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白い表紙にグレーと赤の題字

書籍名

不動産テックを考える

著者名

赤木 正幸、 浅見 泰司、 谷山 智彦 (編著)

判型など

260ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年5月

ISBN コード

978-4-905366-88-1

出版社

プログレス

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不動産テックを考える

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不動産テックとは、不動産ビジネスに関連する新技術を活用したサービスの総称である。不動産ビジネスは、対象となる不動産の個別性が高く、様々な分野の知識を必要とするために、素人が全容を理解するのは容易ではない。このため、不動産に関する専門業が数多く成立している。新技術を用いて、一般の消費者に安心でわかりやすく、また、専門家にはより効率的なビジネスを行う環境を整えるのが、不動産テックである。
 
不動産ビジネスには、専門業者から一般の個人まで幅広い主体が関わっている。このため、専門家を対象とするような高度化を進めることが容易ではない。また、不動産は高価で、一般の個人は一生のうちに何度も不動産取引を経験できない、つまり個人が学習しにくい。このため、特に一般の個人を特に手厚く保護しなければならず、そのために、安全な取引が行えるように手続きが複雑になっている。これらの理由から、業界全体としての情報化が遅れている業種であった。ただ、逆に考えれば、今後の不動産テックの発展の余地は大きいとも言える。
 
本書では、不動産テックに関して、第1部の3つの章において総論を述べた後で、不動産テックの技術開発および具体的な不動産テックとして提供されている様々なサービスを解説している。
 
不動産テックの中でも特に発展してきているのが、高度情報提供サービスである。不動産に関わるビッグデータを用いて、機械学習などの技術を駆使して新たな有用なサービスを提供するものである。例えば、消費者により適した情報を提供するマッチング・プラットフォーム・サービスや不動産情報サービス、より安価に行える不動産価値評価サービス、リフォームやリノベーションに関する情報提供やマッチングを行うサービス、様々な空間を時間貸しするシェアリングエコノミーなどがある。本書でもその技術開発や実際のサービスの提供状況などを紹介している。
 
高度業務支援サービスも開発されつつある。不動産管理、情報監視を行う管理業務支援サービス、顧客管理・顧客対応・物件管理・内覧サポートなどを支援する仲介業務支援サービス、顧客行動を分析しマーケティングに生かす業務分析サービスなどがある。本書でも、これらの実例を紹介している。
 
新しい情報技術を用いて金融的なサービスを行う高度金融サービスもある。インターネット上で投資家から投資資金を集めるクラウドファンディング、住宅ローンのシミュレーションや実際の契約に至るサービスを行うローン・保証サービスなどがある。他にも、仮想現実 (VR) や拡張現実 (AR) 技術を用いた景観シミュレーションやIoT技術を用いた防犯・施錠・見守りなどのサービスもある。
 
本書では、不動産テックの現状紹介のみならず、課題や今後の展望も述べられており、今後、不動産テック分野での研究開発、実務展開の参考に供することができれば幸いである。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 浅見 泰司 / 2019)

本の目次

第1部  不動産テックの発展
  不動産テックを考える (浅見泰司)
  不動産テックとは何か (谷山智彦)
  カオスマップから読み解く不動産テックの現在と将来 (赤木正幸)
第2部  不動産テックの理論と技術
  深層学習を用いた類似間取り検索 (山崎俊彦)
  不動産分野へのデータ解析と人工知能技術の応用 (和泉 潔,諏訪博彦,大西立顕,坂地泰紀,松島裕康)
  テクノロジーによる都市計画の歪みの顕在化と変革の兆し (北崎朋希)
  不動産取引におけるクラウドファンディング活用 (鬼頭武嗣)
第3部  不動産テックのサービス展開
  不動産テックによる不動産マーケティングの転換 (一村明博)
  AI価値分析による不動産取引拡大の可能性 (巻口成憲)
  不動産市場におけるシェアリングエコノミーの影響 (重松大輔)
  国内外の事例から見る不動産テックの必要性 (芳賀一生)
  不動産オーナーと管理会社をつなぐ「OwnerBox」から見る不動産テック業界の未来 (武井浩三)
  不動産テックで変わりつつある不動産賃貸業務 (伊藤嘉盛)
  不動産・建築テックにおけるxRの現状と未来 (沼倉正吾)
  登記ビッグデータから見える不動産テックの今後 (木村幹夫)
 

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