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パネル単位の即時監視技術で太陽光発電をサステイナブルに | 李旻さん | UTokyo 30s No.15

掲載日:2020年1月21日

やらいでか!UTokyo サーティーズ
淡青色の若手起業家たち

350社を超える東京大学関連ベンチャー企業の中から、30代の元気な若手起業家を7人選びました。会社の場所は、本郷のベンチャー支援施設が4社、柏の支援施設が1社、大手町が1社、五反田が1社です。彼/彼女らは日々どんな事業を進めているのか、そして、どんな人となりを持っているのか。その一端を紹介します。(広報誌「淡青」39号より)
※2019年9月10日時点での30代を対象にしています。

電力線通信システム開発

パネル単位の即時監視技術で太陽光発電をサステイナブルに

李旻さん
LI, Min
ヒラソル・エナジー代表取締役
写真
屋上に設置された試験パネルは15枚。「適度な角度があり、鳥の糞が付いても雨で落ちます」

再生可能エネルギーの代表格として普及が進んだ太陽光発電。太陽光パネルの発電効率も生産力もすでに高いレベルに達し、今後はこれをいかに持続可能なものにするかが重要課題です。そうした状況に着目し、パネルの異常を自動検知して保守に役立てる独自システムを磨いているのが、上海出身の李さん。パネルに付けたセンサーで稼働状況を読み取り、リアルタイムで遠隔監視する仕組みです。

「実は、無線通信を使う既存の技術では、多くの中継局と複雑な配線が必要で、コストがかさみます。また、監視がブロック単位でしかできず、異常パネルの特定には人力が必要でした。でも、私たちのIoTプラットフォームならパネル一枚単位で状況が把握できます。センサーが読み取った情報を電力線で送るという東大発の技術の賜物です」

復旦大学から工学系研究科・影山和郎先生の研究室に進み、技術経営戦略学を専攻した李さんは、ソニーに勤務した後、産学連携本部(現・産学協創推進本部)に転身してインキュベーション支援の仕事に就きました。学内の研究シーズを探す中で出会ったのが、情報理工学系研究科・落合秀也准教授による独自技術。惚れ込んだ李さんは、技術の事業化を担うべく2017年に起業しました。

技術経営学修士として大学の技術を社会に役立てるというミッションに燃えた李さんですが、経営は順調には進みませんでした。起業はしたものの、半年たっても先行きが見えず、資金も底を尽き、もうやめようと思ったそうです。その思いを止めたのは、上海で大学職員をしていた大切な人の言葉でした。

「起業前、会社がうまくいったら彼女を日本に呼ぶ、うまくいかなかったら自分が中国に帰る、と話していたんです。困って就活をしていることを打ち明けたら、もう少し会社を続けるよう言われて。直後に大きな資金調達のオファーをいただき、現在に至っています」

1800枚のパネルを擁する山梨県北杜市「丘の公園」の発電施設、柏の葉キャンパス駅前のららぽーとほか、数々の太陽光発電施設で実証実験を続けてきたヒラソル・エナジー。7月には関西電力グループとの資本業務提携が発表されました。稼働から数年が経過し、パネルごとの状況把握の必要性が増す太陽光発電業者は数多く、磨いてきた技術への期待が高まります。工学部12号館にある会社で社長を支えているのは、12人のエンジニア仲間。サステイナブルな太陽光発電社会を目指す夫をすぐそばで応援しているのは、5月に晴れて結ばれた奥様です。

Q & A
東大に留学したきっかけは? 「上海であった留学フェアの東大ブースで技術経営コースを教えられました」
尊敬する中国出身の起業家はいますか? 「北大の大学院を出てソフトブレーンを創業した宋文洲さん」
最近気に入ったアニメや本は? 「Netflixの「アグレッシブ烈子」。Ben Horowitzの『HARD THINGS』」
いまの30代を見て感じることは? 「昔の30代よりもオープンで挑戦しやすい環境にいると思います」
ヒラソル・エナジーの誇るセンサー。パネルへの装着はワンタッチでOK

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