Urban Systems Design Creating Sustainable Smart Cities in the Internet of Things Era
近年、都市計画・都市デザイン分野では、「スマートシティ」や「Society 5.0」の議論が活発化しています。従来の都市デザインの方法と新しく登場したビッグデータ、AI、IoTを活用したデータ解析・シミュレーションの方法を融合させ、様々な突発的なリスクや進行性のストレスに適応する能力を備えた都市をつくり、マネジメントしていくことが課題です。
本書は、この課題に取り組む世界各国の研究者が集まって議論した結果を「都市システム・デザイン (Urban Systems Design)」という概念の下でまとめたもので、次の3つの特徴があります。第1に、ヨーロッパ、北アメリカ、ラテン・アメリカ、アジア、オーストラリア、アフリカの都市の事例を通じて、スマート化の社会的・環境的・経済的側面を検討していること。第2に、日本のCASBEE、英国のBREEAM、米国のLEEDといった既存の持続性認証制度とスマート技術の関係を分析していること。第3に、HEMS、BEMS、環境発電、電気自動車、スマート・グリッド等のエネルギー・マネジメントに関わる既存の技術を評価していること。
私自身は、主に国立環境研究所・米国ジョージア工科大学・東京大学の研究者で構成される10名程度の研究グループによる共同研究や共同演習を通じて「都市システム・デザイン」の概念の整理や部分的な試行に取り組んできました。日本語のまとまった刊行物としては、国立環境研究所の研究情報誌「環境儀 No.70: 和風スマートシティづくりを目指して」の記事「IoT・ビッグデータ時代の都市システム・デザイン Summary」があります。「建築物・道路単位のCO2マッピング」や「航空機観測・タワー観測・ツイッター情報を活用した熱波モニタリング」をはじめとするIoTやビッグデータを用いた解析・シミュレーションの手法を研究開発してきた研究者とともに、大きな市街地再開発やオープンスペース整備がどのように都市のCO2排出量に影響を与えるのか、建物や都市基盤、水と緑で構成される都市の物的環境と熱波リスクにはどのような関係があるのか等を分析し、都市計画・都市デザイン分野における気候変動緩和策・適応策を検討しているところです。
こうした研究開発は、2020年以降の気候変動に関する国際的枠組みであるパリ協定に対応していくに当たり、重要な役割を果たします。2019年6月11日に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」によると、「地域・くらし」に分野では、2050年までに「カーボンニュートラルでレジリエントで快適な地域とくらし」を実現し、「地域循環共生圏」を創造することが目標とされています。それを実現し得る手法の1つが本書で提示している「都市システム・デザイン」なのです。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 村山 顕人 / 2020)
本の目次
Perry P.J. Yang and Yoshiki Yamagata
2. Urban systems and the role of big data
Yoshiki Yamagata, Perry P.J. Yang, Soowon Chang, Michael B. Tobey, Robert B. Binder, Pieter J. Fourie, Peraphan Jittrapirom, Takuro Kobashi, Takahiro Yoshida and Jelena Aleksejeva
3. Modeling and design of smart buildings
Soowon Chang, Perry P.J. Yang, Yoshiki Yamagata and Michael B. Tobey
4. Smart urban buildings of communities
Soowon Chang, Michael B. Tobey, Nirvik Saha, Yoshiki Yamagata and Perry P.J. Yang
5. Integrating mobility in urban design
Robert B. Binder, Michael B. Tobey, Peraphan Jittrapirom, Paul Steidl, Yoshiki Yamagata and Perry P.J. Yang
6. Modeling and design of smart mobility systems
Pieter J. Fourie, Peraphan Jittrapirom, Robert B. Binder, Michael B. Tobey, Sergio Ordonez Medina, Tanvi Maheshwari and Yoshiki Yamagata
7. Spatial modeling and design of smart communities
Takahiro Yoshida, Yoshiki Yamagata, Soowon Chang, Vincent De Gooyert, Hajime Seya, Daisuke Murakami, Peraphan Jittrapirom and Gerasimos Voulgaris
8. Case studies toward smart communities
Yoshiki Yamagata, Takahiro Yoshida, Soowon Chang, Peraphan Jittrapirom, Sylvia Coleman, John Robinson, Roger Cremades and Dirk Neumann
9. Smart city and ICT infrastructure with vehicle to X applications toward urban decarbonization 000
Takuro Kobashi, Yoshiki Yamagata, Takahiro Yoshida, Soowon Chang, Yasunori Mochizuki, Amanda Ahl and Jelena Aleksejeva
10. IoT-based monitoring for smart community
Hiroaki Nishi and Yuichi Nakamura
11. Urban sustainability assessment tools: toward integrating smart city indicators 000
Ayyoob Sharifi, Shun Kawakubo and Anastasia Milovidova
12. Measuring quality of walkable urban environment through experiential modeling
Yoshiki Yamagata, Takahiro Yoshida, Perry P.J. Yang, Helen Chen, Daisuke Murakami and Leena Ilmola
13. Understanding the potentials of green bonds and green certification schemes for the development of future smart cities
Masachika Suzuki, Mari Yoshitaka, Anastasia Milovidova, Huiying Cai
and Yoshiki Yamagata
14. Institutional instruments for urban systems design - from the planner’s perspective
Akito Murayama
関連情報
和風スマートシティづくりを目指して: IoT・ビッグデータ時代の都市システム・デザイン Summary ((国立環境研究所『環境儀 No.7』 2018年9月28日)
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/70/10-11.html
書籍紹介:
40 Best New Smart Cities Books To Read In 2021 (Bookauthority 2021年)
https://bookauthority.org/books/new-smart-cities-books