東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

左に定規模様の表紙

書籍名

岩波講座 教育 変革への展望 [全7巻]

著者名

佐藤 学、秋田 喜代美、志水 宏吉、 小玉 重夫、 北村 友人

判型など

A5判、上製、全7巻

言語

日本語

発行年月日

2016年4月

ISBN コード

1 教育の再定義: 9784000113915
2 社会のなかの教育: 9784000113922
3 変容する子どもの関係: 9784000113939
4 学びの専門家としての教師: 9784000113946
5 学びとカリキュラム: 9784000113953
6 学校のポリティクス: 9784000113960
7 グローバル時代の市民形成: 9784000113977

出版社

岩波書店

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本講座は、歴史ある「岩波講座 教育」の最新シリーズです。編者の5名は全員が本学教育学研究科の現教員 (小玉、北村) と元教員 (佐藤、秋田、志水) です。また、各巻の随所に、本学教育学研究科の多くの教員が執筆者として参加しています。
 
第1巻では、本講座全体の見取り図を示すために、公共性、教育格差、子どもの学びと育ち、教育改革、グローバル時代という5つの重要テーマが取り上げられ、それぞれにそくした5人の編者による論文を収め、関係の専門領域で活躍する識者との対話が掲載されています。
 
第2巻では、日本社会における不平等、格差問題の顕在化をふまえ、その克服の可能性を探っています。そこで前提とされているのは、人びとと社会の安定した関係が過去のものとなり,国民養成の装置・人材供給のパイプとして機能してきた日本の公教育が人びとの間の生存競争のアリーナとしての様相を強めている点です。そうした様相のただなかで、いかにして別様の教育システムをつくりだすことができるのか、現状を是正する方策と実践が提示されます。
 
第3巻では、少子化の急速な進展や貧困家庭の増加など、子どもを取り巻く環境の変化、メディア環境が子ども同士の関係におよぼす影響などをふまえつつ、幼児期、児童期、思春期、青年期の様々な段階で子どもの発達や生成をどう支えるべきか、教育にできることは何かを考えています。
 
第4巻では、日本の教師の危機の本質を、教師教育の高度化と専門職化が著しく遅れているという点に見いだします。そして、過酷さをます教師の仕事の現状を見つめつつ、「学びの専門家」としての成長に必要な施策を多角的に検討します。
 
第5巻では、インターネットの発達などメディア環境の変容をふまえ、情報が氾濫する時代のなかで、学校教育において、何を、どのように学ぶのかが再検討されます。学習や授業、カリキュラムのあり方はどう変わろうとしているのか、学校での様々な実践を報告し、教育の新たな方法や意義を展望します。
 
第6巻では、従来の福祉国家型教育行政からの変化の渦中にある学校像とそこに内在するポリティクス (政治) について、「地方分権化」「アカウンタビリティ」「NPM (ニューパブリックマネジメント)」「力のある学校」「教育委員会改革」等の切り口から考察がなされます。また、教育現場におけるジェンダー問題や「近代教育の語られ方」など、アクター間のせめぎ合いのポリティクスを多面的に提示します。
 
第7巻では、国民国家を基盤に「国民」の育成を主眼としてきた従来の教育から、グローバル化の急速な進展により大きく変化する教育への転換を見据えつつ、国際的、民主的な社会の実現を担う「市民」をどう育成するかを検討します。特に、そこでの世界各国の教育政策の現状を報告し、日本の教育のゆくえを考えます。
 
本講座に一貫しているのは、現代が危機と可能性の両義性をはらんだ時代であり、それを内側から可能性の方へと転轍していくことを追求し、その先に、教育の再定義を見すえている点です。知のネットワーキングを行う教育学は異質な他者の声をつなぐ媒体、架け橋にもなり得ます。そうした架橋する教育学という点に、本講座がめざす教育の再定義の一つの方向性が示唆されています。

 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 小玉 重夫 / 2021)

本の目次

各巻の構成と執筆者
 
第1巻 『教育の再定義』
執筆者: 小玉重夫、志水宏吉、秋田喜代美、佐藤 学、北村友人
対談ゲスト:湯浅 誠、宮本太郎、湯澤直美、鈴木 寛、酒井啓子
https://www.iwanami.co.jp/book/b243714.html
 
第2巻 『社会のなかの教育』
執筆者:志水宏吉、広田照幸、倉石一郎、中澤 渉、山田哲也、古賀正義、本田由紀、児島 明、髙田一宏、清水睦美
https://www.iwanami.co.jp/book/b243715.html
 
第3巻 『変容する子どもの関係』
執筆者:秋田喜代美、遠藤利彦、榎沢良彦、山野良一、土井隆義、戸田有一、田中千穂子、矢野智司、田中智志、落合俊郎
https://www.iwanami.co.jp/book/b243716.html
 
第4巻 『学びの専門家としての教師』
執筆者:佐藤 学、浅井幸子、キャサリン・C・ルイス、高井良健一、伊藤美奈子、油布佐和子、山﨑準二、牛渡 淳、勝野正章
https://www.iwanami.co.jp/book/b243717.html
 
第5巻 『学びとカリキュラム』
執筆者:秋田喜代美、白水 始、一柳智紀、藤村宣之、石井英真、斎藤兆史、小玉重夫、今井康雄、山内祐平、田熊美保
https://www.iwanami.co.jp/book/b280237.html
 
第6巻 『学校のポリティクス』
執筆者:小玉重夫、藤田英典、青木栄一、大桃敏行、志水宏吉、小国喜弘、菊地栄治、小山静子、木村凉子、村上祐介、広瀬裕子、苅谷剛彦
https://www.iwanami.co.jp/book/b266457.html
 
第7巻 『グローバル時代の市民形成』
執筆者:北村友人、恒吉僚子、丸山英樹、近藤孝弘、江原裕美、山田肖子、池田賢市、小玉亮子、澤野由紀子
https://www.iwanami.co.jp/book/b266351.html

 

関連情報

書評:
西平 直 (京都大学) 評「岩波講座 教育 変革への展望1『教育の再定義』」 (『教育学研究』2017年84巻1号86-88 2017年3月30日)
https://doi.org/10.11555/kyoiku.84.1_86
 
三品陽平 (中部大学) 評「学びの専門家としての教師 岩波講座 教育 変革への展望 第4巻」 (『日本教師教育学会年報』2017年26巻p158 2017年9月29日)
https://doi.org/10.32292/jsste.26.0_158

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