バイオ燃料の生産に重要な酵素のはたらきを解明 ラン藻の酵素を改変して効率的にバイオ燃料を作る
東京大学大学院総合文化研究科の工藤恒大学院生と新井宗仁准教授らの研究グループは、生物由来の軽油燃料の産生に必須である、ラン藻の酵素のはたらきを解明しました。本成果は、再生可能エネルギーであるバイオ燃料の生産の効率化や、凍りにくい燃料の生産に応用でき、地球温暖化の防止にも貢献しうると期待されます。
藻類であるラン藻は、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、軽油燃料に代替可能な炭化水素(バイオ燃料)を生産できます。そのため、ラン藻によって生産されるバイオ燃料は、地球温暖化の防止に有効な再生可能エネルギーとして注目されています。近年、ラン藻による炭化水素の生産に関わる酵素として、アシル(アシル輸送タンパク質)還元酵素(AAR)が同定されましたが、その酵素の詳細なはたらきは未解明でした。
今回研究グループは、この酵素を構成するアミノ酸配列を変えたときに、酵素のはたらきがどのように変化するのかを詳細に調べました。その結果、この酵素のアミノ酸配列を変えると、炭化水素の生産を効率化できるだけでなく、生産される炭化水素の長さも調節できることを発見しました。
「一般的に炭化水素の長さが短くなると凝固点が下がり、炭化水素は凍りにくくなります」と新井准教授は説明します。「それゆえ今後、酵素のアミノ酸配列を改変して、生産される炭化水素をさらに短くすることができれば、凍りにくい寒冷地用の軽油燃料を生産できるようになると考えています」と続けます。
論文情報
Comparison of aldehyde-producing activities of cyanobacterial acyl-(acyl carrier protein) reductases", Biotechnology for Biofuels Online Edition: 2016/11/01 (Japan time), doi:10.1186/s13068-016-0644-5.
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