東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に映写機のイラスト

書籍名

DOJIN選書 76 100年後の世界 SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来

著者名

鈴木 貴之

判型など

248ページ、B6判

言語

日本語

発行年月日

2018年5月10日

ISBN コード

9784759816761

出版社

化学同人

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

100年後の世界

英語版ページ指定

英語ページを見る

テクノロジーの発展によって、われわれの生活は日々変化している。100年前にはフィクションでしかなかったものが、いまでは日常の一部となっている。これから100年のあいだに、テクノロジーはどのように進歩し、それによって、われわれの社会にはどのような変化が生じるだろうか。
 
テクノロジーの未来を正確に予測することは難しい。しかし、予測を試みることには、つぎのような意義がある。第1に、新しいテクノロジーは、われわれの社会にこれまでない大きな変化をもたらすかも知れない。第2に、社会に生じる変化のなかには、実際に変化が生じてから対応するのでは手遅れなものがあるかもしれない。第3に、未来のテクノロジーについて考えることによって、現在のテクノロジーや現在の社会のあり方、あるいはわれわれの価値観について、さまざまなことが明らかになる。
 
インターネットやスマートフォンなどの情報テクノロジーを例に考えてみよう。一方で、これらのテクノロジーは、手紙や電話といったこれまでの通信テクノロジーの延長にすぎないようにも見える。しかし他方で、新しい情報テクノロジーには、これまでの情報テクノロジーとは大きく異なる側面もある。たとえば、ウェブページやSNSを利用すれば、誰でも世界に向けて情報を発信することができる。これらのテクノロジーは、社会的弱者などがみずからの声を社会に届けるためには有用だが、その反面、信頼できない情報の氾濫を引き起こし、政治の変質をもたらすというような影響も持ちうる。また、SNSは遠方の友人などとのコミュニケーションにはとても便利だが、その反面、SNSに多くの時間を費やせば、目の前の人間との対面コミュニケーションの時間が失われることになる。
 
これらの点を考慮すれば、新たな情報テクノロジーがわれわれの生活を単純によりよいものにしてくれるかどうかは、けっして明らかなことではない。人工知能やロボット、生命にかんするテクノロジー、人間の能力を高めるテクノロジーなど、新たなテクノロジーの多くにかんしても、事情は同じだろう。
 
テクノロジーの進歩は幸福をもたらすかという問いは、これからの社会のあり方を考えるうえできわめて重要な問いである。そして、この問いに答えるためには、幸福とは何か、われわれにとって大切なものは何かという、より根本的で哲学的な問いに取り組むことが不可欠なのである。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 鈴木 貴之 / 2018)

本の目次

1 子供をつくる
2 よりよい子供をつくる
3 生命を創造する
4 薬で頭をよくする
5 身体を改造する
6 長く生きる
7 考える機械をつくる
8 働く機械をつくる
9 データを分析する
10 人の心を読む
11 薬で幸福になる
12 別の世界をつくる
13 テクノロジーをめぐる論争
 

関連情報

書評:
今週の本棚: 内田 麻理香 (サイエンスライター) 評 (毎日新聞 2018年12月9日)

川端裕人 (作家) 評: 「10年後」のための準備に (産経新聞 | THE SANKEI NEWS 2018年6月3日)
https://www.sankei.com/life/news/180603/lif1806030022-n1.html

 

このページを読んだ人は、こんなページも見ています