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第5回「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を開催

掲載日:2021年1月13日

2020年11月7日 (土) 、カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) と物性研究所、宇宙線研究所の主催により、物理を学ぶ女子学部生及び女子大学院生の支援を目的に「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を開催し、18名の参加がありました。本イベントは、物理学科出身の様々な講師の方をお招きしてキャリアパスを提示すると共に、参加者同士のネットワーク作りや物理学分野 (素粒子・原子核、宇宙・天文、物性、物理工学等) の魅力を伝える機会として行われてきたもので、今年が第5回目となります。第5回となる今回は新型コロナウイルスの影響を鑑み、全面オンラインでの開催となりました。

最初に森初果物性研究所所長より挨拶があり、講演に移りました。1人目の講演者、奈良女子大学 自然科学系物理学領域助教の下村真弥さんは、「国際大型加速器実験と海外生活と子育てと共働き」と題して講演しました。学生時代の留学経験や、大型加速器で作り出したクォーク・グルーオンプラズマ (QGP) からクォークの性質に迫るという国際共同実験の様子、加えて共働きでの子育て経験やその過程での試行錯誤について紹介しました。特に、学部生時代に大学を休学して行った留学では、英語力の向上に加えて自らの視野を広げる経験が出来たことで人生を良い方向に変える転機となったと語りました。また、国際共同実験に参加していることから、海外への出張や学会発表などもあるものの、家族で話し合い協力しあえる体制が上手くできたことや、子連れで学会参加をする等で乗り切っていることなどを具体的に伝えました。そして最後に、人生における様々な選択にあたっては、常に「自分が幸せになるためにはどうしたらいいかを考えること」に立ち返る重要性を学生に語り、講演を締め括りました。

2人目の講演者は、京都大学複合原子力科学研究所助教の田端千紘さんで、「量子ビームで見る物質のミクロな世界」と題して講演しました。学部時代の学生実験で物性の面白さに目覚めたこと、そして、大学院で研究室に入ってからどのように「量子ビーム」に出会い、卒業後の研究キャリアを重ねてきたか等を具体的なエピソードやその時々の具体的な研究課題を説明しながら紹介しました。特に、博士課程3年時に試料作成を目的としたチェコ出張では、帰国直前まで試料が完成せず苦労したものの、最終的には全ての結晶の向きが揃ったUAu2Si2単結晶試料の作成に世界で初めて成功したことなどを印象的なエピソードとして語りました。そして、現在も携わるウラン化合物はじめとした物質開発スキルと量子ビーム実験を組み合わせることで、電子物性研究の可能性を広げられる面白さがあること、これまで女性であったことで困ったことはあまりなかったことを学生に伝えていました。

3人目は、武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程研究室准教授の宮原ひろ子さんで「美大で物理! ~一般教養の教員というキャリア~」と題して講演しました。木の年輪や氷床コア、石灰岩に刻まれた太陽活動や宇宙線の歴史を調べつつ、気候変動との比較も行うといった研究紹介に始まり、現職に至るまでの経歴や、応募するポストを選ぶ際に重視したことなどを具体的に述べました。そして、一般教養の教員としての業務内容や研究環境についても紹介し、進路の一つとして考える場合のアドバイスをしました。最後に、周囲の研究者の結婚・子育て事情や、育児後に研究を再開できる制度があることなどにも触れて講演を終えました。

4人目は、株式会社 IHI 経営企画部主幹の福岡千枝さんで、「意外と分からない,本当に好きなこと ~とりあえずやってみちゃうと好きになる?」と題して講演しました。冒頭ではまず、現在に至るまでのキャリアとプライベートの出来事の時系列を示しました。特に学生から事前質問のあった別居婚や海外経験を語るにあたり、自らの週末婚の経験や IHI 就職後に修士号と博士号を取得する際、修士号は海外の大学で学び取得したことなどを紹介しました。引き続いて話は仔細の紹介に移り、IHI で研究職として行ってきた業務概要や、研究職の後に経営企画部へ図らずして異動となりエネルギー貯蔵システムに関わる新規事業の立ち上げをすることになったこと、そこでの苦労や経験、現在の業務概要を紹介しました。異動当初は新規事業立ち上げをやりたかったわけではなかったけれど、次第にやりがいを見いだし面白くなったという自身の経験を踏まえ、企業では希望しない部署に異動することもあるが、違う分野でもやってみると面白くなっていったり、自らを成長させることもあるので、前向きに捉えて何事も恐れずやってみて欲しいというメッセージを参加学生に伝えて講演を締め括りました。

4つの講演後に行われた質問会では、参加者からキャリアや大学院選択等に関する質問が相次ぎ、講師に加えて TA の大学院生が回答をしたり、チャットを通じて参加者同士でアドバイスをしあう一幕もありました。講演の合間には、Kavli IPMU と物性研究所、宇宙線研究所の3研究機関についての研究所紹介も行われました。そして最後に、徳永将史物性研究所准教授の挨拶をもってイベントは終了しました。

参加者アンケートからは、「仕事や研究と子育てとの両立に不安があったが気持ちが前向きになった」「女性で研究職に就くことに少し不安を感じていたが、今回の講義の内容から自分のやりたいことに自信を持って進路を選択する決意ができた」「何事も自分が後悔しないような選択をするのが一番なのだと考えるようになった」など、参加者から前向きなコメントが数多く寄せられました。今回はオンライン開催であったこともあり、関東圏のみならず東北地方や関西地方、九州地方といった遠方の大学からの参加者がありました。


写真. 第5回やっぱり物理が好きの講師、参加者、スタッフの様子 (※集合写真撮影時にビデオ表示されていない参加者もいらっしゃいます)

 

 

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