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人体の動きをより手軽に迅速に計測|中村仁彦|オリパラと東大。

掲載日:2020年3月24日

オリンピック・パラリンピックと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
開会が迫る2020年のオリンピック・パラリンピック。56年ぶりに東京で行われるこのビッグイベントにはホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
特殊装置不要の「ビデオモーキャップ」で

人体の動きをより手軽に迅速に計測

中村仁彦
情報理工学系研究科
教授
NAKAMURA Yoshihiko
2015年世界選手権100kg級で金メダル、オリンピックリオ大会の同級では銅メダルを獲得した羽賀龍之介選手が得意技の内股をかけるところ。力が強く入っている筋は赤く表示されています

人間の動きをコンピュータ上で可視化し、解析するモーションキャプチャは、競技力向上に励むトップアスリートたちにとって大きな味方です。この分野で20年以上研究を続けてきた中村仁彦先生は、2018年、技術的なブレークスルーを成し遂げました。

モーキャップという略称でも知られるモーションキャプチャでは、それまで、人の体に40個前後、マーカーと呼ばれる球状のセンサーを取り付け、特殊なカメラを10台以上使って撮影する必要があり、数時間の準備が必要でした。

中村先生らが開発したマーカーなしのモーションキャプチャ技術では、4台ほどのビデオカメラの2次元映像上で、コンピュータが深層学習によって被験者の関節の中心位置を服装の上から推定。そこに人間の骨格の構造を読み込ませ、独自のアルゴリズムを用いて骨格の運動を3次元再構成し、従来のモーションキャプチャに近い精度で動きを再現することに成功したのです。

このビデオモーキャップ(VMocap)の応用は多種多様。例えば、アニメーションでキャラクターの動作を滑らかに表現するためにモーションキャプチャはすでに使われていますが、新技術では複数台のカメラの映像から直接データが取れるため、制作コストが節約できます。また、身体中に働く力と筋の活動の解析でスポーツ中のケガの発見や予防にも有効になる、と中村先生は話します。

例えば、現在、医学部附属病院整形外科の武冨修治講師と共同で進めているのは、サッカー選手などに多い膝十字靭帯の損傷についての調査研究。どのような膝や全身の使い方が関係しているか、もしくは予防につながるかを解明しようとしています。具体的には、600人以上の学生アスリートを対象に、武冨先生らのグループが、筋肉量、関節の可動域や立った時のバランスなどを様々な計測器を使って百数十項目にわたって記録し、中村先生や池上洋介助教らが同じアスリートをビデオモーキャップでも計測します。

「4年間の学生生活で選手がどのように体を作り、動きが変わっていくか、またその中で運悪くけがをすることがあった場合にはそのことも含めて、記録を取っています」

東京オリンピック出場が決まっている卓球の伊藤美誠(みま)選手の、手首を返さず前に伸ばすようにして打つ「みまパンチ」をはじめ、体操の谷川航・翔兄弟、柔道の羽賀龍之介選手、ゴルフの横峯さくら選手など、多くのトップアスリートの動きを分析してきた中村先生。屋内、屋外、服装を問わず、大勢の人間のデータが同時に収集できるビデオモーキャップは、個人のみならずチームスポーツへの応用も期待されます。昨年には、日本女子バレーボール協会の依頼を受け、日本代表チームの試合を撮影。会場に設置したカメラの映像から、試合中のジャンプ時の身体の使い方を比較しようとしています。

「まだ先ですが、将来は、選手が疲れてきた時にどれぐらい疲労がたまっているかをリアルタイムでモニターし、戦略立案の支援ができるようになればと思います」

Jリーグとの共同研究では、柏キャンパスとホームタウンを同じくする柏レイソルのジュニア選手の育成に運動解析を生かそうとしています。将来、カメラをグラウンドに常設して日々のトレーニングの様子をデータ化していくことができれば、よりこの技術が役立つはず。野球など他の競技でも活用が期待されています。

2020東京大会に出場する伊藤美誠選手の動きを中村研究室が解析、中国選手をも翻弄する変則フォアの秘密などを可視化しました
フットサルのようなチーム競技を対象にしたビデオモーキャップ技術はNTTドコモとの共同研究で開発(2020年1月にプレスリリース)

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