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遺伝子検査は金メダルに効くか 才能と努力の間を抉るエピゲノム研究 | 岡田由紀 | オリパラと東大。

掲載日:2020年6月30日

オリンピック・パラリンピックと東大。
~スポーツの祭典にまつわる研究・教育とレガシー
半世紀超の時を経て再び東京で行われるオリンピック・パラリンピックには、ホームを同じくする東京大学も少なからず関わっています。世界のスポーツ祭典における東京大学の貢献を知れば、オリパラのロゴの青はしだいに淡青色に見えてくる!?
遺伝子検査は金メダルに効くか

才能と努力の間を抉るエピゲノム研究

岡田由紀
定量生命科学研究所
准教授
OKADA Yuki
定量研客員教授の池上彰さんが司会を務め、「侍ハードラー」の為末大さん、スポーツ団体改革に尽力してきた境田正樹理事も登壇しました

定量生命科学研究所では、科学の専門家と一般市民がコーヒーを飲みながら気軽に語り合う「サイエンスカフェ」を開催しています。昨年10月に永田町のカフェスペースで実施した第3回のテーマは「ライフサイエンスから見たオリムピック」。ここに登壇したのが、生殖細胞、特に精子の遺伝情報伝達メカニズムを追究する岡田先生です。近年進む検査キットの普及に鑑み、遺伝子検査は優秀なアスリート輩出に有効かという興味深い話題に言及しました。

「持久力が高い、瞬発力に優れる、チャレンジ精神に富むなど、いくつかの傾向を遺伝子検査で確認することはもちろんできます。でも、たとえば瞬発力に優れる遺伝子を持つ人が短距離選手として成功するとは限りません。長年にわたる双子の比較研究などから言えるのは、遺伝要因より環境要因のほうが影響は大きいということです」

とはいえ、陸上でもサッカーでもバスケでも、一流アスリートを親に持つ選手や、身体能力に優れた外国人を親に持つ選手が大活躍しています。やはり遺伝要因は大きいのでは? 「実は、ゲノムについた付箋のような存在のエピゲノムが遺伝情報の発現を左右します。epi-は「上、外」の意。ゲノムは変化しませんが、エピゲノムは環境によって変化します。それぞれの子どもにふさわしい環境を与えることが重要です」

エピゲノムは特にチーム競技や道具を使う競技など、複雑な競技種目においてより影響するのではないか、と岡田先生。さらに、親から子に伝わることを示す研究成果もあるのだとか。ゲノムとエピゲノムの情報を掛け合わせた研究が次世代の八村塁選手や錦織圭選手の登場を促す。そんな感触と期待が広がる永田町の夜でした。

 

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