東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に虹色の模様

書籍名

SDGsの基礎

著者名

沖 大幹、 小野田 真二、黒田 かをり、笹谷 秀光、佐藤 真久、吉田 哲郎

判型など

180ページ

言語

日本語

発行年月日

2018年9月3日

ISBN コード

978-4883354412

出版社

事業構想大学院大学出版部

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SDGsの基礎

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持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals; SDGs) は2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ (2030アジェンダ)」に掲げられた17の開発目標です。
 
2015年に目標年を迎えたミレニアム開発目標 (MDGs) が、主に開発途上国の基本的人権にかかわるような貧困や飢餓の撲滅とその達成に不可欠な健康、教育、ジェンダーなど社会課題が中心であったのに対し、SDGsでは気候変動問題解決へ向けた行動や海陸の環境保全と利用といった地球環境問題解決、あるいは格差解消や産業とイノベーション、持続可能な都市や生産と消費なども盛り込まれています。持続可能な開発の3側面は経済と社会と環境だ、と2030アジェンダの冒頭で明言されている通り、先進国でもその達成に向けた努力が必要なターゲットが盛り込まれたためか、SDGsは日本でも今ではよく知られるようになりました。特段社会や国際問題に関心がなくとも、普通に大学で授業を受けていれば何度もSDGsやアジェンダ2030の話を耳にするでしょうし、小中学校でもSDGsの話題が取り上げられたりもしているようです。
 
しかし、なぜ目標は17もあるのでしょうか。もっと抽象的で少ない5つの目標だったら誰でもすぐに覚えられたのに、と思ったことはないでしょうか。また、開発と環境保全を始めとして、17の目標、その下に列挙された169のターゲットの間には相乗効果もあるでしょうが、あちらを立てればこちらが立たず、といった相反する目標やターゲットもあるのではないでしょうか。
 
SDGsは「誰一人取り残さない」というキャッチフレーズでも知られますが、MDGsで多く見られた「安全な水にアクセスできない人口割合を半減する」といったターゲットですら達成は容易ではなかったのに、誰一人取り残さないなんていうことが本当に2030年までにできると思ってSDGsは設定されたのでしょうか。
 
SDGsの達成には、途上国への投資が不可欠だと考えられますが、科学技術などに期待される役割はないのでしょうか。一方で、SDGsさえ達成されれば2030年の世界は薔薇色で、SDGsに掲げられていないけれどより良い持続可能な社会の実現に向けて達成すべき目標はないのでしょうか。
 
あるいは、MDGsの様に世界各国や国際機関が主導して取り組むのではなく、SDGsではなぜ達成に向けた取り組みの主体として民間企業や市民団体に大きな期待を寄せているのでしょうか。また、企業側もなぜそうした期待に応えようとするのでしょうか。
 
本書はこれらの疑問に答えます。特に筆者は2016年秋から国際連合大学の上級副学長を兼任し、SDGsの進捗管理をする会合などの場でアジェンダ2030やSDGsの取りまとめに関わった方々から直接話を伺う機会があって、なかなか公の文書には残されていない見解を記しました。
 
いずれ社会課題、地球規模課題の解決に資する研究や業務を通じて自己実現したいと考えている皆さんにぜひお読みいただければ、と思います。

 

(紹介文執筆者: 未来ビジョン研究センター 教授 沖 大幹 / 2020)

本の目次

巻頭言 持続可能な社会の実現に向けて 変わる企業の役割と可能性 (東 英弥)
 
第1章 持続可能な開発目標と日本政府・環境省の取組 (環境省)
        SDGsの成り立ち
        SDGsの特徴と環境との関わり
        政府の取組
        環境省の取組
 
第2章 企業におけるSDGsの役割 (吉田 哲郎、小野田 真二)
        SDGsの「本業化」の必要性
        グローバル企業によるSDGs実施の動向
        日本企業によるSDGsの取組みの動向
        SDGsを企業内部に根付かせていくための視点
        企業活動を通じてSDGsに
        貢献していくための視点
        「組織」と「企業活動」の両面で戦略的に取組実施を
 
第3章 企業におけるSDGs戦略 (笹谷 秀光)
        事例でSDGsを理解する
        企業経営に、なぜSDGsが必要か
        SDGs導入の準備─CSR、CSV、ESGを整理する
        SDGsの導入と実践─SDGコンパスの活用
        優良事例に学ぶSDGs実践の方向性
 
第4章 マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs (佐藤 真久)
        今日の時代認識─世界に見られる大きな変化
        MDGsとSDGs─異なる社会背景と異なる前提
        リレートーク“SDGsとパートナーシップ”における論点
        マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs
        “ソーシャル・プロジェクト”成功の鍵とは
 
第5章 持続可能な公共調達から考える (黒田 かをり)
        SDGsと「持続可能な消費と生産」
        SCPに関する10年枠組み(10YFP)とSDG12
        政府・自治体の取り組み─持続可能な公共調達(SPP)
        日本の取り組み
 
第6章 2030年のSDGs達成とBeyond SDGsへ向けて (沖 大幹)
        2030年にSDGsは達成されるのか
        Beyond SDGs─「SDGsのその先」を見据える
        なぜ企業はSDGsに取り組むのか
 
付録 SDGsの17の目標と169ターゲットの個別解説
 

関連情報

著者インタビュー:
沖大幹氏インタビュー 「日本企業はSDGsの観客から選手になるべきだ」(国連大学上級副学長) (ニュースイッチ 2018年4月21日)
https://newswitch.jp/p/12699
 
書籍紹介:
SDGsをどう活かすか/『SDGsの基礎』 (BOOKウォッチ 2020年3月24日)
https://www.excite.co.jp/news/article/Jcast_bookwatch_book11228/
 
イベント、セミナー、講義:
<会場参加> Withコロナ時代のSDGs~コロナ期を経たSDGsの世界トレンド~ (SDGsユニバーシティ実行委員会 2020年11月12日)
https://www.shibuya-shibukatsu.jp/join/shibuya-hachikou-univ/voluntary/with.html
 
大学コンソーシアム京都&国連大学SDG企業戦略フォーラム共催「企業が取り組むSDGs」 (2020年10月7日)
https://www.consortium.or.jp/conso/34743
 
オンライン開催【大人も子どもも学べる】SDGsの基礎 講師:沖大幹先生 (一般社団法人アルバ・エデュ 2020年3月9日)
https://albaedu.thebase.in/items/26773198
 
「企業におけるSDGsの実践」 セミナーに国連大・沖副学長登壇 (月間事業構想編集部 2018年8月28日)
https://www.projectdesign.jp/199902/news/005451.php

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