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白い表紙に白黒の絵

書籍名

室町幕府の成立基盤

著者名

山家 浩樹

判型など

462ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年11月15日

ISBN コード

9784642029902

出版社

吉川弘文館

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室町幕府の成立基盤

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近年、室町幕府研究は飛躍的な展開を遂げている。それでも、室町幕府を成り立たせている基本的な枠組み=基盤は、鎌倉幕府と比べて明瞭でない。
 
本書では、ふたつの課題を掲げる。ひとつは、室町幕府はどのように自己の経済基盤・組織制度を確立していったのか、その過程を追究する。鎌倉幕府の基本的な枠組みをどう継承し、変容を加え、新たな試行を模索したか、を検討する。継承・変容と新たな試行の先に、室町幕府は安定的なかたちを確立していく。安定へと導いた工夫や通念を検討することで、安定期幕府の基盤の一端を明らかにする、これがもうひとつの課題となる。
 
本書は4部12章で構成される。第一部と第二部で経済基盤を、第三部で組織制度を扱う。第四部は、それまでの検討の上に、安定を生んだ幕府の基本的枠組みを論ずる。
 
室町幕府は、鎌倉幕府下で御家人に賦課された経済的負担を地頭御家人役として継承した。しかし、安定的な収入源に成しえなかった。地頭御家人役の変容として、守護による賦課の再編を明らかにした。また、新恩地年貢・五十分一役に注目した。基本的な財源を補填するための新たな試行であったが、幕府財源として評価しえない。ただし、地頭御家人役や五十分一年貢は、形式的に残存し、基本的な枠組みとして遺存していることも見逃せない。
 
もう一つの経済基盤である所領では、効果的に所領を運営する方策として、所領を寄進しながら、得分の半分程度を留保するという寄進の形態を指摘した。将軍やその近しい人々・寺院の所領を幕府関係所領と総称すると、幕府関係所領にも援用されたと想定される。幕府関係所領には、しばしば、同じ所領に複数の幕府関係者の権利が確認される。幕府は、禅院や守護との連携など、さまざまな工夫で所領の得分を確保し、一方で、得分を多様な関係者に分与していた。安定期においても、所領は幕府財源としてある程度まで有効であった。
 
幕府組織では、訴訟を処理する組織・政所の変遷を検討した。訴訟処理の組織は、足利家家長である将軍と被官代表者という、家としての基本的な枠組みを展開するかたちで安定し、政所でも、有力被官が長官となって安定をみた。家としての枠組みを幕府組織に転化する工夫を凝らしている。
 
安定期幕府では、家長=室町殿とそれを支える人々との関係を展開して、中心に室町殿を置き、幕府を構成する人々を、室町殿との距離感を基準に、同心円状の階層をなすかたちに配置し、新たな秩序となっていた。この階層的なかたちのなかで、室町殿の近くで活躍する人々の役割分担は明瞭でない。互いに干渉しないための工夫として、支出担当者は財源まで関与する、仲介者は着手した案件を最後まで担当する、など、担当に一貫性がみられる。担当の一貫性は、史料上「本路」と表記される。「本路」に象徴される認識は、階層的なかたちで秩序を保った安定期の室町幕府にとって、運営上に欠かせない共通認識=通念であった。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 名誉教授 山家 浩樹 / 2025)

本の目次

序論

第一部 経済基盤の継承と展開
 第一章 室町幕府初期の財政基盤
  第一節 新恩地年貢
  第二節 将軍家政所本役所・本御領の年貢
  第三節 五十分一年貢
  第四節 室町幕府財政基盤の再整理
 補論 定率賦課の系譜
  第一節 建武政権の二十分一役
  第二節 室町期の定率賦課
  第三節 戦国大名による定率賦課
  第四節 徳川家康による五十分一役
 第二章 太良荘に賦課された室町幕府地頭御家人役
  はじめに
  第一節 賦課の実態
  第二節 賦課の契機
  第三節 賦課の変遷
  第四節 地頭御家人役徴収体制の変化
 第三章 上総守護宇都宮持綱―根本所領の記憶―
  第一節 素材
  第二節 分析―満済―
  第三節 追究―上総―
  第四節 結語
 〈附論〉 三浦氏と尊氏
 第四章 駿河国大岡荘と足利満詮―北条氏所領の記憶―
  第一節 頼印と地蔵院
  第二節 紀良子を経て地蔵院へ
  第三節 将軍近親者の所領の相伝

第二部 幕府関係所領の意義
 第一章 禅僧への所領寄進―禅院領からみた室町幕府―

  第一節 経済的側面
  第二節 政治的側面
  第三節 嶋頭荘をとりまく環境
  第四節 禅院領と室町幕府
 第二章 室町幕府前期における奉行人の所領―所領からみた奉行人の本質―
  第一節 禅院領や御料所との関わり
  第二節 領有と継承
  第三節 給物と所領
  むすびにかえて―奉行人の経済における所領―
 第三章 室町幕府関係所領の様相
  第一節 室町幕府と加賀国
  第二節 室町幕府関係所領の重なり合い

第三部 組織の継承と展開
 第一章 室町幕府訴訟機関の将軍親裁化

  序節
  第一節 引付方の変遷
  第二節 御前沙汰の変遷と恩賞方
  終節
 補論 合議と親裁をめぐって
  第一節 合議について
  第二節 『御前落居奉書』『御前落居記録』試論
  第三節 内談について
  第四節 仁政方について
  第五節 御判御教書を出す場
 第二章 室町幕府政所と伊勢貞継
  第一節 南北朝期の御所奉行
  第二節 伊勢氏と政所執事
  第三節 伊勢氏職掌の複合性

第四部 安定を生む基本的枠組み
 第一章 安定期室町幕府の政治秩序

  第一節 ふたつの中心点
  第二節 階層的なかたち(秩序)の構築
  第三節 階層的なかたち(秩序)の本質
 第二章 室町幕府運営にみる多様性と一貫性
  第一節 収支にみる一貫性と多様性
  第二節 仲介者の多様性と一貫性
 第三章 室町幕府の賦と奉行人
  第一節 ふたつの賦
  第二節 室町幕府の訴訟処理の方式
  第三節 奉行人の職掌
  第四節 賦の意義
 結論
  第一節 経済基盤の継承・展開と新たな工夫
  第二節 組織の継承・展開と新たな秩序
  第三節 階層的なかたちを支える通念としての本路、そして奉行人の意義

初出一覧
あとがき
索引(人名・寺社名・所領名)

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