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書籍名

京都の災害をめぐる

著者名

大邑 潤三 (著)、 加納 靖之 (著)、 橋本 学 (監修)

判型など

128ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2019年9月30日

ISBN コード

9784909782038

出版社

小さ子社

出版社URL

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京都の災害をめぐる

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――さあ、京都の災害探検に出かけよう
――これから起きるかもしれない災害へ、備えの「スイッチ」を入れるために
――歴史の中に埋もれた災害の事実を、地図と写真とともに解説する、今までにない京都案内
本書の帯の文言である。どれも執筆の意図を凝縮したものになっている。紹介はこれらに尽きるが、もう少し解説を加えてみたい。
 
観光都市である京都に関しては、多数のガイドブックが出版されている。小説やエッセイ、学術書などのテーマにもなり、書店にも「京都本」のコーナーをよくみかける。このようなコーナーで書籍を手にとりながら、自分の研究分野の本をこの棚に置くことはできないか、などとぼんやり考えていた。ふだんの生活ではあまり意識しないかもしれないが、京都では繰り返し災害が発生している。そのことを観光ガイドブック風の体裁で紹介するような本を作りたい。また、その本をベースにしたツアーを企画したい、学校教育にも活用できる本にしたい、という思いもあった。それが出版社との幸運な出会いもあり、実現したのである。
 
ガイドブックであれば、見所、食べるところ、泊まるところなどと分類され色やアイコンで区別して地図上にしめされ、それぞれの説明や写真が掲載されている。それにならって「地震」「風水害」「火災」「その他災害」「防災・学習」に分類して色分けしている。もちろん、文章での説明だけでなく、写真や関連する資料を項目ごとに掲載している。ガイドブック風の作りがうまくいっているか、ぜひ手にとって確かめていただきたい。
 
本書では、1冊に多数の地点を紹介するためそれぞれの説明はごく簡単なものになっている。読者がさらに深く調べることができるように、参考とした研究成果や史料、データの一覧をつけた。また出版社のWebサイトにはこれらのリンク集も掲載している。さらに、紹介した各地点の名称や緯度経度、そして写真と説明文の一部をオープンデータとして公開しており、出典を明示すれば誰でも自由に使っていただける。また、各地点について紹介する動画も公開している。興味のある方は、出版社のWebサイトおよびGithubやYouTubeを参照していただきたい。
 
本書に掲載した地図は、過去に災害が発生した地点の地図ともいえるが、ある地域に印がついていないからといって安心しないでいただきたい。収録できていない地点や出来事はたくさんある。紙幅の都合もあり掲載できた事物はよく知られたものや著者が重要と考えたものである。また,今後の研究で新たに発見されるものもあるだろう。本書の続編としてまとめることも考えられるが、市民参加型の事物の収集プロジェクトを企画するのもおもしろいのではないかと思っている。これは京都以外の地域でも企画すべきかもしれない。災害の歴史を研究者だけが知っているのではなく、広く社会に認知されることで、災害への備えのひとつとなると思う。
 

(紹介文執筆者: 地震研究所 准教授 加納 靖之 / 2021)

本の目次

■まえがき 橋本 学
 
■近世以降京都を襲った主な災害の概要
1596年 慶長伏見地震
1662年 寛文近江・若狭地震
1788年 天明京都大火
1830年 文政京都地震
1854年 伊賀上野地震
1864年 元治の大火
1885年 明治18年の水害
1934年 室戸台風(第一室戸台風)
1935年 京都大水害
1953年 南山城水害
 
■全域地図
 
■左京北部
K-NET 広河原観測点
鞍馬寺
北山と黄砂
旧岩倉村
宝が池の電子基準点
御蔭神社
音羽川砂防学習ゾーン
上賀茂神社 (賀茂別雷神社)
水害紀念碑
上賀茂橋上流右岸堤防
半木神社 (流木神社)
京都府立京都学・歴彩館
賀茂川堤防
賀茂街道の松並木
落差工
下鴨神社 (賀茂御祖神社)
出町柳の柳
鴨川公園
河合橋
京都大学総合博物館
京都大学時計台 (百周年時計台記念館)
【コラム1】地震をどうはかる?
 
■御所・左京南部
本禅寺
清浄華院 供養塔
梨木神社 染井の井戸
史跡御土居 (蘆山寺)
寛文新堤
圓通寺 供養塔
PICK UP 京都御所
  1文政の地震の被害
  2地震の原因に関する怪しいうわさ
  3泉殿・地震殿
  4堺町御門
  5石薬師御門
  6三条西家
  7蛤御門
  8柳原紀光が見たオーロラ
中御門京極 (寺町通丸太町上る)
京都市歴史資料館
下御霊神社
行願寺 (革堂)
銅駝の水
長州藩邸跡
檀王法林寺裏門前
三条大橋
鳩居堂
聖護院門跡
聖護院村
法勝寺九重塔の基壇の石 (京都市動物園)
二条川東の寺町
白川橋
【コラム2】天明の大火における松平信道の活躍
 
■上京・洛北
鷹峯
立命館大学 歴史都市防災研究所
北野天満宮
船岡山
水火天満宮
妙蓮寺 慰霊塔
旧西陣小学校 花壇 記念碑
本隆寺
昭和十年水害浸水被害記念碑
北舟橋町
京都市考古資料館
浄福寺
一条戻橋
出水通
京都府庁
京都府庁近くの一等水準点
西陣空襲
古典の日記念 京都市平安京創生館 (京都アスニー内)
【コラム3】三条柳馬場で地震を体験した武士の話
 
