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書籍名

気持ちよく納められる森林環境税とは?

著者名

蔵治 光一郎、 坂井 マスミ、安村 直樹 (編)

判型など

109ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年3月

ISBN コード

9784903321271

出版社

東京大学演習林出版局

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気持ちよく納められる森林環境税とは?

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2018年度の税制改正大綱で、国の制度として、新たに森林環境税が創設されることとなり、2024 年度から住民税に年額1,000 円が上乗せされることになりました。均等割の住民税を納めている方 (約6,200万人) すべてが対象となり、毎年約600億円の税収が想定されています。この課税に先行して、2019 年度から森林環境譲与税として、10分の5が私有の人工林面積、10分の2が林業就業者数、10分の3が人口を基準として算定され、全国の自治体に譲与されます。
 
この森林環境 (譲与) 税、国の制度としては新しい制度ですが、府県の制度としては15年前の2003年に高知県で創設されて以降、すでに全国37府県で導入されている制度でもあります。府県の森林環境税の目的は府県ごとに多少異なってはいますが、森林のためにお金を使うという意味では同じです。
 
国の新しい森林環境税も、府県の既存の森林環境税も、納税者が好むと好まざるとにかかわらず、納めなければならない税金です。納税者としては、納めたお金がアウトプットとして何に使われ、アウトカムとしてどのような効果があったのかを知りたくなります。使い道が適正で、結果として国民や府県民にとって望ましい形の森林が持続的に維持されるのであれば、気持ちよく納めることができるでしょう。
 
これから始まる国の新しい制度によって集められ、使われる税金が、国民にとって有効に使われるためには、まず、すでに15年間、府県が集め、使ってきた森林環境税を振り返り、そこから得られた教訓を活かしていくことが大切です。
 
大学の教育研究のための施設として設置されていると同時に、地域の市町村と共存共栄の関係を築き上げてきた東京大学演習林は、森林環境譲与税の区市町村への譲与が開始される2019年に先立ち、これまでの37府県の森林環境税が「気持ちよく納められる税」であったのかを振り返り、新しい国の森林環境 (譲与) 税の運用に活かしていくための提言とすることを目的として、2018年3月1日に公開シンポジウムを開催いたしました。市民の立場、山の現場の立場、研究者の立場から意見を表明していただき、忌憚のないディスカッションを行い、国の新しい森林環境 (譲与) 税が国民にとって有効に使われるために役立つ情報共有をすることができました。本書は、このシンポジウムの議論をまとめたものです。
 
国の森林環境税は、当初はその8割、やがては9割が区市町村に譲与され、区市町村の考えに基づいて使われていくことになります。森林環境譲与税の使途や効果について、よりいっそうの関心を持っていただくために、本書が役立つことを願っています。
 

(紹介文執筆者: 農学生命科学研究科・農学部 教授 蔵治 光一郎 / 2019)

本の目次

はじめに (蔵治光一郎)
講演
 市民・納税者の立場から (坂井マスミ)
 山の現場で仕事をしている立場から [1] (池谷和美)
 山の現場で仕事をしている立場から [2] (杉本 一)
 研究者の立場から (安村直樹)
パネルディスカッション
参加者アンケートの記録
おわりに (安村直樹)
シンポジウム開催概要
参考資料
 

関連情報

シンポジウム:
蔵治光一郎: シンポジウム「気持ちよく収められる森林環境税とは?」 (東京大学農学部弥生講堂一条ホール 2018年3月1日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/e_z0107_00025.html
 

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