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黄色い表紙

書籍名

漢文の読法 史記 游俠列伝

判型など

240ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2024年3月29日

ISBN コード

9784044007881

出版社

KADOKAWA

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漢文の読法

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本書『漢文の読法』は、『史記』游俠列伝を詳細に解説した、漢文の学習書です。十五日間で全原文を、一字一句、すべてに解説を加えながら、ゆっくり読んでいきます。
 
さて、世の中ではこれまで無数の漢文の学習書が出版され、『史記』の翻訳もいくつもあるなか、新たに本書を出版する意義はどこにあるのでしょうか。
 
漢文の教科書には、厳然と訓点がついています。これをみると、漢文というのは、文法に沿って自動的に返り点や訓読が決まる言語のように思われます。ところが実際には、漢文は全く同形の文でも、前後の文脈によって構造分析や解釈が変化する性質があります。訓読の読み方や返り点の付け方はもちろん、読点・句点の位置すら、それを付けた注釈者の解釈に他ならない、ということは意外に知られていません。
 
自分自身で句読点をつけ、訓読すなわち解釈を考える、本来それが漢文を読むということになります。
 
句読を切るべき個所はここか、あそこか。この部分の文法構造は、動詞+目的語なのか、名詞の並列なのか。本書では、できる限り多様な解釈の可能性を提示しました。そして、その中から文脈的に一番ふさわしいものを選ぶという作業を実感していただけるよう、くどいくらいに説明を加えました。
 
聡明な方々は、「正しくない解釈を縷々書き連ねないで、正解だけを示せばよいのに」とイライラされるかもしれません。しかし、正解 (と思われるかたち) だけを示して、それを暗記していただいても、未知なる漢文の文章を読めるようにはならないと思うのです。
 
矛盾なく文意が通るようにするにはどのように読めばよいのか。パズルを解くように、試行錯誤しながら、お茶でも飲みながら、ゆっくりとおつきあいください。
 
もちろん『史記』のような重要な古典には、すでに多くの句読付きのテキストや、各種の注釈・現代語訳が作られています。本書では、そうした注釈や参考文献も、本文中でできるだけ多く採りあげて紹介しました。
 
また、「漢文談義」(1) ~ (3) では本書の著者二人が、特に難読であった部分を語りあい、「コラム」(1) ~ (5) では、漢文を読む上でのいろいろな豆知識を紹介しています。
 
・「存亡死生」とは、どう読めばいいのでしょう?(「漢文談義」(1) 参照)
 
・「(是吾徳不修也)彼何罪」は「彼に何の罪あらん」と読むべきでしょうか、「彼に何ぞ罪あらん」と読むべきでしょうか?(「コラム」(5) 参照)
 
もし興味を抱かれた方は、本書を手に取っていただければ幸いです。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 田口 一郎 / 2024)

本の目次

はじめに (齋藤希史)
第1日 序 (一)
第2日 序 (二)
 コラム1 表語文字
第3日 序 (三)
第4日 序 (四)
 コラム2 粟と薇
第5日 序 (五)
 漢文談義 (1)
第6日 序 (六)
第7日 朱家
 コラム3 四声
第8日 田仲
第9日 劇孟・王孟
 コラム4 『史記』の注釈
第10日 郭解 (一)
 漢文談義 (2)
第11日 郭解 (二)
第12日 郭解 (三)
第13日 郭解 (四)
 コラム5 「何の」か「何ぞ」か
第14日 郭解 (五)
第15日 游侠のその後・論賛
 漢文談義 (3)
おわりに (田口一郎)
附録 (句読点つき原文・白文)

関連情報

書評:
矢田勉 評 (『教養学部報』656号 2024年7月1日)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/656/open/656-3-01.html
 
書籍紹介:
15日間で『史記』を読む! 漢文読解の指南書『漢文の読法』発売 (株式会社KADOKAWA 2024年3月29日)
https://group.kadokawa.co.jp/information/promotional_topics/article-9807.html

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