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北京出張とFSI |  総長室だより~思いを伝える生声コラム~第11回

掲載日:2018年7月2日

実施日: 2018年06月25日

 

東京大学第30代総長 五神 真

北京出張とFSI
 

 5月初め中国に出張し、北京大学120周年式典、Beijing Forum 2018IARU(International Alliance of Research Universities)学長会議に出席しました。Beijing Forum 2018では世界から300超の大学の学長らが参加する中、北京大・シカゴ大の学長、オックスフォード大の教授とともに基調講演を行いました。昨年7月に設置した未来社会協創推進本部(FSI)の活動を中心に、東大の最近の取組を伝える良い機会となりました。ここで、その講演について紹介します。

 インターネットに蓄積された膨大なデータを解析し活用する技術が今急展開しています。この「デジタル革命」は、遠隔地に分散した資源を繋げることを可能とし、経済活動や社会の仕組みを質的に不連続な形で変えようとしています。様々な産業において生産性を向上させるだけでなく、都市と地方との格差の解消、高齢者の社会参加促進など、より良い社会の実現に繋がることが期待されています。これは国連のSDGsで謳われている、「誰一人取り残さない」、すなわち多様性を尊重した皆が活躍できる社会像、インクルーシブな社会の実現という方向性に合致します。

 重要なことは、科学技術の革新に加え、それを社会実装するための制度、さらに皆が意欲的に参加するための経済メカニズムの仕組みを備えることです。大学は、文理を越えこの三つの要素を連携させ、新たな価値創造を先導する最適な舞台なのです。

 一方、デジタル革命には、「データ独占社会」とも言われるように、少数の先行者がデータを独占し、データを持たない者との間に決定的な格差を生むというシナリオもあります。今私たちはその分岐点に立っているのかもしれません。受け身ではなく強い意志を持って、皆で協働して良い方向を選び取らねばなりません。

 そのためには、共感性の高い目標が必要です。そこで、東京大学はSDGsに着目し、これを媒介に学内外の連携を深め、より良い社会創りに繋げるという取組を開始しました。FSIはその司令塔です。まずSDGsの実現に貢献する学内の研究活動を「登録プロジェクト」として募り、その活動を学内外に発信することからはじめました。既に170を超えるプロジェクトが登録され、学内外で連携の環を広げています。

 大学が社会を良くする駆動力を生みだすための具体的な取組は、世界の学長たちにとって新鮮な提案と映ったようです。多くの大学において、実践可能なものと感じてもらえたのかも知れません。東大の取組と構想を世界に発信し、国際的な連携の環を広げていくための、手応えを感じました。

「学内広報」1511号(2018年6月25日)掲載

 


 
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