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白い表紙に葉の模様

書籍名

実務問答金商法

著者名

飯田 秀総 (監修)、 金商法・実務研究会 (編著)

判型など

408ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2022年2月

ISBN コード

978-4-7857-2927-1

出版社

商事法務

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実務問答金商法

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本書は、旬刊商事法務に連載された「実務問答金商法」を基に、金融商品取引法 (以下「金商法」) に関する実務的かつ理論的な課題を包括的に整理・解説するものである。特に、実務上重要でありながらも解釈が分かれる「悩ましい」論点に焦点を当て、行政解釈としてのガイドラインやパブリックコメント回答を十分に参照しながら合理的な解釈を提示することを目的としている。本書の編集では、連載各回に加筆・修正を加え、金商法の体系的順序に再構成するとともに、最後には筆者による理論的考察を収録している。
 
金商法は市場や経済社会の変化に対応するため、ほぼ毎年のように改正が行われている。その頻度の高さは、急速な社会変化や情報技術の進化、新しい金融サービスの登場を反映している。これに伴い、金商法実務においても新たな論点が次々と浮上しており、現行法体系の深い理解がより一層重要となっている。
 
一方で、新しい問題を解決するための手掛かりは、意外にも古典的な論点や基本的な法解釈に見出されることが多い。本書では、そのような「古典と先端」を繋ぐ視点を重視し、金商法の基礎的な考え方を明らかにする設問を幅広く取り上げている。これにより、読者が金商法全体の深い理解を得られることを目指している。
 
本書は、第一線で活躍する実務家である弁護士が執筆した各連載を基に、実務的かつ理論的な観点を交えて内容を再構成している。以下に本書の特徴を挙げる。
 
1. 幅広い論点の網羅
   本書で取り上げられる設問は、古典的な問題から最新の論点まで多岐にわたる。これにより、金商法の基本的な考え方を解明しつつ、先端的な問題への対応にも寄与する内容となっている。
 
2. 実務と理論の融合
   各設問に対する直接的な回答を提供するとともに、その解説部分では深い検討を展開している。これにより、読者が金商法の本質的な理解を得るだけでなく、実務における応用力も身に付けることができる。
 
3. 行政解釈との関連性
   ガイドラインやパブリックコメント回答といった行政解釈を適宜参照しながら、法解釈における合理性と実務適合性を高めている。
 
4. 理論的検討の収録
   書籍の末尾には、筆者が理論的な立場から行った考察が収録されている。これにより、読者は個別論点の理解とともに、金商法の全体像を俯瞰する視点を得ることができる。
 
 
本書は、単に個別の論点に対する回答を提供するだけでなく、その解説や検討を通じて、金商法全体の考え方や体系への深い理解を促すことを目指している。古典的な問題を解決する際の基礎的な思考から、先端的な問題への応用可能性まで、多くの示唆を与える内容となっている。
 
これにより、本書が金商法実務に携わる専門家のみならず、学術的な研究を行う者にとっても重要なリソースとなることを期待している。最終的には、本書を通じて金商法実務のさらなる発展に貢献できれば、筆者にとって望外の喜びである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 飯田 秀総 / 2025)

本の目次

第1章 開示
第2章 公開買付け・大量保有
第3章 業規制
第4章 不公正取引
第5章 実務問答金商法の理論的検討

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