東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に赤と緑の線で囲った中に書名、帯に「圧倒的支持を得た初版から3年、待望の改訂版」とコメントあり

書籍名

憲法 解釈論の応用と展開 [第2版]

著者名

宍戸 常寿

判型など

384ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2014年7月25日

ISBN コード

978-4-535-52046-2

出版社

日本評論社

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憲法 解釈論の応用と展開 [第二版]

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いまから約20年遡った学部生の当時、4人の教授から憲法の講義を受ける機会に恵まれた。名高い大家から、新進気鋭の若手 (現在は斯界の第一人者) に至るまで、各々の学風を反映した個性的で、知的緊張を感じさせる授業だった。シラバスの記載も簡潔で、中身は蓋を開けてからのお楽しみを、教師と学生が互いに許し合っていた時代でもある。
 
翻って現在の法学部や法科大学院では、とかく着実にカリキュラムをこなすことが求められている。基礎的な必修科目についてはそれもやむを得ないことだし、カバーすべき範囲の半分も終わらないのが講義らしい講義だという旧き良き時代を懐かしむ思いもない。しかしこうした傾向が「コスパのいい」勉強方法へと学生の皆さんを誘導し、結果としてスポイルしていることも確かだろうと思う。
 
その反面、学生を一方的に突き放していればいいというのは、教師側の居直りにも通ずるのではないか。法学部の基本科目は、多くの学生にとっては各種国家試験の科目でもあるから、そのまま放置すれば勢い、あたら若き優秀な頭脳が受験予備校から不正確な内容を流し込まれるだけで終わり、もったいないではないか。
 
そこで、演習書という教材の形式においてオーソドックスでありつつ、それでいてかつて自分がワクワクしたような憲法学の「いま」を読者に伝えられれば、と欲張ってみたのが本書である。だから、斯界随一の芸達者な先生が「芸事のお師匠さんには、こうした親切心が欠かせない。」という書評を本書に下さった時は、本当にうれしかった。
 
本書の元は、月刊誌「法学セミナー」の連載である。本格的な体系書とハウツー本の狭間にあるニッチな連載と心得て、遊び心を忘れず書いていた -- とはいえ、毎月の〆切は苦痛そのものであった -- が、単行本化された後も思いがけず広い読者を得て、版を重ねることになった。
 
憲法も民法や刑法と同じく、最高裁判所の判例が「活ける法」として機能している。それを内在的に整理して読者が「使える」ようになる地点へ導くことで、かえってその先で学説の真価が露わにされるように、意を用いた。そうした工夫を含め、本書が憲法学内部で検討対象となり、引用・批判されるようになったのは、多くの同業者が現在の憲法の授業内容に、また学生の学習態度に、同じ物足りなさを感じていればのことだろう。その意味で、本書は自分が独力で書いたものではなく、時代が書かせた本だとも思う。
 
自分よりも若い研究者が道標として扱ってくれたり、裁判実務等で多少なりとも参照されたりしているのを見ると正直面映ゆい感じもするが、その後はこれと言ったヒットも打てない日々が続き、「本書が著者の最高業績だった」と後世評されるおそれの方が、当面は問題である。その面では著者にとって重荷でもある本書だが、読者のニーズがある限り、引き続き判例・学説の発展に応じて手を加えていきたいと願っている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宍戸 常寿 / 2016)

本の目次

第1章 憲法上の権利・基本的な考え方
1 公共の福祉
2 自由と法律
3 憲法上の保護の範囲と程度
4 憲法上の権利の制約
5 目的・手段審査
6 二重の基準または審査密度

第2章 憲法上の権利・総論
7 憲法上の権利の享有主体性
8 特別の公法上の関係
9 憲法の私人間効力
10 法の下の平等

第3章 憲法上の権利・各論
11 政教分離
12 表現の内容規制・内容中立規則
13 文面上判断と合憲限定解釈
14 財産権の憲法的保障
15 生存権の憲法的構成
16 学問の自由と教育を受ける権利
17 選挙権と選挙運動の自由
18 裁判を受ける権利
第4章 統治機構
19 権力分立と法の支配
20 国民主権と代表制
21 国会
22 内閣
23 「執政」とコントロール
24 地方自治
25 裁判所
26 違憲審査制

第5章 総合演習
27 憲法判断の方法
28「憲法論」を主張する
29 事案の重視と判例の学習
30 答案作成上の注意

補論 出題趣旨・採点実感と憲法の学習

関連情報

著者のページ
http://www.shishido.j.u-tokyo.ac.jp/

書評
安念潤司・法学セミナー679号125頁

UTOKYO VOICES 003 (2018年01月12日掲載)
「なぜ」を忘れない。「自分は正しいのか」を問い続ける。 | 大学院法学政治学研究科 教授 宍戸常寿
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/topics/topics_z0508_00086.html

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