タンパク質が標的と結合する仕組みを解明 天然変性タンパク質は2つの仕組みを使い分けて結合する
東京大学大学院総合文化研究科の新井宗仁准教授は、アメリカ合衆国スクリプス研究所のPeter E. Wright教授らの研究グループとの共同研究により、新しいタイプのタンパク質である「天然変性タンパク質」が標的分子と結合する仕組みを解明しました。今後、病気に関わる天然変性タンパク質が機能を発揮する仕組みの解明や創薬につながることが期待されます。
生体内には多数のタンパク質が存在し、決められた相手と結合して機能を発揮しています。ひも状の分子であるタンパク質は通常、安定な構造に折りたたまれてから相手の分子と結合します。一方、新しいタイプのタンパク質である「天然変性タンパク質」は、単独ではひも状のままで揺らいでいますが、標的と結合するときに折りたたまれます。しかし、その詳細な仕組みは未解明でした。
今回研究グループは、典型的な天然変性タンパク質が標的分子と結合する反応を核磁気共鳴分光法で測定しました。その結果、天然変性タンパク質は折りたたまれやすさに応じて2つの仕組み(誘導適合機構と構造選択機構)を使い分けて標的分子と結合することを発見しました。
天然変性タンパク質には、がん、白血病、アルツハイマー病、パーキンソン病、狂牛病などのさまざまな病気に関与するタンパク質が含まれています。本研究の成果は、これらのタンパク質が機能を発揮する仕組みの解明や治療薬の開発につながると期待されます。
論文情報
Conformational propensities of intrinsically disordered proteins influence the mechanism of binding and folding", Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America vol. 112, no. 31, page 9614-9619, doi:10.1073/pnas.1512799112.
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