FEATURES

English

印刷

多様性に富む藻類の総合商社を目指す柏発ベンチャー | 竹下毅さん | UTokyo 30s No.14

掲載日:2020年1月14日

やらいでか!UTokyo サーティーズ
淡青色の若手起業家たち

350社を超える東京大学関連ベンチャー企業の中から、30代の元気な若手起業家を7人選びました。会社の場所は、本郷のベンチャー支援施設が4社、柏の支援施設が1社、大手町が1社、五反田が1社です。彼/彼女らは日々どんな事業を進めているのか、そして、どんな人となりを持っているのか。その一端を紹介します。(広報誌「淡青」39号より)
※2019年9月10日時点での30代を対象にしています。

藻類バイオ素材開発

多様性に富む藻類の総合商社を目指す柏発ベンチャー

竹下毅さん
TAKESHITA, Tsuyoshi
アルガルバイオ代表取締役
写真
研究室から車で5分の場所にある農家の温室を転用した試験プラント(開放型)にて

地球上に数十万種存在すると言われ、バイオ燃料や食品としても注目される藻類。その藻類の「総合商社」を目指すのが、アルガルバイオの竹下さんです。竹下さんは藻類から海苔、ワカメ、コンブなどを除いた微細藻類の専門家。以前は柏キャンパスにある新領域創成科学研究科で微細藻類の研究に従事していました。

「中央大学時代は化学が専攻でしたが、どうしても生物に近い研究がしたくて、東大出身の教授の紹介で河野重行先生(現・名誉教授)の研究室に入りました。河野先生がバイオ燃料の研究を始めようという時期でした」と竹下さん。小さい頃に喘息に悩まされた経緯から、子どもに優しいクリーンエネルギーの研究に携われることに大きなやりがいを感じたそうです。

竹下さんは藻類の中でもクロレラの仲間を使って、藻類に油分を蓄積させるために炭素が細胞の中でどう流れているかを研究。また、多くの藻類から選んだ有望な株を元に、燃料として効率よい品種を開発し、大量培養、大量生産につなげる技術を磨きました。

藻類はバイオリアクターと呼ばれる装置で培養しますが、化石燃料の代替になるほどの量を生産するには課題が山積みです。大学での研究を自身で産業化する必要性を感じ、博士課程修了と同時に起業を決意。東大のベンチャーキャピタルUTECの支援を受け、2018年3月から柏キャンパス隣にある東葛テクノプラザ東大柏ベンチャープラザに居を構え、11名のスタッフと研究開発を進めています。

アルガルバイオでは約3000種類の微細藻類を扱っていますが、バイオ燃料以外にも機能性食品や化粧品として様々な用途が期待されます。たとえば血赤色のアスタキサンチンという成分には美肌効果が、黄色のルテインには目の老化予防効果が見込まれます。また、藻類に含まれる色素は体に優しい食品添加物として使えます。

「藻類にはたくさん種類があるので、何に困っているのかを企業から聞いて、それに合う藻類を提供することができます。特定の種類に絞って展開している企業はありますが、藻類の多様性を生かしているベンチャーは国内唯一だと思います」

他の生物の混入を防ぎ高品質な商品を開発するため、日本で一般的な開放型プラントではなく、ガラスの直管を並べた閉鎖型のバイオリアクターを建設することが目下の目標だと語る竹下さん。柏発の東大ベンチャーとして一旗揚げる覚悟は固まっています。

「千葉県は耕作放棄地や未利用の温室が結構多いので、そうしたところにバイオリアクターを設置して有効利用と地域活性化に貢献したいと考えています」

Q & A
私たちの地球を救うのは? 「植物と藻類。環境問題を解決するのは藻類だと信じています」
趣味は何ですか? 「いわゆる「鉄ちゃん」。列車の貸し切りイベントを開催することも」
柔道経験が縁でチェコの大学で研究を? 「研究室に来た教授が柔道家で。お宅に滞在させてもらいました」
上の世代を見て感じることは? 「海外進出の手柄話や苦労話など聞くと、妙にやる気が出てきますね」
研究室では藻の培養効率を高めるための実験が続いています

関連リンク

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる