
書籍名
「漢文脈」在近代:中國清末與日本明治重疊的文学圏 (原著: 漢文脈の近代:清末=明治の文学圏)
判型など
424ページ
言語
中国語
発行年月日
2020年9月10日
ISBN コード
9789869747493
出版社
郡學出版有限公司
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
本書は2005年に名古屋大学出版会から上梓した『漢文脈の近代──清末=明治の文学圏』の中訳である。訳者は盛浩偉さん、出版社は台湾の郡學出版有限公司、刊行は2020年、原著から15年を隔てる。翻訳の提案は、2015年、台湾大学の盛さんが私を受入れ教員として東京大学に1年間在籍した時かその後だと思う。「漢文脈」という視点から近代東アジアにおけるécriture (書くこと) の諸相を論じた研究書であるから、うれしい申し出だった。2018年には韓国語への翻訳が延世大学校のノ・ヘギョン (노혜경) さんによって行われている。なお、まぎらわしくて申しわけないのだが、私には『漢文脈と近代日本』という著書もあり、こちらは韓訳『근대어의 탄생과 한문 — 한문맥과 근대일본』、英訳 Kanbunmyaku: The Literary Sinitic Context and the Birth of Modern Japanese Language and Literature がすでに出ていて、今年は中訳刊行の予定がある。
正直に言って、原著を上梓した時は翻訳される機会があるなどは考えてはいなかった。中国やアメリカの学会で発表した章もあり、ネイティブチェックを受けながら自分で中国語や英語に訳したのであったが、訓読や訓読体を論じるところなどは翻訳に難渋した。とりあえず注に引用文献の日本語を入れることで、翻訳力の不足をごまかしたような気がする。こういうのを訳すのは難しいでしょう、と言われたこともある。タイトルの「漢文脈」からして、そのままでは通じにくい (念のため申し添えれば、これは明治期の文体論で常見の語で、私はそれを拡張して用いたにすぎないが、この「拡張」が曲者であった)。
盛さんの訳は、専門書としての原著を、広くこの問題に関心をもつ (もってほしい) 読者に広げようという明確な意志によって、この課題を乗り越えてくれた。盛さん自身が編集者であり作家であることもあってか、文章の流れは原著にまさると思う。訓読になじみのない読者にとっては、冒頭の「譯者導讀」がよいイントロダクションになる。「漢文脈」についての説明も簡明である。原著のハードカバーに対して、中訳はソフトカバーで軽く、カバーデザインもポップで、カバーをとった本体のデザインともども、私はとても気に入っている。じつはこの文章は出張先の台湾で書いているのだが、もってきたこの本は、かばんから取り出すのも、ところどころ読み直すのも、なぜか楽しかった。
「譯者導讀」の最後には、植民地期の台湾における「漢文脈」知識人の活動への注意が促されている。まずは台湾の読書空間に差し出されたこの本は、今では、中国でも読者を獲得しているようだ。改めて譯者の盛浩偉さんにお礼を申し上げたい。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 齋藤 希史 / 2024)
本の目次
序
第I部 「支那」與「日本」
第1章 文學史的近代──從和漢到東亞
一 「文學史」的開始
二 「和漢」與「支那」
三 「日本」的確立
四 朝向「東亞」
第2章 「支那」再論
一 做為稱呼的「支那」
二 「和漢」的解體與「支那」
三 梁啟超的「支那」
第II部 梁啟超與近代文學
第3章 新國民的新小說──近代文學觀念形成期的梁啟超
一 為了通俗的小說
二 為了國民的小說
三 文學雜誌的誕生
四 進化的文學
第4章 「小說叢話」的傳統與近代
一 中外的比較
二 進化的核心
第5章 官話與和文──梁啟超的語言意識
一 母語
二 粵語與廣東
三 漢民族意識、文言,及官話
四 日語
第III部 清末=明治的漢文脈
第6章 小説的冒險──圍繞政治小説與其華譯
一 《佳人之奇遇》的華譯
二 「小説」的文體
三 《經國美談》的樣式
四 「正史」與「小説」
五 「小説」的「近代」
第7章 《浮城物語》的近代
一 報紙的小説
二 從「報知叢刊」到「報知異聞」
三 注音與插圖
四 自敘體
第8章 明治的遊記──漢文脈的所在
一 《木屑錄》
二 作文的範文
三 景、史、志
四 《航西日記》
五 漢文脈的去向
第9章 越境的文體──森田思軒論
一 歐文直譯體
二 意趣與風調
三 漢文脈的核心
第IV部 今體文的媒介
第10章 《記事論說文例》──銅版作文書的誕生
一 《記事論說文例》
二 銅版印刷
三 作文書的系譜
四 模仿與普及
第11章 寫作的少年們──《穎才新誌》創刊時
一 《學庭拾芳錄》
二 《穎才新誌》
三 作文的虛實
終章 做為象徵的漢字──費諾羅沙與東洋
一 與日本美術的邂逅
二 費諾羅沙的文學觀
三 做為詩之媒體的漢字考
後記
索引
関連情報
齋藤希史『漢文脈の近代――清末=明治の文学圏』名古屋大学出版会 2005年
https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN4-8158-0510-5.html
受賞 (原著):
2005年 サントリー学芸賞 (芸術・文学部門) 受賞 (サントリー文化財団 2005年)
芳賀 徹(京都造形芸術大学学長)評
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/2005gb1.html
書評:
短評 (OPEM BOOK 2020年11月10日)
https://www.openbook.org.tw/article/p-64201
思想坦克 2020年10月2日
https://voicettank.org/single-post/2020/10/02/100201/