東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

青い表紙

書籍名

未来探究2050 東大30人の知性が読み解く世界

判型など

356ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2021年3月24日

ISBN コード

978-4-532-35878-5

出版社

日経BP 日本経済新聞出版

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

未来探究2050

英語版ページ指定

英語ページを見る

科学技術が加速度的に進歩し、国際社会が激動する21世紀において、未来への関心はますます高まってきています。目まぐるしく進歩する情報通信技術やバイオテクノロジーの進展を見たり、2020年から始まった世界的な新型コロナウイルス禍で激動している国際社会を振り返っても、今までの経験や出来事から単線的に未来を展望するという考え方は役に立たなくなってきているといえるでしょう。複雑で重層的な未来について深く考えることの必要性が増してきているといえます。
 
未来に向かって確実に役割が増えると思われるのが知識です。現代社会は、知識により新たな価値を作り出していく知識集約型社会の側面がますます強くなっており、未来社会を展望するためには、これから産み出されていくであろう知識について考える必要があります。本書は「知の未来」を議論することで、知識の世紀ともいわれる21世紀における未来社会について考えるきっかけを提供することを目的としています。
 
本書は特定の未来像を描くという通常のアプローチと異なり、多様な学問分野の知の蓄積をカバーすることで30の知の未来、学問の未来を描き出します。さらに、よく取り上げられる科学技術やイノベーションに限らず、人文学・社会科学まで含めて広範に扱います。往々にして知識の進展は科学技術イノベーションを前提に語られますが、実際には政治的な出来事や経済発展、社会の価値観の変化などが相互に作用してダイナミックに変化していきます。基礎科学の進展も影響を与えるかもしれません。知の未来を考えるには、より広く学問を捉え、自然科学だけではなく人文学・社会科学についても扱う必要性があるのです。知の未来を玩具のブロックのピースのように様々に組み合わせることで、多様な未来の姿が見えてきます。
 
本書は3部構成になっています。第1部では未来研究futures studiesを中心に、未来に関連する学問について紹介していきます。また後半では本書のアプローチについて解説します。第2部は本書のメインです。幅広い学問領域をカバーするために東京大学の様々な分野の30人の研究者にインタビューし、各学問分野の知の軌跡とそこから描き出される未来像について語っていただきました。経済学、脳科学、ウイルス学、データ工学、ロボット研究、数学、素粒子物理学から、日本史、西洋美術史、仏教学まで異なる分野の専門家30人に共通の質問を投げかけて答えていただくという、ユニークな企画となっています。その結果として見えてきたのは、全く無関係であるように見えていた分野同士でも、意外にも共通する面があったということです。そして、第3部は第2部のインタビューをまとめ、五神真・東京大学総長と藤原帰一・未来ビジョン研究センター長 (肩書は出版時のもの) の対談で締めくくられています。

 

(紹介文執筆者: 未来ビジョン研究センター 准教授 杉山 昌広 / 2021)

本の目次

第1部
なぜ未来ビジョン学か――本書のアプローチ
 
第2部
東大教授30人による未来像
【脳神経科学】まだ見ぬ「脳のフロンティア」を開拓したい――池谷裕二
【神経科学】幼少期に開閉する「脳の窓」を解明――ヘンシュ貴雄
【再生医学】私たちの身体の成り立ちを観て、識って、操る――伊藤 暢
【生物化学】ロドプシンが拓くタンパク質科学の地平――井上圭一
【放射線生物学】生命はフクザツケイ メダカが教えてくれた見方――尾田正二
【ウイルス学】ウイルス感染症を制圧することは可能か――河岡義裕
【公衆衛生学】「健康づくり」は人と社会の接点 科学的アプローチ――橋本英樹
【リスク研究】リスクと未来の社会――ヘン・イークァン
【中国経済】変わり続ける「中国」と向き合い、実像を発信――伊藤亜聖
【開発経済学】途上国の貧困問題が全て無くなる、その日まで――高崎善人
【農業経済学】食欲が満たされた人類、食は「倫理的消費」へ――中嶋康博
【環境倫理学】人新世の食のカタチ・生きもののカタチ――福永真弓
【日本史 】日本の中世史から見えてくる人間の歴史の行方――本郷和人
【美術史 】日本人の目と感性で捉える西洋近代美術――三浦 篤
【仏教学 】温故知新、未来社会で蘇る仏教的思考――馬場紀寿
【データ工学】社会をデータ駆動に変えるデータ工学――喜連川優
【情報ネットワーク】「人を幸せにするユビキタス」とは何か――川原圭博
【憲法学 】情報通信が変えゆく社会の課題を腑分けする――宍戸常寿
【ジャーナリズム研究】ジャーナリズムのあり方の研究を通じて社会貢献――林 香里
【ロボット研究】ロボットの概念を変えるソフトロボティクス――新山龍馬
【素粒子物理学実験】素粒子実験で宇宙の成り立ちを解明――早戸良成
【火山物理学】地球のダイナミクスの解明と、火山との共生――市原美恵
【気象学 】地球規模の雨や雲のメカニズムを解明――高薮 縁
【計算化学】見えない電子や原子の世界を可視化――ローツステット・エリック
【素粒子物理学】超弦理論で世界の基本法則を解き明かす――大栗博司
【可積分系】今までの数学では解けない世界を切拓く――ウィロックス・ラルフ
【教育社会学】望ましい姿と現実の境目に立って警鐘を鳴らす――本田由紀
【社会学 】本当に社会的格差は減少しているのか――白波瀬佐和子
【当事者研究】誰もがそれぞれの困難を抱えた「当事者」――熊谷晋一郎
【国際精神保健・人権政策】一人ひとりの「違い」こそ、人間と社会の価値――井筒 節
 
第3部 未来像の整理
1 30の未来像から見えること
2 【対談】五神 真・東大総長×藤原帰一・東大IFI センター長 (肩書は出版時のもの)

 

関連情報

講演・セミナー:
New! 『未来探究2050』× IFIセミナー「知の未来を探究する」第3回:仏教学と物理学から「世界の基本法則」を探究する (東京大学未来ビジョン研究センター 2022年2月22日)
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/11904/
 
『未来探究2050』× IFIセミナー「知の未来を探究する」第2回:人がくらす地球の未来 (東京大学未来ビジョン研究センター 2021年11月19日)
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/11422/
 
『未来探究2050』× IFIセミナー「知の未来を探究する」第1回:美術史と環境倫理学から「人間らしさ」を問う (東京大学未来ビジョン研究センター 2021年9月14日)
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/11005/
 
書評:
「未来探求2050」東大30人の知性から得られる未来社会の展望 (NEWS SALT 2021年7月5日)
https://www.newssalt.com/33867
 
書籍紹介:
2022年に読みたい書籍今を知り未来を考える (NIKKEI 日経BP)
https://www.nikkei.co.jp/b2b/useful/casestudy_078.html
 
2021年最も多く閲覧された要約Best10冊 (TOPPOINT 2021年12月15日)
https://www.toppoint.jp/library/pickup/feature-best10-2021
 

このページを読んだ人は、こんなページも見ています