東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

水色の表紙

書籍名

会社法判例の読み方 判例分析の第一歩

著者名

飯田 秀総、 白井 正和、松中 学

判型など

414ページ、A5判、並製カバー付き

言語

日本語

発行年月日

2017年7月

ISBN コード

978-4-641-13775-2

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

会社法判例の読み方

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書は、会社法の講義で事案まで立ち入って深く掘り下げることの多い重要判例をとりあげて、分析をするものである。多くの授業では、1回の講義で1つか2つしか深く掘り下げる形で判例をとりあげることはしないだろうから、本書でも扱う判例の数を36件に厳選している。しかも、その判決の結果、その後の解釈論や立法、さらには会社の実務に強く影響を与えたという意味で、基礎的な判例に限定した。もちろん、重要な判例は他にもある。そのため、標題としてとりあげていなくても、関連する判例は本書の「解説」の部分で積極的にとりあげている。重要度に応じて、簡単に触れるだけのものから、事案と判旨を詳細に紹介しているものもある。
 
一口に「判例を読み込む」といっても、どのように、どこに注目して読むべきかは、判例によって違う。そこで、本書では、判例によってアプローチを大きく変えている。事案の意味を理解することが必要な事件は、判旨の解説より、事案の解説を重視する。また、判旨のロジックを理解するのに行間の読み込みが必要な事件は、行間を言語化していく。会社法 (に限られないはずだが) では、望ましい帰結をもたらすルールかどうかが問題になることが多い。そして、判例もそうした観点から評価する必要があるものがたくさん存在する。そのため、判決が社会にもたらすであろう影響に関する機能的な分析 (法と経済学的な分析) もする。もちろん、多くの解説では複数のアプローチを併用している。
 
会社法の判例は、射程を考えることが重要である。たとえば、閉鎖会社の利害調整が問題となっている場合と、上場会社のそれとでは全く異なるからである。本書では、その判例の射程がどこまで及ぶのかについて、問題となった事案を踏まえるのはもちろん、判決 (決定) 理由の読み方も踏まえて解説した。射程を考えるのは簡単ではないが、事実を動かしたり、「この部分はこう読める」などと考えてみると、会社法の判例も無味乾燥ではなく楽しくなる。
 
本書は、以上のように会社法を学習するにあたって必須の判例の「内容」を理解してもらうのが大きな目標であるが、「判例の読み方」としてどのような方法があるのかという点でも参考になれば嬉しい。もちろん、本書で示した「読み方」も唯一のものではない。もし、読者が他にも説得的な「読み方」を見つけてくれれば、執筆者としてこれに勝る幸せはない。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 准教授 飯田 秀総 / 2019)

本の目次

Part 1 総則・設立
Part 2 株式
Part 3 株式・新株予約権の発行
Part 4 機関 (株主総会)
Part 5 機関 (取締役会)
Part 6 役員の義務と責任
Part 7 計算
Part 8 組織再編
 
 

関連情報

書評:
大杉謙一 (中央大学法務研究科教授) 評 書評の窓 (有斐閣ホームページ 2017年11月)
http://www.yuhikaku.co.jp/static/shosai_mado/html/1711/03.html
 

このページを読んだ人は、こんなページも見ています