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「Society 5.0」が意味するところ |  総長室だより~思いを伝える生声コラム~第17回

掲載日:2018年12月27日

東京大学第30代総長 五神 真

「Society 5.0」が意味するところ


  私たちがインターネットを利用するようになって約20年。この間に、画像センサや半導体メモリ技術は飛躍的に進化し、膨大なデジタルデータを瞬時に収集・保存できるようになりました。AIやデータ解析技術は、それらを様々な形で利用可能にし、その結果、あらゆる産業分野でスマート化が進んでいます。このデータ活用によるスマート化は地方と都市、老若男女、障がいの有無などの格差を大幅に縮小し、皆がそれぞれの能力を発揮して活躍するインクルーシブな社会を実現する可能性を持っています。これが「Society 5.0」の姿です。

 これまでの経済成長を支えた労働集約型から資本集約型への移行という成長モデルは終焉し、その延長上にはない知識集約型へのパラダイムシフトが起きつつあります。この転換をインクルーシブな社会の実現へと導くには、技術革新だけでなく、それを受け入れるための社会システム、人々が意欲をもって参加できるように資金をうまく循環させる経済メカニズムが必要です。この3つの連携を主導できるのは、知恵と知恵を活用する人が集積する場である大学です。まさに今が大学の出番なのです。知識集約型社会で誰もが経済活動に参加するには、いつでもどこでも必要なデータを皆が利用できる環境が必要です。日本全土を超高速でつなぐ学術情報ネットワークSINETとそれを支える大学は、これを実現できる理想的なインフラです。各地の大学が起点となり、企業等と連携することで、データを活用した新しい産業を日本各地で生み出せるのです。

 取組みの端緒として、11月19日に未来社会協創推進本部政策ビジョン研究センターがシンポジウム「データ利活用のための政策と戦略~より良きデータ利活用社会のために」を主催し、私も開会挨拶とパネル討論で登壇しました。パネルに登壇した吉本興業の大﨑洋社長の話は圧巻でした。所属芸人が47都道府県に定住して地域に根ざした発信をする「よしもと住みます芸人」というプロジェクトは大変好調で、初年度から黒字だといいます。「笑い」という価値で多様な人々の心を掴み、映像等の情報メディアで地域の良さを発信し、全国を元気にするという事業で、日本から飛び出してアジアにも進出しています。経済的な価値が物から情報や知恵・サービスに移るという知識集約型社会への転換を象徴する、わかりやすい事例だと感じました。

 大﨑社長を招待したのは、司会の喜連川優先生(データベース工学の専門家)です。話し言葉を情報学的に分析するために落語に注目し、その過程で吉本興業に辿り着いたという話も新鮮でした。パネルの様子は本号巻頭で詳しく紹介していますのでお楽しみください。

 

 

「学内広報」1517号(2018年12月18日)掲載
 

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