東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

赤と白の表紙

書籍名

東大塾 IoT講義

著者名

喜連川 優、 野城 智也 (編)

判型など

216ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2020年2月21日

ISBN コード

978-4-13-063817-3

出版社

東京大学出版会

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東大塾 IoT講義

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2018年秋に、社会人を対象に、グレーター東大塾「すまうIoT – 「コトのインターネット」へと進化させる技術群」が開講されました。IoTに関連した最先端の研究に取り組んでいる東大教員が主な講師陣です。この本は、その講義内容を所収したもので、染谷隆夫、越塚登、森川博之、稲見昌彦、年吉洋、という錚々たる顔ぶれの教授陣の講義録が掲載されています。同塾においては、企業ですまいまわりでIoTの実装に取り組んでいる、高田巖氏、武田浩治氏、また産学共同ですまいのIoT基盤開発に取り組む馬場博幸氏にも講義をお願いし、その講義録も掲載されています。このグレーター東大塾の企画を担当した喜連川優、野城智也両教授は編者として名を連ねています。
 
いま、IoT (Internet of Things) という言葉が溢れ、buzzwordになっている感があります。この本で紹介されている、IoTにかかわる教授陣の先端的な研究開発や、社会実装の先陣をきっている起業家の取組は、IoTの実相、拡がりを俯瞰し、その奥深さを実感するとともに、その本質を理解する一助となるでありましょう。
 
そもそもIoTという概念は、1987年に、本学名誉教授である坂村健先生が提唱した、Highly Functional Distributed Systemという名称で、その基本的な構想を世界にさきがけて発表・提唱したことに端を発しています。情報ネットワーク能力の増大、デバイスの飛躍的発展、そしてデータ解析能力の向上などIoTを支える技術の開発、普及が急速に進んだ結果、30年経って坂村先生の構想が現実化しているといってよいと思います。
 
このように、技術者が構想したこと、開発した技術が社会を塗り替えるまでには、そのめざすところが壮大であればあるほど長い時日を要します。この本で紹介されている教授陣の技術開発は日進月歩で、2年目の講義時点と比べ講師陣の研究開発はさらに前に進んでいっています。それだけに、単なる技術のアンソロジーとして見てしまうと、あっという間にこの本は色あせてしまうおそれがあります。しかしながら、幸いにして、この本のなかで教授陣はご自身の物事の考え方――どのように課題をとらえ、未来を構想し、どのようなアプローチで解こうとしているのか――を直接間接に示して下さっています。この本の執筆陣による「すまう」ことや、「コトのインターネット」にかかわる洞察や展望には普遍性があるといってよいでしょう。その洞察・展望には、坂村先生の構想がそうであったように、遠い将来に芽ぶく種が吹く含まれています。
 
エンジニアリングやその社会や日常生活との関わりについて関心のある方は、技術者の発想を実感する素材として、また、技術と生活と社会のかかわりを考える素材として、この本を手にとってみては如何でしょうか。
 

(紹介文執筆者: 生産技術研究所 教授 喜連川 優、野城 智也 / 2020)

本の目次

まえがき――「コトのインターネット」としての「すまうIoT」|喜連川優・野城智也
 
I IoTにすまう
第1講 すまいからの未来提案――その実例と展望・課題|高田 巖
第2講 ネット回線事業からインテリジェントホームへ|武田浩治
 
II あまねく進むデジタルトランスフォーメーション
第3講 ユビキタスコンピューティングからIoTへ|越塚 登
第4講 デジタルの威力――事業・社会・地方を変える|森川博之
第5講 何でも安心してつながるようになるためには|馬場博幸
 
III イノベーションを推し進める技術たち
第6講 ウェアラブルエレクトロニクス――IoTの一部としての人体|染谷隆夫
第7講 「自分を見るメガネ」の可能性|稲見昌彦
第8講 MEMSエナジーハーベスターによるIoTへの電力供給|年吉 洋
 
あとがき――IoT四原則|野城智也

関連情報

関連イベント:
「すまうIoT」を如何に実現するか?―来たれベンチャーの騎士たち―QWSアカデミア (東京大学) (CROSS PARK 2020年1月29日)
https://shibuya-qws.com/event/200129iot
 
インタビュー:
東京大学・越塚教授に聞く「モノのインターネット化」の歴史――サプライチェーンとともに成長したIoT (gemba|Panasonic CONNECT 2019年5月10日)
https://connect.panasonic.com/jp-ja/gemba/article/00190397
 
世界に広がるIoT戦争で、日本が生き残るために必要なもの――野城智也東大教授から現場への提言 (gemba|Panasonic CONNECT 2019年3月12日)
https://connect.panasonic.com/jp-ja/gemba/article/00185967
 
ビッグデータ、IoT、AIは一体で進化――「情報爆発」がイノベーションを生む 国立情報学研究所所長 東京大学教授 喜連川優氏 (テレコミュニケーション 2016年9月号)
https://www.telecomi.biz/interview/bn2016_09_1.html
 
関連記事:
身体の未来 拡張現実感から人間拡張工学へ 技研公開2019 基調講演1 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 稲見昌彦氏 (『NHK技研R&D』 2019年8月号)
https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/176/3.html
 
IoTの光と影 第3回 サイロ化と相互接続「IoTを連動させ、ひとまとまりの価値を実現するハブとは?」東京大学生産技術研究所特任研究員 馬場博幸 (『電気新聞』 2018年9月3日)
https://www.denkishimbun.com/sp/34745
 
人体とエレクトロニクスの架け橋、“電子皮膚”が可能性を拓く 染谷隆夫教授 [後編] (未来コトハジメ 2017年10月10日)
https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/wellness/h_vol17/
 
IoTは難しくない、失敗恐れずスモールスタートを 東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏 (日経BizGate 2017年4月19日)
https://bizgate.nikkei.com/article/DGXMZO2843737022032018000000

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