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書籍名

和歌文学大系50 物語二百番歌合/風葉和歌集 第50巻

著者名

久保田 淳 (監)、三角 洋一、 高木 和子 (校注)

判型など

500ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年1月10日

ISBN コード

9784625424304

出版社

明治書院

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

物語二百番歌合/風葉和歌集 第50巻

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本書は、明治書院から刊行中の全百冊の古典和歌のシリーズ『和歌文学大系』の第五十巻目である。『物語二百番歌合』および『風葉和歌集』の本文・注釈・作品解説に、作者名一覧・地名一覧・初句索引を付したものである。
 
『物語二百番歌合』は、藤原定家が異なる物語から類似する場面の歌を選んで、番えて編纂した物語歌合である。前百番は、『源氏物語』と『狭衣物語』とを左右に番える。後百番は『源氏物語』と『夜の寝覚』『御津の浜松』『参河にさける』『朝倉』『左も右も袖ぬらす』『心高き』『とりかへばや』『露の宿』『末葉の露』『海人の刈藻』といった十種の物語を番えている。前百番と後百番の成立は同時ではないともされるものの、いずれも十二世紀末から十三世紀初頭の成立と考えられる。歌合の優劣は示されていないが、『源氏物語』はすべて左方に据えられているため、より重んじられていることがうかがえる。藤原定家の物語観を知る上で、また当時享受された物語の形を知るうえで重要な資料である。
 
『風葉和歌集』は、十三世紀後半に成立した物語歌を集めた歌集である。文永八 (一二七一) 年、後嵯峨院皇后であり、後深草院・亀山院の母后であった大宮院姞子の命によって撰集された。本来二〇巻だったと考えられるが一八巻しか現存しない。作り物語の作中和歌一四〇〇首余りを、物語中の作歌状況などを詞書に添えつつ、勅撰集にならって春上・下、夏、秋上・下、冬、神祇、釈教、離別、羇旅、哀傷、賀、恋一~五、雑一~三といった部立に分類して編纂された。約二〇〇の物語の和歌が含まれ、『源氏物語』『うつほ物語』『狭衣物語』など現存する物語の歌が見えるほか、一八〇程度の散逸物語の和歌を含んでいる。古くから『無名草子』とならんで散逸物語の資料として注目されてきたが、近年はそれ自体の構造や配列など、歌集としての編纂意識にも注目されてきている。また『源氏物語』の歌として今日の本文には見られない歌を載せるなど、当時流布していた物語の形態を想像させる点で興味深い。
 
本書は三角洋一氏 (1948年生まれ、東京大学名誉教授、逝去時は大正大学教授) の単独の仕事として始められ、本文の校訂のすべてと、『物語二百番歌合』の注釈を終えられたが、『風葉和歌集』の注釈は道半ばのまま、二〇一六年五月四日に逝去された。そのため、手つかずだった末尾四分の一ほど、雑一以下の注釈と作品解説その他を高木が担当した。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 高木 和子 / 2019)

本の目次

本文
 物語二百番歌合
 風葉和歌集
解説
 物語二百番歌合
 風葉和歌集
作者名一覧
地名一覧
初句索引
 

関連情報

和歌文学大系パンフレット:
https://www.meijishoin.co.jp/files/pamphlet/wakataikei.pdf
 

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