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蚊の膜タンパク質を用いたヒトの汗の匂いを感知するセンサ 人工の細胞膜に埋め込み、ロボットに搭載

掲載日:2016年12月1日

© 2016 Shoji Takeuchi research group.ロボット上部にヒトの汗の匂い成分を染みこませた紙をかざすとセンサが反応し、ロボットは右側に移動した。

蚊の受容体を用いた匂いセンサを搭載した移動ロボット
ロボット上部にヒトの汗の匂い成分を染みこませた紙をかざすとセンサが反応し、ロボットは右側に移動した。
© 2016 Shoji Takeuchi research group.

東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授と神奈川科学技術アカデミーの三澤宣雄研究員らの研究グループは、住友化学と共同でヒトの汗の匂いに反応する蚊の膜タンパク質(嗅覚受容体)を人工的に作った細胞膜に組み込んだ匂いセンサを開発し、移動ロボットに搭載したところ、匂い物質にセンサが反応し、ロボットを動かすことに成功しました。災害現場などで不明者を探すセンサへの応用が期待されます。

これまで様々な匂いセンサが世界各国で開発されています。しかし、コンパクト性や感度・選択性という面で生物の嗅覚には及ばない、という課題がありました。

研究グループは、グループが以前に開発した、天然の細胞膜を真似て脂質の二重膜(人工細胞膜)を形成する方法を発展させ、蚊の触角に含まれている膜タンパク質でヒトの汗の匂いに反応する嗅覚受容体を人工の細胞膜中に埋め込みました。この嗅覚受容体は、ヒトの汗の匂い成分の一つとされるオクテノールに強く反応し、膜の電気の通しやすさ(導電率)を変化させます。この変化を読み取って蚊はヒトの匂いを感知します。

研究グループは、嗅覚受容体を埋め込んだ人工の細胞膜(センサ)を小型の無線装置に取り付け、移動ロボットに搭載しました。そして、ロボットの周辺でオクテノールを漂わせると、匂いに反応して、ロボットが移動しました。

研究グループは、今回開発したセンサを視界不良のため、画像探査等が不可能な災害現場などで不明者を探すセンサとして応用することを目指しています。

「蚊以外の別の昆虫の嗅覚受容体を利用することで、麻薬や爆発物の検知に使える可能性もあります。」と竹内教授は話します。「現在、最長約一時間のセンサ寿命を半日程度まで長持ちさせることを目標に開発を進めます」と続けます。

なお、本研究は(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)NEDO の「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」のプロジェクトの一つとして行われ、本成果は東京大学、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー、住友化学株式会社と共同で得られたものです。また本成果は、2016年10月にアイルランドで開催された国際学会MicroTAS 2016にて口頭で発表しました。

プレスリリース

論文情報

Nobuo Misawa, Satoshi Fujii, Koki Kamiya, Toshihisa Osaki, Yukiko Miyama, Tomoyuki Takaku, Yasuhiko Takahashi, Koichi Saito, and Shoji Takeuchi, "Odorant Sensor Using an Insect Olfactory Receptor Reconstructed in Artificial Cell Membrane", The 20th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (Micro Total Analysis Systems 2016) Oral presentation: 2016/10/10 (Japan time)

関連リンク

生産技術研究所

大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻

大学院総合文化研究科 広域科学専攻

生産技術研究所 竹内昌治研究室

神奈川科学技術アカデミー 人工細胞膜システムグループ

住友化学株式会社生物環境科学研究所 細胞科学グループ

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