重力に準ずる未知の相互作用の探索 時空構造を知る手がかりを求めて
東京大学の神谷助教らは、中性子とキセノン原子の散乱角度分布を精密に測定して、重力に準ずる新しい相互作用を探索しました。その結果、既知の相互作用から期待される分布と実験から得られた分布が高精度で一致することを確認し、重力に準ずる相互作用が存在しえる可能性の範囲を、絞り込むことに成功しました。
二つの物体間に働く重力は、物体間の距離の二乗に反比例して強くなります。例えば、物体間の距離が半分になると、これらの間に働く重力は4倍になります。しかし、100ミクロン以下の微視的な距離においても成立するかは実験的に検証されていません。
今回、研究グループは、韓国原子力研究所内に設置されているHANARO研究炉の中性子散乱実験用ビームラインを用い、冷却された中性子ビームをキセノン原子に照射して、その散乱角度分布を精密に測定しました。その結果、物体間の距離が0.04ナノメートルから4ナノメートルの範囲において、世界最高となる探索感度を達成しました。
微視的な距離での重力に準ずる相互作用の研究は、時空構造や重力理論の理解へむけた糸口となる可能性を秘めています。これまでは、 電磁気力などのより結合の強い力の影響によって、このような弱い相互作用の探索は難しいとされてきましたが、本成果は、これらの相互作用を検証する一つの方法を示したと言えます。
論文情報
Constraints on New Gravitylike Forces in the Nanometer Range", Physical Review Letters 114, 161101, doi:10.1103/PhysRevLett.114.161101.
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