
書籍名
マンションの終活を考える
判型など
244ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2019年6月
ISBN コード
978-4-905366-90-4
出版社
プログレス
出版社URL
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マンションは、鉄筋コンクリート造など耐火性を有する区分所有の集合住宅をいうことが多い。このような、マンションという共同住宅の形式が現れて、すでに50年以上経過している。特に、1970年代以降、マンションの供給は大きく増加し、現時点 (2019年) で、すでに国民の約1割がマンションに居住するに至っている。
堅牢なマンションといえども、経年的には劣化する。マンションが現れた当初は、マンションをどのように「終わらせるか」などは考える必要がなかった。このため、マンションを律する法律である、「建物の区分所有等に関する法律 (区分所有法)」では、立法当時、マンションの終わり方までは考えられていなかった。その後も、マンションの終わり方に関する手続き規定が十分に整備されないで、今に至っている。マンションの「終わり」とは、マンションを取り壊し、場合によっては区分所有関係を解消することである。耐震性能不足のマンションなど一部のマンションには適用可能な制度はあるものの、大半の現存するマンションについては、「終わらせ方」の方法が十分に見いだせないでいるのが現状なのである。ここに、現在のマンションの抱える問題がある。
高経年マンションでは、賃貸化されて、区分所有者と賃借人が混合して住まう例も多い。また、建物が劣化したり、管理状態が劣化しているものもある。いよいよマンションとしての機能を十分に発揮できなくなった時に、どのように終わらせば良いのか。本書は、このような問題意識をもとに、マンションの現場や実務に詳しい方々など13名の著者に執筆いただいた。
総論「マンションの終活を考える」では、マンションの終活の概念整理やどうすべきなのかを記載した。第1部「事例に学ぶマンションの終活」では、管理不全に陥ったマンションや被災マンションの区分所有関係の解消などの事例から何が学べるかを述べている。第2部「マンションの終活の実務」では、マンション終活に関わる実務について、実例も踏まえて述べている。第3部「マンションの終活を円滑に進めるために」では、マンションにかかわる自治体の制度や法的な課題を述べている。第4部「《座談会》マンションの終活を考える」では、マンションの終わりの意味、管理組合の役割、解消の法制度のあり方、マンション後見制度の必要性、残された課題などについて述べている。
「マンションの終活を考える」という本のタイトルのとおり、マンションの終わり方に関する問題理解や解決方策を考えるきっかけになり、終活に関する研究が進み、現実の制度整備につながることで、マンションの一生を適切に管理できるシステムが構築されることを期待している。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 浅見 泰司 / 2020)
本の目次
1.マンションの終活とは
2.マンションの終活への備え
3.本書の構成と概要
4.有効な終活に向けて
第1部 事例に学ぶマンションの終活
管理不全の事例からみた終活のあり方 ……………[小林 秀樹]
1.はじめに
2.管理不全とは――管理の機能不全と建物の不全状態
3.管理不全マンションの実態を知る
4.マンションが管理不全になる理由とは
5.終活の前に――管理不全マンションの再生
6.マンションの「自主的終活」と「強制的終了」
7.マンションの終わり方――自主的終活に向けた新しい解消制度の提案
8.おわりに
マンションの管理不全の現状 ……………[折田 泰宏]
1.マンションの終活とは
2.マンションの管理不全の現況
3.管理不全はなぜ起きるか
4.管理不全にならないために
5.さらにはこんな立法的解決を
6.さいごに
リゾートマンションにおける管理不全の実態 ……………[黒田 美穂]
1.リゾートマンションの課題
2.湯沢地域のリゾートマンションの現状
3.マンションの管理不全化の経緯と終末期問題
被災マンションの解消からみた終活の課題 ……………[小杉 学]
1.はじめに
2.マンションの解消と終活
3.被災マンション法
4.公費解体制度
5.被災マンションの解消実態
6.解消の動機
7.解消制度
8.一般マンションの解消の課題
9.一般マンションの解消のための終活
10.仮終末の設定と解消を確実に実施するための技術
11.おわりに
第2部 マンションの終活の実務
マンション終活プロセスの必要性――建物の終活のプロセプランニング・暫定利用・用途転用― ……………[斎藤 広子]
1.はじめに――マンションは永遠ではない
2.管理不全マンションが本当に存在するのか
3.終わり方を計画する必要性――きれいに終わるには期待値の一致と計画が必要
4.諸外国ではどうしているのか?
5.最後まで快適に利用し綺麗に終焉を迎えるために――マンションの晩年の過ごし方
6.さいごに
終活に至る実務から見た課題 ……………[大木 祐悟]
1.はじめに
2.合意形成上の課題
3.終活のための資金計画上の課題
4.被災したマンションが終活を検討する際の課題
5.おわりに
京都・西京極大門はいつの事例からみた終活のプランニング ……………[田村 誠邦]
1.管理組合の目的と位置づけ
2.高経年マンションで必要とされるマンション管理組合の業務範囲
3.西京極大門はいつの管理組合の取組みとは?
4.西京極大門ハイツに学ぶ管理組合の長期的・経営的視点
方針の明確化によるマンション再生の取組み――稲毛海岸三丁目団地の再生事例 ……………[戸村 達彦]
1.はじめに
2.建替えに向けた取組み
3.寿命長期化に向けた取組み
4.住戸と管理組合
5.コミュニティと管理組合
6.おわりに
第3部 マンションの終活を円滑に進めるために
東京・豊島区のマンション管理推進条例について ……………[宿本 尚吾]
1.はじめに
2.豊島区の概要
3.豊島区マンションの管理推進条例制定の背景
4.豊島区マンション管理推進条例の概要、意義
5.終わりに――マンションの終活に向けて
自治体の役割と条例のあり方 ……………[北村 喜宣]
1.生活環境保全にあたっての国と自治体の役割分担
2.マンションの適正管理に関する行政介入
3.区分所有法とマンション管理適正化法
4.マンション管理適正化条例の意味
5.都道府県条例としてのマンション管理適正化条例
マンションの長寿命化と解消をめぐる法的課題 ……………[鎌野 邦樹]
1.マンションの終活の意義
2.長寿命化に伴う法的課題
3.管理組合は認知症等の高齢者とどう向き合うか
4.結びに代えて――マンションの解消に伴う法的課題等
第4部《座談会》マンションの終活を考える ……………[斎藤 広子][戎 正晴][浅見 泰司]