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「細胞ファイバ」の技術をタピオカのように身近に | 安達亜希さん | UTokyo 30s No.13

掲載日:2020年1月7日

やらいでか!UTokyo サーティーズ
淡青色の若手起業家たち

350社を超える東京大学関連ベンチャー企業の中から、30代の元気な若手起業家を7人選びました。会社の場所は、本郷のベンチャー支援施設が4社、柏の支援施設が1社、大手町が1社、五反田が1社です。彼/彼女らは日々どんな事業を進めているのか、そして、どんな人となりを持っているのか。その一端を紹介します。(広報誌「淡青」39号より)
※2019年9月10日時点での30代を対象にしています。

三次元細胞組織開発

「細胞ファイバ」の技術をタピオカのように身近に

安達亜希さん
ADACHI, Aki
セルファイバ代表取締役CEO
写真
「入居しているアントレプレナーラボは手頃な家賃でバイオ系の実験ができるので、助かります」 写真:貝塚純一

手塚治虫の『ブラック・ジャック』に憧れて生命科学を志し、修士課程で組織工学を研究。IT企業やバイオ系ベンチャーの営業を経験した後、古巣の研究室に戻り、研究支援担当に。その仕事ぶりが認められ、研究室からスピンオフしたベンチャーの経営者に――。

30代前半にして安達さんの人生は紆余曲折、波乱万丈。でも、必ずしも本意ではなかった営業系の仕事も含めて、民間企業での経験が、セルファイバCEOとしての現在の仕事に生きていると言います。

早稲田大学理工学部を卒業後、東大の総合文化研究科に進学。マイクロ・ナノデバイス技術を応用して生命科学と工学を融合し、新しいモノづくりを目指す竹内昌治先生の研究は安達さんにぴったりでした。が、修士課程修了後の就活では苦労し、技術職を目指すも営業担当に。「このままでよいのか」と悩んだそうです。

技術寄りの仕事がしたくて2014年秋に戻った竹内研では、研究事務担当として申請書を書いたり、一般向けの科学展示の企画をしたり。ほどなく、研究成果を産業応用するため会社を作る話が持ち上がり、安達さんに白羽の矢が立てられます。

「ポスドクの研究者とかだと、アカデミアで生きていきたいという希望がある。でも私は民間企業の経験もあって研究のこともわかっているので、社長に適任だ、と言われました。人をガンガン動かしていくタイプではないので悩みましたが、最終的には、いつまでも悩んでいてもしょうがない、やってみよう、と」

2015年4月に駒場の生産技術研究所で始動したセルファイバの強みは、髪の毛の半分程度の直径を持つゲルチューブの中で細胞を培養し、ひも(ファイバ)状の組織を構築する技術。細胞を生体内に近い3次元環境で培養でき、本来の機能を保ったまま長期間維持できる上、大量の細胞を効率よく得ることができます。たとえば最近注目を浴びている脊髄損傷者への細胞移植治療は、一人あたりのコストが非常に高いことがネックですが、細胞ファイバ技術により細胞培養の効率が向上すれば、より多くの患者さんへ適用することが可能です。

また、細胞が産生する物質を効率よく回収し、医薬品・化粧品・食品などの原料として用いることも技術的には可能です。将来的には細胞ファイバ技術を医薬品だけではなく食品など身近な形でも普及させたい、と話す安達さん。「たとえば、ファイバに乳酸菌を入れて見えるような形で食べられるようにするとか、タピオカみたいに飲み物に入れてみるとか……」。

安達さんの「野望」が実現すれば、お母さんの作った細胞ファイバ入り乳酸菌飲料を、昨年誕生したばかりのお子さんが飲む日が来るかもしれません。

Q & A
学生時代に熱中した活動は? 「スキーサークル。お気に入りは北海道の比布町営スキー場です」
読書好きだとか。最近のお薦めは? 「小野不由美『屍鬼』と、グレッグ・イーガン『順列都市』」
ではお子さんに読んであげたい絵本は? 「『パパ、お月さまとって!』などのエリック・カール作品かな」
お手本にしている起業家は? ユーグレナの出雲充さん。研究者マインドを忘れない人だと思う」
青く着色された、細胞ファイバのサンプル
セルファイバ社がある南研究棟の中庭にて

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