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がんの増殖・転移を促進する新規因子の同定 小胞輸送を標的とする新しいがん治療戦略への可能性

掲載日:2019年5月8日

がん細胞におけるTUFT1の作用
TUFT1発現量は、複数のがんにおいて患者予後不良と相関する。細胞内において、TUFT1はRABGAP1と作用し、細胞内小胞輸送を制御することでmTORC1を活性化しているものと考えられる。
© 2019 宮園 浩平

東京大学大学院医学系研究科の川崎夏実大学院生、鯉沼代造准教授、宮園浩平教授らの研究グループは、がんの有望な治療標的であるmTORC1シグナルの新たな制御機構を見出しました。

mTORC1は細胞の増殖や生存に重要な役割を担うシグナル伝達経路として知られています。mTORC1シグナルはヒトのがんにおいてしばしば活性化されており、治療の標的として長く注目されてきました。一方、低分子量Gタンパク質Rabによって制御される膜や小胞を介した細胞内の小胞輸送もまたがんの悪性化に関わることが知られています。過去の報告では、mTORC1の活性化にはRabタンパク質の制御が必須であると考えられてきましたが、詳細なメカニズムについては明らかではありませんでした。

今回研究グループは、ヒト肺腺がんの細胞を用いて、がんの増殖・転移に重要な機能を持つmTORC1の制御因子TUFT1を同定しました。研究グループはTUFT1の発現の高さが、複数のがんにおいて患者予後不良と相関することを示しました。これについて、TUFT1がRABGAP1と結合し、標的とするRabタンパク質の活性を抑制することでmTORC1シグナルの活性化に寄与していると考察しています。さらに、TUTF1の発現量がAKT阻害剤であるがん治験薬perifosineの感受性と有意な負の相関を示すことを見出し、perifosineがTUFT1-RABGAP1と関連した細胞内小胞輸送経路に作用してmTORC1を直接阻害するという新たな可能性も示しています。

本成果は、がん細胞における小胞輸送を介した複雑なmTORシグナルの制御メカニズムとそのがん治療標的としての可能性について、有益な示唆をもたらしました。

「小胞輸送とmTORシグナルを結びつける詳細なメカニズムは、生物学的にも臨床的にも重要な知見になるだろう」と宮園教授は話します。「本研究成果が、新たながんの治療標的、もしくはバイオマーカーの開発に結びつくことを期待したい」と続けます。

論文情報

Natsumi Kawasaki, Kazunobu Isogaya, Shingo Dan, Takao Yamori, Hiroshi Takano, Ryoji Yao, Yasuyuki Morishita, Luna Taguchi, Masato Morikawa, Carl-Henrik Heldin, Tetsuo Noda, Shogo Ehata, Kohei Miyazono, and Daizo Koinuma, "TUFT1 interacts with RABGAP1 and regulates mTORC1 signaling," Cell Discovery: 2018年1月9日, doi:10.1038/s41421-017-0001-2.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く, UTokyo Repository)

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