高齢化社会の法的支援のあり方を考える
このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。
FSIプロジェクト 032
日本は、2036年に総人口の33.1%が65歳以上になり、約3人に1人を占めると推計されています。こうした時代の変化に対応するため、人々が日常生活でどのような法律問題や紛争を経験しているかを探り、これからの司法制度のあり方を考える大規模な調査プロジェクトが進められています。「同様の調査は2006~2007年にも行われましたが、この10年で日本の高齢化は急速に進み、介護、医療、住宅、財産管理、成年後見、消費者取引など、さまざまな分野で高齢者をめぐる新しいタイプの問題や紛争を発生させています。実は高齢者問題のほとんどは、法律問題の側面を持っています。新たに調査を行い、超高齢化社会にふさわしい法的支援のあり方を構想する必要が高まっているのです」と説明するのは、佐藤岩夫教授。
2017年11月から2018年2月にかけて、次の2つの大規模なアンケート調査が行われました。[1]無作為抽出した全国の市民を対象にした紛争経験調査、[2]全国の地方裁判所の既済事件の中から無作為抽出した事件の当事者および代理人弁護士を対象にした訴訟利用調査。その後、これら2つの調査の回答者へのインデプス・インタビュー調査が行われました。現在、結果の取りまとめが進められています。
「司法アクセスには費用、情報、距離、心理という4つのバリアがあることが問題視され、気軽に法律専門家の相談を受けられる法テラスを設立するなど、司法の利用相談窓口の充実とネットワーク化が行われてきましたが、今回の調査でそれがどの程度機能しているかが明らかになるはずです。また、認知・判断機能の低下によって、そもそも問題や被害に気づかないという課題、すなわち5つ目のバリアとして認知の問題があることをクローズアップさせ、これに対応する制度づくりの貴重な資料になることでしょう」と佐藤先生は語ります。超高齢化社会を迎え、司法のあり方が今、大きく変わろうとしています。
このプロジェクトが貢献するSDGs
佐藤岩夫 教授 | 社会科学研究所