東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙、青と黒の書名

書籍名

プロダクト・イノベーションの経済分析

判型など

248ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2014年2月19日

ISBN コード

978-4-13-040261-3

出版社

東京大学出版会

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プロダクト・イノベーションの経済分析

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世界中のメディアで「イノベーション」という言葉が満ちあふれています。多くの企業が「イノベーション」創出を目標し、各国政府もそうした企業活動を支援すべく施策メニューを拡充しています。念頭に置かれているのは、私たちの生活行動等を大きく変革するような「イノベーション」です。例えば携帯電話。いま誰もが手放せないほど身近になった携帯電話は、その功罪は別にして、私たちの行動様式を大きく変えたことは疑いがないと思います。同様の現象は、自動運転やシェアリング・エコノミーなどといった様々な場面で生じてくることでしょう。
 
他方で、学術的な研究に目を向けると、イノベーション研究の多くは、科学技術の側面に焦点が絞られてきました。その背景には、イノベーションが科学技術のシーズを用いて誕生するとの仮説があったのだと思います。しかし実際に私たちの暮らしに影響を与えているイノベーションは、科学技術の進展を通じて生まれたものだけではありません。今のITベンチャーが提供するサービスは、既存技術の再編集によって生み出されたものも多いのが実情です。
 
イノベーションが私たちの生活行動等を変革することを通じて、どれだけの社会経済的な付加価値をもたらしているのか。この社会科学において重要な問いに答えるためには、従来の科学技術を評価するのとは異なる分析アプローチが求められます。例えば、自動車を取り上げた場合、科学技術の観点からは、車の速度をさらに高めることが技術開発の重要な側面になり得るのかもしれません。しかし渋滞が著しい社会では、車の速度が飛躍的に向上しても私たち消費者にとって余り意味がある技術向上とはいえなそうです。つまり、イノベーションの価値の評価は消費者の視点に立ってなされるべきで、科学技術の観点では必ずしもないのです。
 
本書では、消費者の目線に立ってイノベーションを評価すべく、最近の経済学における研究の進展を取り入れた最先端の手法を用いて、イノベーションの社会経済に与える定量的な評価手法と具体的な応用例、および分析を踏まえた政策的な処方箋を提供しています。応用例として自然エネルギー技術、液晶技術、医薬品の3つの分野を取り上げました。
 
またこうした応用例を分析する微視的アプローチに加えて、全国イノベーション調査という国際比較可能なデータも加味することで、わが国におけるイノベーションの特徴も俯瞰的に明らかにしています。こうした微視的アプローチと俯瞰的アプローチを織りなすことで、市場機能では対応できないイノベーションの特性が明らかにし、それに対応した政策的な必要性と具体的な処方箋も検討しています。経済学における実証分析の最先端を現実に応用しようとしたチャレンジングな著書だと思っています。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 大橋 弘 / 2016)

本の目次

第1章 わが国におけるイノベーションを取り巻く環境
第I部 イノベーション測定 俯瞰的アプローチと微視的アプローチ
第2章 俯瞰的アプローチ -- JNISにみるわが国のイノベーションの現状
第3章 微視的アプローチ -- 構造系推定
第II部 事例研究 微視的アプローチによる定量分析
第4章 事例I: 太陽光発電 -- 公的補助の役割
第5章 事例II: ハイビジョンテレビ -- 補完財の役割
第6章 事例III: スタチン系製剤 -- フォローオン・イノベーションの役割
第III部 イノベーション創出に向けて 市場の役割と政策への含意
第7章 政府の役割と限界 --「4つの視点」から
第8章 イノベーション政策にむけて
補論A 構造系推定
補論B イノベーション事例の選定方法
補論C ヘドニック法
補論D 技術の取得・提供に関する定量分析