東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

赤紫の表紙に坂口安吾の顔写真

書籍名

坂口安吾大事典

著者名

安藤 宏、 大原 祐治、十重田 裕一 (編集代表)

判型など

828ページ、菊判、上製

言語

日本語

発行年月日

2022年6月

ISBN コード

978-4-585-20079-6

出版社

勉誠出版

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坂口安吾大事典

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本書は日本の近代を代表する小説家の一人である坂口安吾 (1906~55) に関する総合的な事典である。編集代表は安藤宏、大原祐治、十重田裕一の3名。全787ページ、項目数は830以上、執筆者は374名に及び、構想から10年の歳月をかけて完成された、単独の作家に関する事典としては最大規模のものである。特に執筆者に関しては近代文学研究に携わる専門の研究者が厳選されており、記述は信頼できる、質の高い内容になっている。
 
構成は全三部からなる。第一部はキーワード編で、映画、検閲、信仰、戦争、天皇制など、大きなテーマにそってその文学活動の特色が記述されている。個別の読み物としても興味深く、坂口安吾の文学を、広く近代の歴史、思想史、文化状況の中で捉え直していく際に、さまざまなヒントを与えてくれる。たとえば検閲に関して、第2次大戦後の坂口安吾の作品に、GHQの検閲によって大幅な手入れの行われている事実が明らかにされているが、その詳細な情報を得ることができる。
 
第二部は作品編で、小さなエッセイにいたるまで、坂口安吾のほとんど総ての作品が網羅されている。項目は書誌データ、梗概、同時代の評価、研究史、などの項目からなる。研究史に関しては重要な論文等のデータが記載され、また、項目の記述にあたっての参考文献も末尾に掲げられている。代表作に関しては問題点ごとに小項目が設定されているのも便利で、現時点における、学界の最新の研究状況が反映されていると考えてよいだろう。
 
第三部は事項編、坂口安吾と直接交流のあった文学者、外国文学も含め、影響の深い文学者、関係の深い雑誌などが立項されている。第一部も含め、メディアとの関わりが重視されているのもこの事典の特色である。
 
記述の中で本書の他の項目に登場する固有名詞にはすべてアステリスクが付されており、また末尾に参照すべき項目が挙げられているなど、ネットで検索する感覚で頁を括ることができる。今後、紙媒体の大部な事典は数を減らしていくことが予想されるが、本事典は紙媒体とネットとの双方の利点を兼ね備えていると言ってよいだろう。
 
なお、口絵には貴重な原稿などの写真が掲出され、また、巻末には坂口安吾の年譜と索引が付されている。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 安藤 宏 / 2023)

本の目次

カラー口絵

凡例
執筆者一覧
 
第一部 キーワード編
第二部 作品編
第三部 事項編
 
坂口安吾年譜
索引
 

関連情報

特集記事:
【特集】鼎談=安藤宏×大原祐治×十重田裕一<〈偉大なる落伍者〉安吾に迫る網羅的大事典> (『週刊読書人』 2022年7月1日)
https://jinnet.dokushojin.com/products/3446-2022_07_01_pdf
 
書評:
永田幸男 (安吾の会会員) 評「にいがたの一冊」 (2022年9月4日 新潟日報)
https://www.niigata-nippo.co.jp/
 
書籍紹介:
還暦記者の新潟ほろ酔いコラム: [新潟かんほろ]無頼派・坂口安吾が愛した故郷の優しい味 鮭の焼き漬けサンド ~酒と安吾と鮭とパン~ (第4夜) (2022年10月14日 新潟日報)
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/125085
 
【著書紹介】日本語日本文学科|長原しのぶ教授『坂口安吾大事典』(共著) (ノートルダム清心女子大学ホームページ 2022年7月2日)
https://www.ndsu.ac.jp/blog/article/index.php?c=blog_view&pk=1656729218734fb37cf1845bd4aae71ba70ca5b27f&category=&category2=
 

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