森を育てる
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10108009.html
4巻:森と生きる未来へ
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10124266.html
関連情報
水内佑輔「本の紹介」 (会誌『森林技術』No.1002 2025年10月10日)
https://www.jafta.or.jp/contents/shinringijuts/27_month10_detail.html

書籍検索






