
書籍名
世界の岐路をよみとく基礎概念 比較政治学と国際政治学への誘い
判型など
358ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2024年6月20日
ISBN コード
9784000616447
出版社
岩波書店
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
『世界の岐路をよみとく基礎概念』は、現代の国内外の政治問題に対する理解を深めるために編まれました。本書は、比較政治学と国際政治学という2つの学問分野を基礎に、民主主義の後退、暴力の発生、国際秩序の変動、核軍縮の停滞など重要なテーマを章毎に取り上げています。政治学を専門的に学ぶ大学生や大学院生を主な読者として想定し、学習や研究のさらなる深化をサポートする一冊です。政治学の入門・初級レベルを学習した後、中級レベル以上を目指す場合に相応しいと考えています。
本書は、各章で政治学の重要な概念をひとつずつ取り上げ、その定義や歴史的背景、学説の展開を整理しています。さらに、筆者が注目する最新の議論や、今後の政治に対する展望も提示されており、読者は現代の政治問題を理論的に深く考察するための材料を得ることができます。また、各章の最後には関連文献の案内が設けられており、読者がさらに研究を進めるための日本語や英語の参考文献が紹介されています。
このように書くと平凡な教科書のような書き方と思えるかも知れませんが、実際には各章、著者の個性が遺憾なく発揮されており、最新の議論を取り上げる箇所などでは政治学者たちが現在進行形で取り組んでいるトピックを、著者たちが評釈し、さらに自分の意見を述べています。
内容は4部構成となっており、読者の関心に応じて自由に各章を読み進めることができます。第1部では、国民国家と暴力、ナショナリズムやエスニシティなど、比較政治学と国際政治学を架橋する大きなテーマを扱い、現代国家の成り立ちとその矛盾を探ります。第2部では、民主主義や権威主義、選挙や経済成長など、国内政治における制度や政治体制を深く分析し、権威主義体制が抱える課題や民主主義の危機に関する議論を展開しています。第3部では、国際秩序や国際紛争、同盟や軍縮といったテーマを扱い、国際政治における権力関係や協調の難しさについての理解を深めます。第4部では、政治学における量的分析と質的分析の両方の手法を紹介し、データ分析や伝統的な質的研究の有効性と課題を論じています。
最後に、本書は東京大学法学部で長年教鞭を執られた藤原帰一先生 (本学名誉教授) の退職を記念して、大学院法学政治学研究科において藤原先生の指導で学んだ12名の研究者によって執筆されました。博士号まで東大で取得した者、海外で博士号を取得した者など様々ですが、本郷の同じ研究室で学んだ卒業生が集結したプロジェクトでした。政治学の範疇とはいえ、これほど多様なテーマの研究が一つの研究室で、指導力溢れる一人の教員のもとで進められていたことも、あえて記しておきたいと思います。
(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 准教授 佐橋 亮 / 2024)
本の目次
第I部 国 家
第1章 国民国家と暴力……………中溝和弥
はじめに
第1節 国民国家と暴力――概念と問題群
第2節 三つの問題群――近代国家形成・国民形成・対外戦争
第3節 なぜ人を殺すのか
おわりに
第2章 ナショナリズムとエスニシティ……………林 泉忠
はじめに
第1節 ナショナリズム・エスニシティとは何か
第2節 ナショナリズム諸議論の展開
第3節 「辺境東アジア」の事例検証
おわりに
第II部 政治体制
第3章 民主主義……………粕谷祐子
はじめに
第1節 民主主義の捉え方
第2節 民主主義体制の測り方
第3節 民主主義の数え方
おわりに
第4章 権威主義……………今村祥子
はじめに
第1節 権威主義の概念
第2節 議論の展開
第3節 類型化と連続性の発見
おわりに
第5章 選 挙……………松本朋子
はじめに
第1節 選挙に何が期待できるのか
第2節 なぜ有権者の選好に沿わない選挙結果となるのか
第3節 選挙の代表性を高めるために
おわりに
第6章 政治体制と経済成長……………中村正志
はじめに
第1節 経済成長に有利なのは民主主義か権威主義か
第2節 「中所得国の罠」の政治経済学
第3節 マレーシアとタイのケーススタディ
おわりに
第III部 国際社会
第7章 国際秩序……………佐橋 亮
はじめに
第1節 国際秩序をめぐる議論
第2節 第二次世界大戦後の国際秩序
第3節 冷戦終結とグローバリゼーション
第4節 現代の世界政治
おわりに――世界政治の展望と構想
第8章 国際紛争……………片桐 梓
はじめに
第1節 基本概念の整理
第2節 国際紛争をめぐる学説の展開
第3節 国際紛争学の残された課題
おわりに
第9章 同 盟……………玉置敦彦
はじめに――同盟という難問
第1節 同盟とは何か?――概念の定義
第2節 非対称同盟という難問
第3節 同盟政治論の現在――事例と史料に基づく理論的発展の模索
おわりに
第10章 核軍縮……………向 和歌奈
はじめに
第1節 軍縮の概念と考え方の変容
第2節 核軍縮をめぐる論点の整理
第3節 核軍縮から廃絶へ――前進の可能性と限界
おわりに
第IV部 方 法
第11章 ベイズ統計モデルを用いた政治データ分析……………白糸裕輝
はじめに
第1節 ベイズ統計モデル入門――多数の世論調査を集約して選挙結果を予測する
第2節 ベイズ測定モデル――多数の観察値から概念を抽出する
第12章 政治学における質的分析……………向山直佑
はじめに
第1節 「自己防衛」としての質的方法論
第2節 方法論者の独り歩き
第3節 質的研究の強み
おわりに
あとがき
索 引
編者・執筆者紹介
関連情報
編者からの紹介 (東洋文化研究所ホームページ)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/pub2409_sahashi.html
書籍紹介:
なぜ戦争は起こるのか?今さら聞けない現代国際政治の基礎とは【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】 (テレ東Biz | YouTube 2024年10月18日)
https://www.youtube.com/watch?v=kyf30bYMXXo
書評:
新刊 (『綴葉』No. 432 pp.11 2024年11月)
https://www.s-coop.net/about_seikyo/public_relations/images/teiyo-432.pdf