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錆びたような茶色の物質にところどころ黒いドット、下部に黄色の帯と本の解説

書籍名

臨床倫理の考え方と実践 医療・ケアチームのための事例検討法

著者名

清水 哲郎、 会田 薫子、 田代 志門 (編)

判型など

180ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2022年2月10日

ISBN コード

978-4-13-062423-7

出版社

東京大学出版会

出版社URL

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臨床倫理の考え方と実践

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臨床倫理は医療や介護の現場において、一人一人の患者/利用者 (以下、「本人」とする) が直面する治療法とケアおよび療養場所等の選択に関わる諸問題をはじめ倫理的な問題に対応する。複数の選択肢からいずれの方法を選択すべきか、情報を整理・分析し、本人にとって現実的な最善の選択肢をめぐって、本人・家族側と医療・ケアチーム側がコミュニケーションを重ね合意を形成する。臨床倫理のおもな役割は本人・家族にとって最善を実現するための意思決定支援にある。本書は日本で開発された臨床倫理の理論と事例検討法を豊富な事例とともに解説する、現場の医療・ケア従事者のためのテキストである。 
 
医療技術が進展し治療法の選択肢が増えた現代は、多様性の認識が啓発されている時代でもある。医学的に適切な選択肢のなかから、一人一人の価値観・人生観・死生観を反映した本人の意思を可能な限り尊重した選択を実現することが求められており、臨床倫理はこうした時代の要請で成立した比較的新しい学問領域である。
 
従来、医療倫理や看護倫理、生命倫理等、医学・医療に関わる応用倫理の諸学問は欧米からの翻訳学習に頼ることが多かった。しかし本書は、日本の哲学・倫理学・社会学の研究者が現場の医療・ケア従事者との共同で長年にわたり取り組んできた臨床倫理プロジェクトの成果をまとめたものであり、日本独自の体系的な臨床倫理に関する最初の本格的なテキストといえる。
 
日本で開発された方法論であることは、臨床倫理については特に重要である。それは、臨床現場における意思決定支援においては、当該社会の社会的文化的特徴および法・制度を踏まえる必要があるからである。社会的文化的特徴のなかでも、特に療養上の意思決定に関与する家族のあり方については、欧米と日本では相違が大きく、日本では家族への配慮が要点の1つになることが多い。また、基本的な法・制度に関する彼我の相違もある。例えば、人生の最終段階における医療・ケア (end-of-life care) の選択に関して、北米と豪などでは米国発のリビング・ウィル等の事前指示書が法的文書として重視されているが、日本ではその法制化に消極的な市民や医療者が多く、文書よりも話し合いが重視されている。また、本人が意思疎通困難となった場合の意思決定代理人制度の有無も意思決定支援上の相違をもたらす。日本にはこの制度もなく、ここでも関係者間の話し合いが重視されている。

現代、医師・看護師を含む多職種は、医療・ケアチームとして臨床倫理の課題に対応することが求められている。その際、チームによる事例検討 (カンファレンス) が意思決定支援の一環として行われる。演者らが開発した「カンファレンス用ワークシート」を用いる方法では、本人の「医学的・標準的最善の判断」の検討から始め、選択の分岐点における「本人の意向」、「家族の意向」、「社会的視点からの留意点」、「合意を妨げている点」の検討を踏まえ、「本人の人生にとっての最善」の選択を検討し、それを実現するために「家族に必要な配慮」についても考えたうえで「今後の対応の方針」をまとめる。一人一人の多様な生活と人生のなかで、さまざまな制約や環境要因も検討しつつ、個別の最善を探るための方法である。同シートは以下のサイトからも自由にダウンロードでき、方法論のe-learningコンテンツも公開されている。
 

カンファレンス用ワークシート: http://clinicalethics.ne.jp/cleth-prj/worksheet/

e-learning 動画: http://clinicalethics.ne.jp/cleth-prj/cleth_online/

 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 特任教授 会田 薫子 / 2022)

本の目次

I 概説編
 1.臨床倫理の基礎 (会田薫子)
 2.臨床倫理事例検討の進め方 (清水哲郎)

II 実践編
 0.モデル事例を使った検討の実際例 (清水哲郎)
 1.医師が推奨できない治療を患者・家族が望むとき
    (進藤喜予・清水千佳子・吉田 良)
 2.患者・家族が生存期間の延長を望まないとき・拒否するとき
    (安部 樹・石橋由孝・山﨑宏人・笹月桃子)
 3.意向/価値観等が対立するとき (畠山 元・高屋敷麻理子・小藤幹恵)
 4.家族への対応に苦慮するとき (会田薫子・荒木 尚)
 5.介護問題が意思決定を困難にするとき (二井谷友公・岩城隆二)
 6.本人が言語化した意思が真意とは異なると思われるとき (丸木雄一)
 7.患者が意思決定能力をもたないとき (西川満則)
 8.家族がいないとき (石井 健)

III アドバンスト編
 1.本人の意思を尊重するということ (日笠晴香)
 2.臨床におけるケアの倫理 (早川正祐)
 3.臨床の倫理原則における《尊厳》の位置 (清水哲郎)
 4.厚生労働省「人生の最終段階ガイドライン」と《情報共有―合意モデル》
    (清水哲郎)
 5.高齢者のためのACP (会田薫子)
 6.患者の意向を尊重したACPの進め方 (江口惠子)
 7.MCDの知見を用いる事例検討法 (田代志門)
 8.病院組織における倫理サポート体制 (田代志門)
 9.臨床倫理の検討を深めるためのファシリテーション (田村里子)
 10.臨床倫理の文化を現場に定着させるために (霜田 求)

対談 臨床倫理の過去・現在・未来 (石垣靖子・清水哲郎)

関連情報

参照ホームページ:
東京大学大学院人文社会系研究科上廣死生学・応用倫理講座
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/dls/
 
書籍紹介:
日本生命倫理学会
https://ja-bioethics.jp/column/book20220428/
 
インタビュー:
「死に近づいた人生を生き切るのに必要な医療とは? (会田薫子) 」 (『淡青』37号 2018年9月)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00018.html
 
講演:
特別講演「困難なことを話し合う医療・ケアチームのための事例検討法」 (オンライン[主催: 日本死の臨床研究会北海道支部事務局] 2022年10月29日)
https://www.jard-h.info/_files/ugd/318a39_9bbfa3207d434521965f67d596d1ed6c.pdf
 
公開講座 とくしま発・在宅ケア学 第1回特別講演「在宅療養者が最期まで本人らしく生きるために――臨床倫理の視点から」 (オンライン[主催: 徳島大学大学院医歯薬学部] 2022年7月30日)
https://www.tokushima-u.ac.jp/recur/notice/40965.html
 
あさかホスピタルグループ特別講演会Webライブセミナー「ACP (人生会議) とは――人生の最終段階における医療・ケアを考える」 (オンライン[主催: 社会医療法人あさかホスピタル] 2022年3月11日)
https://www.fukuhiroba.com/wp/wp-content/uploads/2022/02/33645148ea6fa93a173d4c0f6b698433.pdf

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