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雷雲に隠れた天然の加速器を雷が破壊する瞬間を捉えた 放射線・大気電場・電波による高エネルギー大気現象の観測

掲載日:2018年7月12日

© 2018 はやのん理系漫画制作室 雷雲からのガンマ線ビーム(左)とその放射源を破壊した雷放電(右)。能登半島の上空を雷雲が通過した際に、地上の放射線検出器が雷雲内の電子加速によって生成されたガンマ線放射を検知した。電子の加速機構は雷放電によって破壊され、ガンマ線放射とともに消滅した。

雷放電によって破壊される雷雲内の加速機構
雷雲からのガンマ線ビーム(左)とその放射源を破壊した雷放電(右)。能登半島の上空を雷雲が通過した際に、地上の放射線検出器が雷雲内の電子加速によって生成されたガンマ線放射を検知した。電子の加速機構は雷放電によって破壊され、ガンマ線放射とともに消滅した。
© 2018 はやのん理系漫画制作室

東京大学大学院理学系研究科の和田有希大学院生らの国際共同研究グループは、雷雲内で発生した電子の加速現象が雷放電で破壊されたことを、能登半島における放射線・大気電場・長波帯電波での冬季雷観測により明らかにしました。

近年の研究により、雷雲から数分~数十分にわたって放出されるガンマ線が検出されています。雷雲の中に存在する強電場は大気中の電子を加速・増幅し、制動放射によりガンマ線を発生させます。この現象は「ロングバースト」と呼ばれていますが、ロングバーストがどのように発生・成長・消滅するか、どのように数十分持続する電子の加速機構を維持するかなど、多くの基礎的な性質が明らかになっていません。

今回の観測は金沢大学能登大気観測スーパーサイト (石川県珠洲市) で行われました。2017年2月11日に雷雲の接近を大気電場計が検知し、75秒継続したロングバーストが雷放電によって途絶した様子を放射線検出器が観測しました。富山湾に設置された5台の受信機からなる長波帯雷観測ネットワークは、能登半島の上空を西から東へ進展する雲放電を検出しました。放電路は観測サイトの南東0.7 kmを通過しており、通過時刻はロングバーストの途絶時刻と一致しました。したがって放電路進展が観測サイトの上空にあった電子の加速機構を破壊し、ロングバーストを停止させたことが明らかとなりました。

ロングバーストは雷の前駆現象ではないかと議論されており、今回の観測では世界で初めて、ロングバーストの途絶と雷放電との関係を詳細に明らかにしました。今回のケースでは雷放電はロングバーストの発生位置から15 km離れたところで開始したため、ロングバーストは放電の開始に影響を与えていませんでしたが、継続的な観測により、ロングバーストと雷放電の開始との関係が明らかになると考えられます。

「今回の研究は放射線・大気電場・電波観測のコラボレーションによるもので、その結果が論文としてまとめられたことを大変うれしく思います」と和田大学院生は話します。「ロングバーストの途絶事象は数年に一度の頻度でしか観測されていない貴重なイベントであり、放射線・大気電場・電波の同時計測が実現した観測サイトで、このような事象が検出されたことは運が良かったと思います。これまで限定的だった異分野間の連携が進展し、今後の観測でどのような未知の現象に出会えるかを楽しみにしています」と期待を寄せます。

本成果は東京大学、理化学研究所、米国ロスアラモス国立研究所、京都大学、東京学芸大学、神戸市立工業高等専門学校、近畿大学、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、名古屋大学、金沢大学、日本原子力研究開発機構の国際共同研究によって得られたものです。

論文情報

Y. Wada, G. Bowers, T. Enoto, M. Kamogawa, Y. Nakamura, T. Morimoto, D. M. Smith, Y. Furuta, K. Nakazawa, T. Yuasa, A. Matsuki, M. Kubo, T. Tamagawa, K. Makishima and H. Tsuchiya, "Termination of Electron Acceleration in Thundercloud by Intra/Inter-cloud Discharge," Geophysical Research Letters Online edition: 2018年5月17日 (Japan time), doi:10.1029/2018GL077784.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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