■右京
仁和寺
妙心寺麟祥院
天神川・御室川
御室川治水碑
神護寺
愛宕神社
愛宕参詣道の茶屋
清凉寺
天龍寺
渡月橋
戸無瀬の滝
【コラム4】桂離宮の水害対策
 
■二条城・西京
PICK UP二条城
  1液状化
  2堀・石垣
  3番衆小屋
  4唐門
  5二条城の防火
二条西洞院町
神泉苑
京都地方気象台
京都地方合同庁舎
Hi-net 京都観測点
西院小学校 風災記念碑
高山寺 風災慰霊塔
【コラム5】デジタルアーカイブの利用
 
■下京・洛南
橋弁慶町
霰天神山
長刀鉾町
佛光寺
永養寺
樋口富小路 (万寿寺通富小路)
亀山稲荷神社 (亀山藩邸跡)
平安京烏丸綾小路遺跡
東本願寺
本圀寺跡
西本願寺
興正寺
平安京皇嘉門大路
東寺百合文書
京都市市民防災センター
 
■東山
東山と『方丈記』の地震
将軍塚
知恩院
知恩院前 師弟愛の像
大谷本廟 師弟愛の碑
京都女子大学 師弟愛の像
観亀神社
白川
仲源寺
四条大橋
団栗辻子
恵比寿神社
松原橋
森下町
五条大橋
若宮八幡宮
五条坂
清水寺の回廊
音羽の滝
地主神社
音羽川
馬町空襲
方広寺石塁
耳塚
鴨川の浚渫
七条二宮町
七条大橋
伏見街道一ノ橋
【コラム6】地震のおかげで土地を手に入れた公家の話
【コラム7】活断層の調査
 
■伏見・淀
K-NET 京都観測点
京都市青少年科学センター
桃山高等学校 風災記念碑
御香宮神社
伏見城 (指月城)
紀州藩伏見屋敷
岡山藩伏見屋敷
京橋
中書島
向島小学校 風災記念碑
市田観世堤防
Hi-net 久御山観測点
称名寺 (法蓮寺)
一口
水垂町
淀小橋
納所町
淀停留所跡
淀城
與杼神社
稲葉神社
淀大橋
淀川顔町
石清水八幡宮
八幡市立ふるさと学習館
離宮八幡宮
PICK UP宇治川
  1文政地震の影響
  2旧堀内村宇治川支川締切箇所堤防
  3三栖の堤防
  4伏見の水害対応
 
■宇治・南山城
笠取
能化院 不焼地蔵
萬福寺
京都大学防災研究所
宇治橋
塔の島・浮島十三重石塔
宇治郷での大火
興聖寺
志津川村碑
K-NET 宇治観測点
宇治市歴史資料館
五里ごり館 (城陽市歴史民俗資料館)
枇杷庄
南山城水害記念碑
大正池
玉川
JR玉水駅の巨石と水難記念碑
石垣区公民館 水難者慰霊塔
災害記念塔
記念碑
不動川砂防歴史公園
北河原区公民館 水害記念碑
正覚寺 洪水供養石仏
三地震の供養塔
京都府立山城郷土資料館
瓶原
海住山寺
災害記念塔
K-NET 南山城観測点
【コラム9】地震と液状化現
 
■参考文献一覧
 

関連情報

『京都の災害をめぐる』特設ページ:
掲載地点のWebGIS(Web地図)アプリケーション
地点名と緯度・経度一覧、本文抄録csvデータ
本書掲載の地図データ・画像を公開
本書収録のうち、ネットで閲覧できるオープンな史資料・WebGIS等とWebサイトのリンク
著者による掲載地点の解説動画
『京都の災害をめぐる』余話
過去のイベントなどの記事
https://www.chiisago.jp/kyoto-saigai/
 
github: 『京都の災害をめぐる』オープンデータ:
https://github.com/chiisagosha/opendata/tree/master/kyoto-saigai
 
YouTube: 『京都の災害をめぐる』スポット紹介:
https://www.youtube.com/playlist?list=PLpB7fLxuRiRNTKvfF2uwFRGb3Lr8HUqcw
 
書評:
京都面「京都読書之森」 (『毎日新聞』 2020年5月19日)
https://mainichi.jp/articles/20200517/ddl/k26/070/234000c
 
青山雅史 (群馬大学) 評 (月刊『地理』 2020年2月号)
http://www.kokon.co.jp/book/b497986.html
 
岸本清行 (産総研 地質調査総合センター 地質情報研究部門)、田中明子 (同 活断層・火山研究部門) 評 (『GSJ 地質ニュース』Vol.9 No.1 2020年1月)
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol9.no1_p28.pdf
https://www.gsj.jp/publications/gcn/gcn9-1.html
 
岡田一祐 (国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター特任助教) 評
<連載>「デジタル、縦書き、そして人文学」 (メールマガジン『人文情報学月報』第99号 2019年10月31日)
https://www.dhii.jp/DHM/dhm99-1
 
書籍紹介:
京都大学防災研究所『DPRI Newsletter』93号2020年3月
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/news/13210/
『京都新聞』2019年12月30日朝刊一面下コラム「凡語」
『読売新聞』2019年12月12日夕刊 (大阪本社版) - 著者2人への取材
『月刊京都』2020年1月号 (2019年12月10日発売)
『京都新聞』12月4日夕刊 (まち歩きなどの取り組み)
『Leaf』2020年1月号 (2019年11月25日)
『京都新聞』2019年11月20日夕刊

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