
書籍名
園庭を豊かな育ちの場に 質向上のためのヒントと事例
判型など
128ページ
言語
日本語
発行年月日
2019年8月
ISBN コード
978-4-564-60936-7
出版社
ひかりのくに
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
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子どもの戸外体験は現在減少し、メデイアへと没入する経験が増加している。そうした状況下において、乳幼児期における園での戸外体験は生涯における原風景ともなりえる。しかしながら園庭が狭小である園や、まったくない保育園もある。小学校以上の校庭が運動場としての機能が重視されているのに対し、園庭は子どもの経験と発達からみて多様な機能を有する戸外空間である。しかしながらそれが実際に園間でどのような相違を持ち、どのような機能を果たしているのか、どのような改善の方法があるのかはこれまで学術的に検討されてきていなかった。また、建築設計や造園の観点から園の遊び場のあり方のハードウェアについては議論はなされてきたが、実際にそれを使用する子どもや保育者等の観点からの研究はなかった。そこで本書は、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター (Cedep) 園庭プロジェクトとして、2015年から2019年までに全国1740園への質問紙調査や実際の訪問事例調査によって、どのようにして園庭の向上は可能かという問いを探究しその実際を、実践者にもわかりやすくまとめた著作である。そこに3つの独自性がある。
第1には、保育の質の向上において園庭は極めて重要な意味を持つと考え、「園庭の質」という独自の視点を示し具体的に、広くて立派な園庭の園だけでなく、どの園でも取り組める様々な工夫を、ソフトレベルで保育学研究として示したこと、第2には、歴史上初めての全国の園庭調査のエビデンスに基づき、またさまざまな事例や国際的な園庭をめぐるガイドラインと共に学術的に示したこと、そして第3には、園庭のない園や狭い園等のためにも、園がある地域の資源を「拡張された園庭」として活用するという概念を出すことで、園を中心としたコミュニテイ形成と空間のあり方を提示したことである。この独自性が、こども環境学会で高く評価され、2019年こども環境学会 論文・著作賞受賞を受賞している。子どもを取り巻く環境をいかに生態学的に可能な形で探究し、社会実装とつなぐのか、その一つの試みの著作である。
全4章から構成され、第1章は理論編であるが、第2、第3章には質をめぐる6つの視点から事例やデータが紹介され、そして第4章ではさらに園庭の向上のための研修のあり方を論じている。園庭にどれほどのバリエーションがあり、どのような理論的視座があるのかを、実際に掲載された写真等も見て楽しみつつ、感じ取ってもらいたい。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 秋田 喜代美 / 2020)
本の目次
(園庭の質向上とかけがえのなさ (エクセレンス) をめざすデザイン原則、「拡張された園庭」としての地域 ほか)
第2章 様々な視点からみる園庭の質
(構造の質―園庭の物理的環境を考えてみましょう、志向性の質―園庭での保育で、何を大切にしていますか? ほか)
第3章 事例で考える園庭の質
(改修を試みるということについて、3歳未満児の園庭を考える ほか)
第4章 園庭について研修をしたい方へ
このような研修やワークショップ、研究支援を実施して)
関連情報
https://ecec-outdoor-and-play.jimdosite.com/
http://www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp/projects_ongoing/entei/
受賞:
2019年度 (第15回) こども環境学会 論文・著作賞受賞 (公益社団法人こども環境学会 2020年4月5日)
http://www.children-env.org/activity/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%B3%9E/