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日本の女性の労働力活用が進まない理由を数値化

掲載日:2020年11月18日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 038

 

日本のビジネス市場において、女性の労働力の活用が進んでいない ── とは、よく言われることですが、経済学研究科の川口大司教授と大学院博士課程の鳥谷部貴大さんとの共同研究は、これを客観的なデータをもとに数値化、可視化することを目的に行われました。

用いたデータは、経済協力開発機構(OECD)が加盟国30カ国以上を対象に行った国際成人力調査(PIAAC)。各国約5000人以上の個人を対象に行ったもので、そこから読解力の男女差を計算すると、多少の差はあるものの、国別にはそれほど大きな違いがないことがわかりました。

次に、川口先生らはそのデータを「職場における読解力の利用頻度」というテーマでグラフ化しました。その数値は、「マニュアルや専門書をどれだけの頻度で読んでいるか」、「部下に仕事を指示する機会がどれだけあるか」といった質問への回答から計算されています。すると、その差は国によって大きく異なることがわかったのです。この数値が頭抜けて低いのが日本で、次に韓国、そしてノルウェーやオランダが低いことを示しています。

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読解力と読解力利用頻度の男女差の国際比較。棒は数値の95%信頼区間(誤差)、中央の点は平均値。各国平均が0、標準偏差が1となるよう標準化。右に行くほど女性の値が高い

「これは非常に驚くべきデータでした」と語る川口先生は、アジアと欧州という異なる文化圏において、なぜこのような共通点があるのか、疑問を持ったといいます。その疑問を解く鍵は、意外なところにありました。PIAACの全データから「読解力利用頻度の差」と「育児休業期間の長さ」という要素を抽出したところ、育児休業が長くなると低スキルでの読解力利用頻度の差は縮小しますが、高スキルになるにつれて男女間での差は拡大することがわかったのです。このことは女性にとって、長期の育児休業制度が高度なスキル利用を求められる職場から遠ざけてしまう傾向にあることを示しています。

「もちろん、日本人女性の労働力が活用されていない原因は、育児休業期間の長さという点だけでなく、さまざまな要素を含んでいるはずでずが、そのことに焦点を当てた初めてのデータとして、今後の政府の政策決定や、企業の経営判断などに有益な材料を与えることにつながると良いですね」と川口先生は語ります。

このプロジェクトが貢献するSDGs

ジェンダー平等を実現しよう働きがいも経済成長も人や国の不平等をなくそう

川口大司 教授 │ 経済学研究科

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