東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

ライトピンクのカバー

書籍名

経済学を味わう 東大1、2年生に大人気の授業

判型など

304ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2020年4月

ISBN コード

978-4-535-55955-4

出版社

日本評論社

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

経済学を味わう

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書は、学部前期課程の1、2年生向け講義「現代経済理論」をきっかけに生まれた。東京大学では、進学選択という制度の下、学生が2年次に3年次以降の学部後期課程に在籍したい学部・学科を選ぶ。したがって、専門教育が始まるのは主に学部後期課程からであり、学生はその時に初めて専門分野の面白さを体験することになる。しかし、彼らは、専門分野の面白さを知る前に前期課程の終わりに専門分野を選ばなければならず、よく知らない分野の面白さを予想して選択を行うという、ある種の難題に悩まされるのが常であった。こうした状況に対して、経済学研究科の大学院生と経済学部の学部生数名が、前期課程で経済学の面白さを伝える講義を行ってほしいと教員に強く働きかけたことで、経済学の各分野でどのような研究が行われているのか、を専門知識のない人に伝えるオムニバス講義「現代経済理論」が行われることになった。
 
この「現代経済理論」の内容を、東京大学の学生ではない方々にも届けて、経済学の面白さを少しでも感じてもらうきっかけにできないか、という目的で本書は編集された。そのため、一応位置づけとしては経済学の入門書であるが、これを読んだからといって体系的に経済学が身につくわけではない。むしろ、話題自体は経済学の最先端で扱われているものであったりするため、きちんと理解するためには本書に書かれていない知識が大量に必要で、初学者が結果に至るまでの道筋を理解しようとすると混乱する可能性もある。
 
なぜそのような混乱を引き起こしかねない本を出版したのか。経済学の初歩の内容を説明した入門書はすでに良質なものがたくさん存在する。しかし、その多くは文字通り入門であり、それらを読んでも最先端でどのような研究が行われているのかを知るのは難しい。一方で、初学者に意欲をもって勉強してもらうためには、勉強の先に広がる研究の面白さを少しでも感じてもらうとよいのではないか。本書は、こうした意識から、経済学の初歩の内容を理解してもらうことではなく、経済学の最先端の研究の面白さを知ってもらうことを目指したのである。したがって、手法の理解は二の次で、何がこの分野の主な課題で、それを解決するとどんな面白いことがあるのか、何がうれしくて研究しているのかを伝えることに腐心している。そして、その面白さを少しでも感じてくれた人が勉強を始められるように、それぞれの分野で、次にどの本を手に取ればよいのかについても紹介している。もちろん、全ての話題を面白く思ってもらうことは不可能である。本書を読んだ方が、一つでも面白い、この分野を勉強してみたい、と思ってくれれば、本書の狙いは大成功である。

 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 佐藤 泰裕 / 2021)

本の目次

第1章 経済学がおもしろい:ゲーム理論と制度設計……松井彰彦
第2章 市場の力、政府の役割:公共経済学……小川 光
第3章 国民所得とその分配:マクロ経済学……楡井 誠
第4章 データ分析で社会を変える:実証ミクロ経済学……山口慎太郎
第5章 実証分析を支える理論:計量経済学……市村英彦
第6章 グローバリゼーションの光と影:国際経済学……古沢泰治
第7章 都市を分析する:都市経済学……佐藤泰裕
第8章 理論と現実に根ざした応用ミクロ分析:産業組織論……大橋 弘
第9章 世界の貧困削減に挑む:開発経済学……澤田康幸
第10章 歴史の経済分析:経済史……岡崎哲二
第11章 会計情報開示の意味:財務会計と情報の経済学……首藤昭信
第12章 デリバティブ価格の計算:金融工学……白谷健一郎

 

関連情報

書評:
駒場図書館ジュニア・スタッフおすすめ電子ブック: 東京大学駒場図書館さんの感想・レビュー (ブクログ 2021年12月14日)
https://booklog.jp/users/komalib/archives/1/B087PSQV4K

新井明 (経済教育ネットワーク) 評 (経済教育ネットワーク 2020年8月1日)
https://econ-edu.net/2020/08/01/2982/
 
今週の本棚: 大竹文雄 評 (毎日新聞 2020年5月30日)
https://mainichi.jp/articles/20200530/ddm/015/070/025000c
 
書籍紹介:
【ベスト経済書2020第2位・経済学を味わう】東大1~2年生に大人気の授業が書籍に (『週刊ダイヤモンド』 2020年12月26日・2021年1月2日新年合併特大号掲)
https://diamond.jp/articles/-/257560
 
ブックレビュー (『週刊東洋経済』 2020年8月1日)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20200727/
 
話題の本 (『週刊エコノミスト』 2020年6月16日)
https://www.weekly-economist.com/2020/06/16/2020%E5%B9%B46%E6%9C%8816%E6%97%A5-%E9%80%B1%E5%88%8A%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88/
 
東大生の1000人が受講 経済学の人気授業が本になった (日本経済新聞 2020年5月30日)
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO59743560Z20C20A5MY5000/
 
話題の本わしづかみ (web日本評論 2020年4月21日)
https://www.web-nippyo.jp/18465/
 
経済学をどう学ぶ?~『経済学を味わう』より~ (経済セミナー編集部note 2020年4月15日)
https://note.com/keisemi/n/n38ee56b83819

このページを読んだ人は、こんなページも見ています