2021年4月、東京大学先端科学技術研究センター (先端研) に、「先端教育アウトリーチラボ」(Advanced Education Outreach lab、AEO) が発足しました。
 
AEOは、次世代育成に関するワンストップ機能 (所内横断プロジェクト) として、先端研の40以上の異なる学術分野の研究者や学生たちと連携し、教育アウトリーチを出発点に、持続可能で発展的な、探究学習やSTEAM (科学、技術、工学、芸術及びリベラルアーツ、数学) 教育モデルの開発をめざします。
 
AEOは、大学の資源を活かし、学校や地方自治体と連携して、多様な教育機会を提供する分散型のチームです。このプロジェクトでは、東大の学生が主要な役割を果たしており、彼ら自身の能力開発の場でもあります。
 
立ち上げにあたって、私は先端研に加わりましたが、前職では東京都庁で20年間勤務し、全体計画や国際金融などの分野で経験を積んだ後、教育行政で、民間企業やアカデミアなどと連携して政策立案や様々な新規事業の立ち上げを行っていました。これらの経験を応用し、AEOの仕組みを作っています。
 
先端研は私のような、異分野の人材を積極的に活用し、分野間の対話が活発な研究所です。多様な分野のトップレベルの研究者が集まり、新しいアイデアに対する寛容さと行動力があります。科学者やエンジニアだけでなく、芸術家、経営者、弁護士、社会活動家など、多彩なバックグラウンドを持つメンバーで構成されており、次世代育成にも力を入れている等、学校教育にとって非常に魅力的な素地があります。
 
一方で、こうした素晴らしい人材や環境を、最適な形で学校教育に結びつけ、持続的・発展的に教育機会を創出していくには、高度なコーディネーターが不可欠です。学校教育では、大学との連携による探究やSTEAM教育が盛んに行われるようになってきましたが、それを継続的に発展させるためのメカニズムや人材の育成については、まだ充分な実践や研究は行われていません。大学の「第3の領域」といわれる新しい専門職として位置付けることができるかもしれないコーディネーターは重要で、その果たす役割は大きいと考えています。
 
本書では主に、コーディネーターのあり方を模索しながらAEOの活動に取り組んでいる私自身と、今後、教育シーンで更なる活躍が期待できる外部人材の象徴として、AEOで活躍している学生達「学生アフィリエイト」の目線から、様々な実践をご紹介しています。また、AEOの「教育共創」にご協力下さっている、先端研の先生方、学校の先生方、関係者の方のご意見も頂きました。
 
東大生たちの活気に満ちた生の声を通じて、彼らが次世代育成にどのように関わり、何を感じているかが伝われば幸いです。そして、教える側と学ぶ側の枠にとらわれず、関与する「皆が主役になる次世代育成」という教育共創の魅力を感じていただければ嬉しいです。
 
最後に、AEOの活動を支えて下さる東大先端研の教職員、自治体や学校関係者、そして支援して下さるすべての方々に深く感謝申し上げます。
 

＊下記は、本書を執筆したAEO学生アフィリエイト (当時) です。
浅見明太 (第3章)、佐々木智也 (第3章 / 第4章 / 表紙・本文デザイン)、樗木悠亮 (第3章 / 第4章)、日野眞生 (第3章 / 第4章)、清水佑輔 (第3章 / 参考資料)、関良朝 (第4章)、落合貴也 (第3章)、納富祐典 (第4章)、福井千海 (第3章)、土田遼哉 (第3章)、榎原茉央 (第3章)、森田航輔 (第3章)

 

(紹介文執筆者: 先端科学技術研究センター 特任研究員 森 晶子 / 2023)

本の目次

関連情報

関連ホームページ :
AEO公式ホームページ
https://aeo.rcast.u-tokyo.ac.jp/
 
東京大学基金「次世代リーダーを皆で育てるAEO教育共創基金」ウェブサイト
https://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt258
 
動画:
東京大学先端科学技術研究センター 先端教育アウトリーチラボ (AEO) 紹介動画
https://www.youtube.com/channel/UCkNHIh1ZL_u12x2mpLa6sPg
 
その他:
AEOによる理系女子の意識啓発イベント「放課後トーク」:第6回リカジョ育成賞奨励賞　(公益財団法人日産財団　2023年)
https://www.nissan-zaidan.or.jp/category/winner_r/
 
「学生アフィリエイト」: 東京大学オンキャンパスジョブ支援事業に採択 (2021年度～)
https://aeo.rcast.u-tokyo.ac.jp/student-affiliate/

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