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AIを駆使した画像解析技術でライフサイエンスの現場を支援 | 島原佑基さん | UTokyo 30s No.11

掲載日:2019年12月17日

やらいでか!UTokyo サーティーズ
淡青色の若手起業家たち

350社を超える東京大学関連ベンチャー企業の中から、30代の元気な若手起業家を7人選びました。会社の場所は、本郷のベンチャー支援施設が4社、柏の支援施設が1社、大手町が1社、五反田が1社です。彼/彼女らは日々どんな事業を進めているのか、そして、どんな人となりを持っているのか。その一端を紹介します。(広報誌「淡青」39号より)
※2019年9月10日時点での30代を対象にしています。

医用画像解析システム開発

AIを駆使した画像解析技術でライフサイエンスの現場を支援

島原佑基さん
SHIMAHARA, Yuki
エルピクセル代表取締役
写真
社員全員の顔写真が並ぶ職場にて。起業時にメンターだった鎌田富久さんがいまは社外取締役の一人です

医用画像を読み取って正確な医療診断を支援する“EIRL”、研究者に代わって膨大な画像の解析処理を行う“IMACEL”、研究不正を防ぐ画像不正検出システム“ImaChek”。島原さんが新領域創成科学研究科時代の二人の同僚とともに起業したエルピクセルが提供する技術の三本柱です。共通するのはライフサイエンスの領域でAIによる画像解析技術を用いること。これには3人がいた研究室がバイオイメージングと画像処理を専門にしていた歴史が関係しています。

「2014年にSTAP騒動がありました。研究生活を送った者として非常に残念で、誰かが不正防止のシステムを作るべきだと思いましたが、生物学にも画像解析にも長けた人でないと無理。だったら両方がわかる自分たちでやるか、となって作ったのがImaChekでした」

当初は3人とも本業があり、会社は「週末だけ楽しむ趣味のようなもの」でしたが、社会の反響は大きく、次第に事業は拡大。覚悟を決めた島原さんは、務めていたIT系上場企業を辞めて経営に専念します。2015年には経済産業省の起業家育成プログラムに選ばれ、シリコンバレーへ。リスクを背負って挑戦するベンチャー精神を目の当たりにし、大きな刺激を受けた島原さん。2016年に7億円、2018年には30億円という巨額の資金調達オファーを受け、事業を迅速に大きく展開するやり方へ舵を切りました。そして、会社は約60人もが働く規模に成長。現在注力する医療診断分野では、脳のMRI画像から白質を計測するソフトウェアとして医療機器製造販売認証を取得し、販売を始めているものもあります。

「マイクロソフトのワードでは、英単語の綴りを間違うと赤線が表示されますよね。あれと同じように、MRI画像に病変が疑われる部位があると自動検出します。実は、自分の画像で試したら小さい脳動脈瘤がありました。幸い問題のないレベルでしたが」

医療AIの分野では、研究開発、製品化、法規制対応、販売というステップがあり、現在は3つ目から4つ目にシフトする段階に来たところ、と島原さん。その先にあるのは?

「医療とAIの組み合わせを新しい文化として広めたいんです。たとえばMRIやCTが世に出た当初は普及に苦労したはずですが、いまでは不可欠なものになりました。AIもそれに近いと思います」

第3次AIブームといわれるいま、ライバルは国内外に少なくありません。どこが先頭を走るのかは「神のみぞ知る」。確かなのは、北欧神話の医療の女神EirとエルピクセルのLが出会って生まれたのがEIRLであることです。


 

Q & A
研究室を選んだ決め手は? 「一つには、研究室にいた人が面白かったから。後の共同創業者です」
尊敬する起業家は? サイバーダインの山海嘉之先生。大学発ベンチャーのお手本です」
オフの楽しみは? 最近読んだ本は? 「フットサルやキックボクシング」「Frederic Laloux『ティール組織』」
30代の仲間に伝えたいことは? 「会社員には週末起業がお薦め。自分の裁量が大きいと幸せですよ」
EIRLのサンプル画面

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