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猫と人のよりよい関係を東大生が3ヶ月考えてみたら・・・・・・| 広報誌「淡青」37号より

掲載日:2018年12月18日

猫と人のよりよい関係を

東大生が3ヶ月考えてみたら……

東大の教養学部と広告会社の博報堂が共同運営している「ブランドデザインスタジオ」は、 1・2年生が他者とのやりとりを通して正解の見えない課題の解決に取り組む共創型の教育プログラム。猫をテーマにした回を例に、駒場の新しい名物授業の姿をお届けします。

猫と教育プログラム

真船文隆
Fumitaka Mafuné
総合文化研究科
教授

ブランドデザインスタジオは、教養学部が博報堂との協働で2011年度から続けている教育プログラムです。学生がグループを組んで一つのテーマと3ヶ月間向き合い、アイデアを創出するというもので、スローガンは「正解のない問いに、共に挑む。」。広告制作の現場で使われるメソッドを活用しながら、一人で学ぶのが得意な東大生たちが、グループワークの実際を学びます。これまでに、井の頭線、東日本大震災のガレキ、新しい2月14日、東京タワー、未来の新聞、恋愛 ……と多彩なテーマで実施してきましたが、2016年度の夏学期に選ばれたのは、「“猫”をブランドデザインする」でした。

「“猫”をブランドデザインする」の回のポスター。

「テーマは、文・理や性別や年齢を問わず様々なバックグラウンドの人が興味を持てるものを選んでいます。当時、猫の飼育頭数が犬を上回ったことが取り沙汰されるなど、猫が何かと話題になっており、これだと思いました」と語るのはコーディネーターを務める真船先生。重視するのは生活者の目線です。東大生は3~4人ずつに組分けされますが、知り合いと同じ組にならないよう配慮され、さらに東京藝大の学生と社会人も加わるのが特徴。属性が異なる他人との協働でコミュニケーション力は自ずと鍛えられます。無断欠席者は参加資格喪失、他人の発言を否定しない、カンニング推奨など、いくつかの独自原則は社会で必要な基礎スキルに直結します。

今回、学生たちが具体的に求められたのは、「猫と人のよりよい関係を築く」ための提案でした。4月に犬を例題にワークショップの基本を学んだ後は、「地域猫」の発案者である神奈川福祉保健センターの黒澤泰さん、駒場いぬねこ研究室の出身で現在は上智大学の齋藤慈子先生を講師に招き、お話を拝聴。以降は各グループが必要と考えた取材、デスクワークを行って猫の情報を収集しながら、提案内容を議論し、人に伝えるためのやり方を検討しました。実態把握、コンセプト構築、アウトプット(アイデア発想)の準備という3ステップを経て、最後に成果発表を行ったのが7月のこと。「ただ、授業としては発表の前で終わり、発表自体は課外活動という位置づけでした。この授業では、提案そのものというより、提案に至る過程が重要だからです」(真船先生)。

「私の猫から私たちの猫へ」という発想で同じ猫を共飼いする「にゃんルーム」、猫の活動性に着目し外遊びが減った幼児と猫がキャンプ場で触れあう「ニャンジャの森」、猫の殺処分減と高齢者の孤独解消をつなげた「孫猫プロジェクト」、猫といると脳が活性化するという研究を礎にした職場とカフェの融合空間「CreP-cat」、猫も人も癒される避難スペース「ネコンテナ」。発表された提案と題名からは、各チームが真剣にかつ楽しく取り組んだ跡がうかがえます。

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「CreP-cat」が目指したのはオフィスでもホームでもない第3のアトリエ。(学生のプレゼン資料より)

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忍者のように身軽な猫と幼児がフィールドアスレチックで遊び回る「ニャンジャの森」。(学生のプレゼン資料より)

過程を重視する授業ですが、過去には提案が商品化されるという展開もあったとか。この回でも、あるグループが活動中に得た縁から、その名も「猫町アートスペース」という谷中の古民家ギャラリーで派生企画展が実現。猫と人のよりよい関係は、確かに築かれた模様です。

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授業では、KJ法、ブレスト、シャドーイング、イメージソートなど、広告制作の現場の様々な手法が活用されています。

ブランドデザインスタジオ 過去のテーマ
2011 年 井の頭線の未来
おやつの未来/ 学びの未来
2012 年 3.11ガレキ/10年後のスマートな暮らし/ 新しい2月14日
2013 年 東京タワーのリブランディング
新しい「劇場」/ 新しい「眠気覚まし」
2014 年 未来の「新聞」/ 東京オリンピック
2015 年 「恋愛」のブランド
「渋谷土産」を創る
2016 年 “猫” をブランドデザインする
未来の買い物
2017 年 新しい朝ごはん
“散歩” をブランドデザインする
2018 年 五感ブランディング入門:
『手ざわり』からブランドを創る
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2015年度「『渋谷土産』を創る」の回では、駅前のスクランブル交差点で事故が長く起きていないことに注目したチームが、安全祈願のお守りを土産にする企画を提案。その後、実際に「渋谷御守」という商品となり、駒場祭、渋谷区くみんの広場などで販売されました。

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