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黄緑色の表紙、ペンを持った手の写真

書籍名

コロナ危機、経済学者の挑戦 感染症対策と社会活動の両立をめざして

著者名

仲田 泰祐、 藤井 大輔 (著)

判型など

296ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2022年9月

ISBN コード

978-4-535-54036-1

出版社

日本評論社

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コロナ危機、経済学者の挑戦

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私の専門はマクロ経済学、特に金融政策の理論的分析である。しかしながら、様々な偶然の重なりにより、2021年・2022年には政府コロナ対策有識者会議・官邸等で何度もコロナ感染動向やコロナ危機の社会的影響に関する分析を発表し、またメディアでも頻繁に分析を発信することとなった。本書は、2021年6月から2022年3月の行われたインタビューに基づき、私の研究チーム (同僚の藤井大輔氏と共同で運営) がどのような分析を行い、どのように政策現場・メディアと対話していたかを記録したものである。
 
本書の構成は以下のとおりである。第1章「ある経済学者の挑戦」・第2章「感染と社会・経済の見通しを描く」ではプロジェクト立ち上げの経緯と共に、初期に注目を集めた「緊急事態宣言解除基準分析」の解説をしている。第3章「感染症専門家との対話」では、経済学専門の私たちが感染症専門家集団に感染シミュレーション分析を提供するようになった経緯、第4章「分析チームの構築とマネージメント」では、短期間で大きな研究チームを構築した経緯等を記述している。第5章「五輪分析に込めた想い」では、私にとって大きな決断であった五輪分析の背景と内容についての記録となっている。
 
第6章「メディアとの対話」では、メディアで分析を発信するようになった背景・発信の際に心がけていたこと等を説明している。第7章「政策現場との対話」では、どういった時期にどういった分析をどこに提供していたか、総理大臣・自治体首長・大臣レベルの人々に研究者がプレゼンをする際に注意しておくべきこと等について書いている。第8章「感染症対策の背後で起きていること」・第9章「感染症対策と社会・経済活動の両立を目指して」では、2021年秋以降に力を入れ始めた、コロナ危機の社会経済への影響に関する分析を紹介しつつ、トレードオフがある状況での政策決定の難しさや、そういった状況で政策決定に役に立つ分析とは何か、等の議論をしている。
 
それぞれの章末には、私たちの分析を実際に政策現場で参照していた方々・私たちの分析を頻繁に取り上げたメディアの方々からの寄稿も掲載している。こういった寄稿からは、当時の臨場感の面影を感じ取ってもらえるかと思う。
 
本書は、コロナ禍における政策決定プロセスに興味のある人々、将来のパンデミックにおいてどのように感染症対策と社会経済活動のバランスを取っていくべきかを考えたい人々にとって示唆のある内容となっている。また、コロナ危機・パンデミック政策という一領域を超えて、より広くEBPM (“Evidence-Based Policy Making”) や科学コミュニケーションのあり方について考えたい人々にとっても興味深い内容になっている。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 准教授 仲田 泰祐 / 2024)

本の目次

第1章 ある経済学者の挑戦
第2章 感染と社会・経済の見通しを描く
第3章 感染症専門家との対話
第4章 分析チームの構築とマネジメント
第5章 五輪分析に込めた想い
第6章 メディアとの対話
第7章 政策現場との対話
第8章 感染対策の背後で起きていること
第9章 感染症対策と社会・経済活動の両立をめざして

関連情報

感染症対策と経済活動の両立
https://www.bicea.e.u-tokyo.ac.jp/ 
 
日本でのコロナ感染と経済活動
https://covid19outputjapan.github.io/JP/index.html
 
自著解説 :
Web日本評論|日本評論社 2022年9月13日
https://www.web-nippyo.jp/28924/
 
書評:
牧野邦昭 (経済学者・慶応大教授) 評 (読売新聞 2022年12月18日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20221221-OYT8T50066/
 
大竹文雄 評 (毎日新聞 2022年12月17日)
 
書籍紹介:
2022年「この3冊」/下 (その1) (毎日新聞 2022年12月17日)
https://mainichi.jp/articles/20221217/ddm/015/070/020000c

政策現場にコロナ分析を提供し続ける経済学者の軌跡! (経済セミナー編集部|日本評論社 2022年9月10日)
https://note.com/keisemi/n/nc7dec38a10ae
 
論壇委員が選ぶ今月の3点 (朝日新聞デジタル 2022年4月28日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15279451.html

関連記事:
「条件付き予測」で政策の制度を高める (POLICY DOOR 2022年12月1日)
https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/article-13.html
 
中から「政府のコロナ対応」見た経済学者の課題感――科学的知見を活用して将来の危機に備えるために (東洋経済オンライン 2022年10月5日)
https://toyokeizai.net/articles/-/619847
 
関連動画:
コロナ危機、経済学者の挑戦:感染症対策と社会活動の両立をめざして #1(プレゼンテーション)【RIETI BBLウェビナー】 (retichannel 2022年10月3日)
https://www.youtube.com/watch?v=gjA_dQnzkZo
 
コロナ危機、経済学者の挑戦:感染症対策と社会活動の両立をめざして #2(コメント)【RIETI BBLウェビナー】 (retichannel 2022年10月3日)
https://www.youtube.com/watch?v=MrU3niXWC0Q
 
コロナ危機、経済学者の挑戦:感染症対策と社会活動の両立をめざして #3(Q&A)【RIETI BBLウェビナー】 (retichannel 2022年10月3日)
https://www.youtube.com/watch?v=qzJeV2pAtzY
 
著者インタビュー:
最終的には「死生観」と向き合わざるを得ない――転換点の新型コロナ 何が課題か (リスク対策.com 2023年2月5日)
https://www.risktaisaku.com/articles/-/76541
 
『コロナ危機、経済学者の挑戦』を上梓 - 仲田泰祐・東大経済学部准教授に聞く◆Vol.1 (m3.com 2022年11月9日)
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1092398
 
政策分析「賛否、双方の立場から意見」が成功 - 仲田泰祐・東大経済学部准教授に聞く◆Vol.2 (m3.com 2022年11月13日)
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1092399
 
第8波で政策分析に区切り、次なるパンデミックの備えも - 仲田泰祐・東大経済学部准教授に聞く◆Vol.3 (m3.com 2022年11月19日)
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1092400

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